第243話 69階ふたたび 2

「見事なり! ユウよ。嵐のような剣舞であったな。長剣の2本持ちは難易度が高いが見事に戦いきった。余の国にもなかなかそちほどの腕前の者はおらなかったぞ」


 陛下からお褒めの言葉を頂戴したのに、ユウには相変わらず反応がない。返事がないので変な空気になっているが、陛下も元々ユウの返答に期待はしていないはずだ。


「確かに凄かったね。ユウがあそこまで二刀流を使いこなせるとは思っていなかったよ。それにモモちゃんのファーストアタックも、とどめの一撃も良かったよ」


「ありがとうございます! ご主人様! モモカは頑張りました!」


 自分でもうまく戦えた自信があったのだろう。モモちゃんはとても嬉しそうだ。


「しかし、手を出す暇もなかったね」


「うむ。まあ、戦いには相性というものがある。あの鉄の塊を相手にするには余やマコトは向いていない」


「ワシの新魔法を試してみても良かったのじゃが、2人にも当たりそうだったので辞めておいたのじゃ」


 ガレフの新魔法はアースジャベリンだったかな。仲間にあたってしまうとは精度が低いのだろうか?

 得意のアイアンバレットだったら、いつも味方にあてる事なく敵だけを撃ちぬいているのだが――。


「それじゃあ、次のファーストアタックはガレフに任せるよ。モモちゃんはガレフの魔法が敵に当たってから突撃してね」


「了解です!」

「了解じゃ!」


 トリケラトプスにまたがり、先に進むとさっそく次のアイアンゴーレムが現れた。


 ガレフは騎乗したまま杖を振り上げる。


「アースジャベリン!」


 ガレフが小さい体のわりに良く通る声で呪文を発すると、彼の頭上に先端のとがった岩がいくつも並んだ。


 思ったよりもでかい、電柱くらいの太さがあるぞ。それが 1…2…3…4……7本もならんでいる。


 ガレフが前方に杖を振り下ろすと、7本ある岩の槍が一斉にアイアンゴーレムに向かって飛んでいった。次々とアイアンゴーレムにぶち当たり、槍は派手に砕け散るがしっかりとダメージは与えているように見える。


 すべての槍が命中した後――、土煙が風で流されると片腕のとれたアイアンゴーレムが姿をあらわした。さすがに一撃で倒しきる事はできなかったが、十分なダメージを与えたようである。


「シールドチャージ!」


 続いてモモちゃんのぶちかましで、よろめいたアイアンゴーレムにさらにメイスの一撃がはいる。

 このままモモちゃんが倒してしまいそうだと思って眺めていると、ユウの両手に構えた剣がキラリと閃いた。次の瞬間、ユウはアイアンゴーレムに向かって駆け出していく。


 俺は確かにその姿を追っていたはずだ。


 だが、ぶつかる直前、ユウの姿が一瞬視界から消える。

 気づけば彼女はすでに駆け抜けており、すれ違ったアイアンゴーレムの胴体は真っ二つに裂け、音もなく崩れ落ちていた。


「おお? 今度は一撃で切り伏せたぞ。さっき手間取っていたのは何だったんだ?」


「ふむ、ガレフの魔法とモモカの攻撃で強度が落ちていたのだろう。あれだけ弱らせた後なら余でも斬れるだろうか? いや、難しいかもしれんな」


 なるほど、ユウも今なら斬れると判断したということか。そんな事をよく見極められたな。他は何もできないけど剣の腕だけは、さすが神レベルなだけある。


「ユウ姉ちゃんもかっこいいなあ。やっぱ剣だぜ! 俺もあれくらいできるようになりたいな」


 カレンもユウの剣技を見て鼻息が荒い。あれはマネできないと思うが目標を高く持つのはいいことだろう。


 俺はアイアンゴーレムの残骸をマジックバッグに放り込んだ。こいつは丸ごとギルドで買い取って貰えるので美味しい敵だ。魔石と良質な鉄に良い値がつく。


 この69階でも61階の様にエイプ達が採掘してくれれば今よりも収入は増えるのだが、今のエイプ達にはまだアイアンゴーレムは倒せないと思う。もっとレベルを上げるか良い武器を支給する必要がありそうだ。


 とりあえず今は自分たちで稼げば良い。倒し方も解ったし、パーティーメンバーの火力も上がったので、ここからはサクサク狩れるだろう。


 俺たちは見つけたアイアンゴーレムを片っ端から倒しながら、山を登り次のゲートを目指す――。


 だが、次のゲートにたどり着く前に日が落ちてきてしまった。次のゲートまであとどれくらいか解らないので、今日はここで野営とする。


 なるべく溶岩の川からは離れた場所を野営地としたが、離れても当然暑い!

 今夜は寝苦しい夜になりそうだ。


 最初のころは外で料理するのが楽しかったのだが、少し飽きてきたので料理もロレッタに作ってもらったシチューがマジックバッグに入っている。

 もしこれがなければ、こんな暑いところで火など起こして料理する羽目になっていたので本当に助かった。


 一応、鍋に蓋をしてヒモでくくってこぼれない様にしたが、おそらく何もしなくても今までの経験上、マジックバッグの中にシチューがこぼれるということはない気がする。


 とりだして見ると、やはりこぼれていないし、まだ暖かい。


 しかし、メニューは失敗したな。ここは暑いって解っていたのだからシチューは辞めておけばよかった……。


 耐熱ポーションのおかげでだいぶ助かっているが、あまり食欲はない。今日は冷たくてさっぱりとしたソーメンかなんかで簡単に済ませたい所だ。


 もちろんソーメンなんてないが、無理だと思うとよけいに食べたくなる。帰ったら頑張って作ってみるか? しかし、そこまでして食べたいかと考えると、そうでもない気がするぞ。

 俺が不毛な思考に囚われているとモモちゃんが近づいてきた。


「ご主人様、今日のご飯はなんですか?」


「今日はロレッタが作ってくれたシチューがあるよ」


「いいですね! では、シチューとパンと……お肉はご主人様が焼いてくれるんですよね。私はそれだけでも十分です」


 ……嘘だろ?


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