ガンマニアの異世界ハンドガン縛り

@yuuki009

第1話 手にした能力は……

さて。突然だが皆は『ミリオタ』って単語を聞いたら何を連想する?戦車?戦艦?戦闘機?


まぁミリオタって一言で言ってもジャンルは広い。戦車にヘリ、航空機、空母に戦艦。陸海空あらゆる場所で活躍する兵器や装備達。例えばミリオタって言っても空軍好きだったり海軍好きだったり。


一言でミリオタって言っても結構好きなジャンルは皆バラバラだったりする。ちなみに俺は『銃火器のミリオタ』だ。


子供の頃、おもちゃ屋で小さなエアガンを買って貰ったのがきっかけで気がつけば立派なミリオタの仲間入りを果たしていた。


そんな趣味に明け暮れながらも平穏な日常を送っていた俺。


けど、そんな俺の人生は呆気なく終わりを迎えた。



~~~~

俺はしがない一般的な男子高校生。今日も今日とて学校帰りの駅のホーム。既に夕暮れ時の駅のホームは、俺みたいな学校帰りの生徒や買い物帰りらしい主婦さんとその連れの子供達などでごった返していた。


そんな中で俺はホームに並ぶ人達の最前列に立ちながらスマホをポチポチと操作し、良く行くエアガンショップのサイトを覗いていた。


確かそろそろ新しいエアガンが発売されるって雑誌に書いてあったし、入荷予定書いてあるかな~って感じでサイトを覗いてみたが、そう言った情報は無し。まだ入らねぇかぁ。と内心ため息をつきたくなる中でスマホをポケットにしまう。


『まもなく、3番線、電車が参ります』

と丁度その時に聞こえてきたアナウンス。ふと視線を左に振ると、遠くに見えてくる電車の頭。帰ったらまず何するかなぁ、なんてぼんやり考えながら電車の方を見つめていた。


と、その時。


俺の視界に入ったのは最前列に並んだ子供を連れた奥さんだ。子供は電車が来る事に気づいてはしゃいでいるが、母親らしい奥さんは荷物とスマホで手が塞がっている。今も疲れた顔でスマホを弄っているだけだ。……ちょっと危なっかしいな?


そう思ってその親子を注視していた時だった。


『ビュゥッ!』


風が吹いた。そこまでの強風じゃない。けれど……。


「あっ」


小さくて軽い子供をほんの僅かに動かし、ホームの淵から突き落とすには、十分な風だった。落ちた子が茫然と声を上げ、それに気づいた奥さんの表情が一瞬で強ばるのが俺にも見えた。更に近くにいた大人たちもまた、『あっ!』と言わんばかりの表情だが、誰も咄嗟に動けていない。奥さんが手を伸ばしているが、間に合いそうにない。


…………俺以外はっ!!


「こなくそぉぉっ!!!」


気づいた時には体が動いていた。持っていた鞄を投げ捨て、ホームの淵を走る。そして線路に向かって飛び込みながら、腕を子供に引っかけ、良く分かりもしない遠心力の、円盤無げのようにホームの方に向かって投げた。


幸い、視界の端で誰とも知らぬおじさんが子供をキャッチするのが見えた。それに一瞬安堵した直後。


『パァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!』


耳をつんざく程の警笛を鳴らしながら突進してくる電車。……それが、俺が最後に目にした物だった。




~~~~

「は~い、と言う訳であなたは死にました」


そして気づいた時には、真っ白な世界で俺の目の前に立っていた女神みたいな人。……でも神様って割にはなんか威厳がねぇなぁ。って言うかコスプレしたダウナーなJKみたい。


「って言うか、え?俺マジで死んだの?」

しかし理解が追いつかない。気づいたらこんな場所に居て、頭の中が混乱している。だってのにいきなり死刑宣告って。……ちょっと色々理解する時間が欲しいなぁ。


「はい。まぁ、こっち(神界)の手違いなんですけどねぇ」

「は?」

 おい待て。この女神、何と言った?こっちの手違い?それってつまり……。

「えっ!?えぇっ!?ちょちょちょ、ちょっと待てっ!?なら俺、今日死ぬはずじゃなかったって事ですかっ!?何て事してくれてるんですかっ!!」

「ですからぁ、そのお詫びとしてあなたは今からチート能力を貰って転生するんですよぉ」

 怒る俺に対して、どこか無気力な女神の態度に心底腹が立つが、気になる単語が聞こえてきた。


「えっ!?チート能力?!転生っ!?」

「そうですよっ、っと」


圧倒的な情報量に理解が追い付かず、驚いている俺にお構いなしの女神様はどこからか巨大なルーレットをって待って!

「今のそれどこから出しましたっ!?」

「あぁ、そういう細かい事気にしなくて良いんでぇ」

「いや気にするぅっ!明らかに女神様(?)よりデカいしっ!何も無いところから出てきたしっ!」

「あぁ、まぁ、女神だから?」

「なんで疑問形っ!?いや凄いけどさっ!」


色々ツッコみたいっ!って言うか、転生とかってマジかよっ。チート能力も貰えるとか。昨今のラノベかってのっ!まぁちょっと嬉しいけどさっ!ど、どんなチート能力とか決められるのかっ!?だとしたら、ミリオタである俺としては銃火器に関係した能力が欲しいな~!あぁ、夢が膨らんでいく~!


