独り身

豊島夜一

独り身

春眠や六畳一間綱渡り


花筏はないかだリモート会議は滞り


予定地にたんぽぽありて背筋伸び


新緑や生き生きとする線路かな


何もかもわからぬ虫の舞う薄暑


夏浅し独りで決めた紺のシャツ


梅雨晴に古書をもとめて出会いなし


ミジンコをかたどる夏の雲彼方


かき氷エントロピーは難しく


孤独死に大家と話す炎天下


仙人掌さぼてんを孤高貫く師と仰ぎ


天高し人鳥ペンギンの声一直線


星月夜ウラムの螺旋も謎多き


いたずらに「いいね」を増やす夜長かな


息白し怪獣の真似またできず


グラビア誌代わりに敷いて一人鍋


洗濯機回る眺めるクリスマス


大晦日靴下の穴諦める


雪だるま合格祈願まで担う


何者もなりきれぬままみぞれかな



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

独り身 豊島夜一 @toshima_yaichi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