連句『古い森』

三夏ふみ

『古い森』

古い森 差出人の 無いはがき

底の奥 もわりと上がる 黒汚泥

唐突な 着信音に 振り向くも

喉渇く ためらう指先 いつもの声

ふざけては 帰省の話 落ちる影

蝉の声 ピタリと止んでも 気がつけず

帰路の旅 二人のはずが 悪友も

宴の席 祖父の思い出 金の匂い

壁を背に 猟師の忠告 禁足地

庭の隅 沈む暗闇 纏わりつき

朝起きて 悪友二人 どこにもいず

探す声 森に吸われて 静まれば

銃声と 犬の悲鳴が とぎれとぎれ

頬伝う 赤見上げると 速贄はやにえの友

半狂乱 走る彼女は 宙を舞い

ずるじゅるり 異形の大蛇に 元カノの半身

振り向いて 逃げる足首 薙ぎ切られ

泣きじゃくり 顔を擦り付け 懺悔する

腹さすり 微笑む口元 耳まで裂け

静寂が ゆるりと染みる 古い森

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連句『古い森』 三夏ふみ @BUNZI

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