頑張る魔王様 2

どうも、私は魔王。

人類を滅ぼし、多くの魔族から慕われる世界唯一の王になりました。


人類を滅ぼすまで、そして滅ぼしてからも大変なことが沢山ありましたがやっと一息つける時間が出来たんです。


「ロリコ…

失礼、魔王様ご報告に参りました。」

「殺されたいのか?」


最終的に問題は残ってしまったが…


「例の噂の鎮圧はできたか?」


その中の1つである、私に対する少女好き疑惑、それの対処を任せた魔族が報告に来た。

相変わらず舐めた態度でイライラする。


「残念なことに出来ませんでした。」

「…は?

お前らでも出来ないの?」


ふざけた奴等だが仕事は上手い。

なんだかんだ言ってキチンと鎮圧させる事はできると思っていた。

なのにまさか失敗するとは…


「噂は間違いだったと広げる筈だったのですが、魔王様が幼い少女を部屋に連れ込むことが多くて噂は悪い意味でアップグレードしました。」

「いや、私が招待したのはただのお茶会だぞ?

それに万が一にでも噂が立たないように人払いは完璧だったはずだ!」


欲求を我慢できないと悟った私は、これ以上ないぐらい対策していた。


「それがダメなんですよ…

まず招待は前日にしてますよね?」

「当たり前だろう。」


こっちもあっちも準備が必要だし、余裕を持って前から予定が空いてるか確認して、前日に招待するんだ。


「招待が来た時点であの娘達は親に話しています。」


なるほど…それかぁーー!!


盲点だった。

だが親の仕えてる存在からお茶会の誘いが来たら親に相談するのは、考えてみれば当たり前だな。


「それだけじゃありません。

城で働いている者に来客は共有されています、人払いをするという事は、お茶会というのは実はただの名目で他の事をする為に呼び出したと誤解されております。」

「あああぁぁぁぁ!!」


言われて始めて気づく杜撰な隠蔽工作に頭を抑えずにはいられない。


私ってこんなに頭悪かったか?!


「もう噂を消す事は不可能です。

そこで提案があるのですが…」


また溜めてるよ、はよ教えてくれ。


「逆転の発想として数人囲っては如何でしょう?」

「はぁ、私の本当の姿を知られる可能性が高くなるだろ。

何の為にこの姿を隠していると思っているのだ。」


少女モードの私が見られれば威厳は無くなる、それに加えて高確率で侮られるだろう。


「では噂は諦めるので?」


仕方あるまい…

エイラはリサの物であり平和的な方法で私の物になる事は100%ないのだ、この恋愛感情を抑えるために少女とのスキンシップは欠かせない。


「確か、記憶が混ざり合って魔王様も人間の聖女に恋愛感情を持ってしまったんですよね?」

「あぁ、そうだが?」

「でしたらリサ殿に聖女を一晩貸してくれと頼んでみたらどうでしょう?」


部下の一言で部屋の温度は5℃ほど下がった気がする。

何処からか殺意が向けられているようだ。


「お前は死にたいのか?

リサに貸してくれって言った瞬間、大戦争の始まりだぞ…」

「楽しそうですね。」

「不穏分子として処分してやろうか?!」


クスクス笑っていやがる。


反応を見るにどうやら本気で実行する気はなく、軽いジョークだったらしいが心臓に悪すぎる。


「明日リサを含む魔王陣営の幹部で会議がありますよね?」

「本物の私は出ないぞ?」

「えぇ、わかっておりますとも。」


会議は苦手だ。


人魔大戦時は、◯◯を破壊するとか、ここに砦を作るとか被害の確認だけで楽だった。

だが現在はどのように都市開発を進めていくか、予算はどう使うかなど気を使うことが多くて正直言って面倒くさい。


「ん?そうだ!」

「急に大声出してどうしたんですか?」

「明日の会議中、聖女にあってくる。」


会議の間僅かな時間だが聖女にあってこの欲求を発散するとしよう。

まずは歯磨きだな。


ーーーーー


「それじゃ足止めは頼んだぞ?」

「もしもの事があったら蘇生してくださいよ?」

「わかってる、わかってる。」


部下に姿を変える魔道具を貸し与える。

人が小さな虫ほどの大きさになるぐらい上空からバレないよう、魔法でリサ達の住む島を監視する。

これぐらいしないとリサは探知してくるからな。


お、外出たぞ。


「じゃあ行ってくる〜。」

「逝ってらっしゃいませ。」


冗談でもその文字はダメだろ?!


冗談を言った部下に軽く殺意を向けつつ、転移を魔法を発動した。


「…!」


うわっ、何だこの魔法の数々、過保護すぎじゃない?


パッとみただけでもこの家中に快適に過ごすための魔法がかけられてる。

快適な室温を維持する魔法、転んだ時にクッションが現れる魔法、清潔を維持する魔法…


正直引く過保護レベルだ…


「歌を歌う?お菓子を作る?

ケーキ!ケーキを作りましょう!」


目的の聖女はリビングに居た。


「それは良いな、完成したら私にも分けてくれないか?」

「はい!…だぁれ?」

「あぁすまない自己紹介が遅れた。

私は魔王、よろしく聖女様。」


リサの記憶より精神的にかなり幼い気がするが、気のせいか?

ポワポワして警戒してる様子はないし、私は一応人類を滅ぼした親玉である魔王だぞ?


「聖女と魔王の姉妹かぁ、どっちが姉なんでしょうか?」


はぁ?

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