底辺配信者、美少女を助けて成り上がる！

底辺配信者、超人気美少女を救う

　俺はダンジョンを駆け上がる。

「はあ、はあ、いくら魔法で強化してるとはいえ、元の運動能力が低いから辛い！」

　もともと俺は戦闘中も基本動かない魔法使いなんだ。どうせ死んでも生き返るしやっぱり今からでも無視するか。もしかしたら何かに驚いただけかもしれないし。

しかしそんな考えは目の前の光景を見たらすぐに消えた。

『ガァアアアア…！』

「きゃああっ！？た、助けて、だれか…いやぁ！こ、来ないで！」

怪我をしてうずくまっている少女と一匹のオーク。いくらダンジョンで死なないといっても痛みがないわけじゃない。さすがにこれを見過ごすのは後味がわるい。

「というわけでオーク君、悪いがちょっと止まってくれ[バインド]おい、あんた大丈夫か[フル・ヒーリング]」

「や、やだっ！…え、もしかして本当に助けが来てくれたの…」

とりあえずオークを縛って動きを止め少女の怪我を治す。

「ああ、悲鳴が聞こえてきたから何事かと思って駆けつけたらこんな状況だったから、助けさせてもらった」

「あ、ありがとうございます。あ、でも今はそうじゃなくて、す、すぐに逃げなきゃ！」

「どうして、オーク相手に逃げるんだ？お前もS級ダンジョンに入れるくらいなんだから本来オークぐらい余裕なはずだろ？」

ここS級ダンジョン[天空の塔]では様々なモンスターが出現するのだがオークはその中でもかなり雑魚寄りであり、このダンジョンに入ることができる人なら追いつめられるどころか苦労すらしないはずなんだが。

「あれは、確かに見た目はオークですが強さが全く違うんです！おそらくユニーク個体なのではないかと…」

なるほど、確かにユニーク個体なら納得できる。まあ、そんなもの俺には関係ないけど。

「へー、まあとりあえず倒すわ。[フレイム]」

「いや、話聞いてました！？倒すって何ですか！逃げましょうって言ったんですよ！」

何か嫌な予感がし始めたので会話を切り上げるためにさっさとオークを焼き殺す。

確かに普通のよりも耐えていた気がするが死んだのでどうってことないだろう。

「え、魔法でワンパン…おかしくないですか！私あんなに苦労したのに！」

「あー、うん。相性が良かったんじゃない。じゃ、俺帰るね」

「え、いやお礼とかさせて…行っちゃった」

さっきのはやばかった。姿を見たときから薄々気付いていたのだがあいつはユミルだった。しかも配信中。

「いやー、同じところを配信してるって知ったときはまさかって思ったけど本当に遭遇するなんてそんなこともあるんだなぁ」

「というかやば、思いっきりため口で話しちゃったよ。とりあえずさっさと切り上げたけど…生意気だ！とか炎上しないといいなあ…」

有名にはなりたかったが炎上はさすがに御免被りたい。

「さっきのこと、忘れててくんないかなぁ」

やっぱり見捨ててればよかったかなーなどと割とひどいことを考えながら後悔の内に彩芽は帰路についた。

しかし、早々に場を離れてしまった彼は知らなかった。

「さっきの人、誰だったんだろう。あんなに強い人初めて見たし、助けてもらったお礼もしたいし。視聴者のみんなは知らない？」

「あぁ、もう一度会いたいなぁ」

助けた彼女がまるで獲物を狙う目をしていたことを。

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