「はいは~い。それじゃあはいこれ」

「へ?」

内心浮かれていると、不意に手渡された物。


「これ、ダーツ?」

文字通りダーツの矢だった。何でこれを?聞きたくて顔を上げた時。


「はぁい。それじゃあルーレットをよく見て下さい?ここにはぁ、あなたの趣味から算出した、あなたが好きそうなチート能力が書かれていますよねぇ」

そう言ってルーレットを指さす女神様。


確かに女神様の言うとおり、そこには俺の好きなミリタリー色溢れるチート能力が書かれていた。


しかし、何だよ『ARチート』って。他にも『SGチート』とか。『HGチート』、『SMGチート』、『SRチート』とか。……ちょ~っとやっつけで作った感があるなぁ~~!し、しかしARはアサルトライフルとかだよなぁ。……ちょっと欲しいし、興味があるなぁ~。


「あ、あの~。ちなみにこのチートって、具体的にはどんな能力なんですか?」

「え~っと、例えばこのARチートだと、あなたの世界でぇアサルトライフル、ってジャンルに分類される銃とぉ、それに付属してるオプションパーツゥ?みたいなのを何個でも召喚出来ますねぇ」

俺が聞くと、またしてもどっかから取り出した本をパラパラとめくってから答える女神様。しかし聞く分にはかなり良いチートだぞこれはっ!


「えっ!?それならM4A1もっ!?AK47もっ!?何でも召喚出来るんですかっ!?あとあと、ARのマガジンやスコープなんかもっ!?」

「え~っと、あ~。出来ますね~。あと、オプションで色々パーツとか工具があるみたいなんでぇ、色々自分でカスタマイズも出来ますねぇ」

「お~~~~~!マジか~~~~!」


そ、それってオリジナルのカスタマイズARが作れるって事だよなぁっ!やべぇ楽しそうだっ!ガンマニアとしてはこれ以上欲しいチート能力は無いぞっ!

「よ、よしっ!こうなったらやってやるっ!ダーツの経験は無いが、確実にARチートを入手してや……」

「はぁい、それじゃあレッツスタートォ」


次の瞬間、意気込む俺を無視して回り出すルーレットってえぇぇぇぇっ!?

「ちょっ!?ま、回ってませんルーレットっ!?」

「えぇ?はぁ、まぁ回りますよぉ。それがここでのルールなんでぇ」

嘘だろおいっ!?フレンド○ークかっ!?知ってる人だってもうそんなに居ないぞっ!?


畜生頭の中で『パ○ェロ!パ○ェロ!』のかけ声が聞こえるぅっ!

「あ~、ちなみにぃ、外したらチート無しで転生なんでぇ、気をつけて下さいねぇ」

更に追い打ちぃっ!?嘘だろっ!?チャンスはこの1回だけかよっ!?色々酷ぇなそっちの手違いで死んだってのにっ!?

「それはあんまりじゃないですかっ!?せめて外しても、もう2~3回チャレンジさせてくださいよっ!?」

「あ~~。それは無理ですねぇ。そう言うのはダメって言うのがここのルールなんでぇ。皆チャンスは平等にぃ、ってこのルール作った神様が言ってたんでぇ」

「嘘だろおいっ!?こっちはそっちのミスで死んだんだぞっ!?」

「はぁ、文句があるのならぁ、能力無しで転生ですけどぉ、良いんですかぁ?」

「なっ!?う、くっ!あぁもうっ!」


何だよこれっ!何が神様女神様だよっ!殆どブラック企業じゃねぇかっ!正しく『神も仏も無い』ってこのことかっ!?目の前に女神様とか居るけどさっ!大体展開早すぎだってのっ!まだこっちの理解だって完全に追い付いてないってのにさぁっ!


あぁクソっ!だんだんムカついてきたが、落ち着け俺っ。ここで外したら、能力も無しに転生だ。最悪、何でも良いからチート能力は欲しい。……あの中で一番外れは、HG、ハンドガンチートだ。あれ以外ならっ!!!


「ままよっ!」

どうにでもなれっ!そんな思いを口走りながら俺はダーツを投げたっ!


まともな経験も無かったが、運が良かったのか俺の放ったダーツは見事ルーレットに刺さったっ!よしっ!これで少なくともチート能力は手に入ったっ!問題は、『どのチートなのか』ってところだが……。


「おぉ~当りましたね~」

そう言って回っているルーレットを止める女神様。頼む頼む!せめてハンドガンチートだけは避けてくれっ!ハンドガンは好きだが、実戦を想定するのなら、最低限SMGチートをっ!!


俺は必死に祈った。…………がっ。


「おめでとうございま~す、あなたが入手したのはぁ、『ハンドガンチート』でしたぁ~」

「あっ………嘘」

感情らしい物が無い、殆ど棒読みに近い台詞に俺は絶望に居た表情を浮かべざるを得なかった。


しかし女神様の言うとおり、ダーツは無常にも『HGチート』と書かれた場所に刺さっている。何度瞬きをしても。何度目元を擦っても、その現実は変わらなかった。

お、終わった。確かにハンドガンは好きだ。好きなジャンルだっ!しかし趣味と実益は違うっ!どんな世界に転生するにしても、ハンドガンじゃ遠距離は戦えないっ!何とか再考をっ!もう一度チャンスをっ!


そう懇願しようとしたが……。


「はぁい。それじゃあチート能力も決まったので、さっさと転生しちゃってくださ~い」

『ブォンッ』

「へっ!?」

直後に俺の足元に真っ黒な穴がっ!?一瞬の浮遊感の後。


「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?」


俺は有無を言わさず、強制的に転生させられてしまった。



これが、俺の物語の始まり。ハンドガンチートなんて言う、強いのか弱いのか分からないチート能力を授かった俺が、ファンタジー世界で色々やらかす物語の、最初の一ページ目だ。


     第1話 END

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