底辺配信者、美少女を助けて成り上がる!

あと

底辺配信者は人気が出ない

「[マテリアル・バースト]!」


『グオオォォ・・・』


ダンジョンのボスである天空龍が魔法の一撃により地に堕ちる。


「はーいボスを倒しました!これにてS級ダンジョン[天空の塔]攻略完了でーす。今回の配信はこれで終わろうと思います。ご視聴ありがとうございましたー」


 ダンジョン攻略を終え3人しかいなかった配信画面を閉じる。


「あー何でバズらないんだろうなー、最高難易度のダンジョンをソロ攻略なんて話題性抜群だと思ったのに」


 昔、世界中にダンジョンが出現した。色々な問題も起きたそうだがダンジョンは人々に恩恵も与えた。それらを求めてダンジョンに潜るものは多く、中には一回の攻略で末代まで暮らせるほどの富を築いた者もいたという。


 しかしそんな時代はすぐに終わりを迎える。ダンジョン内なら死んでも生き返ることができる魔道具が発見されたことによって探索者の数が急増したせいで、最初は貴重だったダンジョン産の道具も供給が進み次第にその価値も薄れていった。


 そして最終的に人々がダンジョンに求めたのは娯楽だった。


 ダンジョンが与えた恩恵の中には[魔法]や[スキル]があり、それらを用いて魔物を倒しダンジョンを攻略していく様を配信するのが今の流行りなのだ。


 俺、たいら彩芽あやめもその流行りに乗っかった一人なのだが・・・

 何故か配信が伸びない。


 元々ダンジョン攻略は趣味でやっていたこともあって探索者の中でも実力はかなり上の方だと思う。最難関のダンジョンとか普通に攻略できるし。しかも伸びてる動画は[高難易度ダンジョンに挑戦!]と銘打たれたものでも精々がA級、大半がB級程度。しかも攻略に失敗しているものの方が多い。それでもコメントは称賛にあふれていた。


 これはS級ダンジョンの攻略なんてしたら人気間違いなしと思っていたのだが、現実は厳しかった。初めに投稿した動画は一週間たっても十数回しか再生されず、二回目以降に至っては一桁がほとんど。それでも諦めきれずに半年以上もやってきたがチャンネル登録者数は20人程度。配信をしても来るのは精々一人か二人位で大体はダンジョン攻略の文字につられてきた初見である。


「やっぱり華やかさとかなのかなー、やっぱり人気のあるのって女の人の方が多いし」


「特にユミルはすごいよなー、今見たら同接5万人超えてるし。というか初めてのS級に挑戦ってあるけど、もしかしてここじゃないか?こんな独特な造り[天空の塔]ぐらいだし」


 優未ゆうみユミル、チャンネル登録者100万人を超える大人気ダンジョン配信者。どこか気弱な雰囲気とそれに見合わぬ実力と戦闘時のギャップが受けている、らしい。


 もともとダンジョン配信が好きな知り合いの勧めで彼女の配信を見たのだがその時に俺は思ったのだ。同年代で実力派だ、と人気な者がこれなら俺でもダンジョン配信者として食っていけるんじゃないかと。


 まあしかしそんな甘い話は無かったのだが。


「かたや3人かたや5万人。同じダンジョン攻略なのにどうしてこんなに差が出るんだろうなあ」


 そんなことをぼやきながら家へ帰ろうとダンジョンを登っていたら――。


「きゃ――っ‼」


 ふいに悲鳴が聞こえてきた。


「え、今のやば。とりあえず急ぐか[スピードブースト]!」


 俺は声の発生源へと走り出した。




_____________________________________


ダンジョンには難易度準にランク付けがされており上からS>A>B>C>Dまである。

Cより上のダンジョンは1ランク下のダンジョンを最低でも二つは攻略しないと入ることすらできない。






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