第174話 マナポ作成
「そ、そうですよね。とうぜん私もマコトさんがそんな酷い事するはずがないって思ってましたよ。でも、シスターを奴隷にするのは良くないと思います。変な噂が立ってしまうのも当然ですよ」
「アナを奴隷にしたのは彼女の身を守るためだったんだ。彼女が安全になって奴隷でいる必要がなくなれば、すぐにでも奴隷から開放するさ」
「やっぱり、何か理由があったんですね…………。あ、その理由は知りたくないです。エナジー茸の時のように変な秘密を知ったら、私は胃が痛くなってしまいます。あの時も胃の粘膜を保護してくれるポーションをがぶ飲みしてなんとか耐えれたですよ」
今頃、アナは教会での地位を高めるために頑張っている頃だろう。色々なスキルレベルも上げておいたので、教会内での権威を高めるためにあれらは役に立ってくれていると思う。
これでアナが教会内で力を持てば、簡単に命も狙われることも少なくなり、彼女がひき肉なってしまう事もないだろう。
そうすれば俺の奴隷から解放する事ができる。とりあえず次に彼女に会ったら、あの首輪だけは外してもらおう。
アレがないだけで俺への風評被害はだいぶ収まるはずだ!
「確かにネムルちゃんは理由を知らない方がいいかもしれないな。あんまり楽しい話でもないしね。それよりもマナポーションを作ってほしいんだ。ちゃんとエナジー茸を持ってきたよ」
俺はマジックバッグから大量のエナジー茸をテーブルにぶちまけた。
「わぁ、ステキです。前回は急に禁制品のエナジー茸を出されて恐怖しましたけど、今回はちゃんと領主の許可書があるので、安心ですね。私も堂々とマナポーションを作れます。久しぶりなので楽しみですよ」
いそいそとキノコを奥の部屋に運び込むネムルちゃん。あの感じだとポーション作りが好きなんだろうな。好きな事を職業出来るとは幸せな事だ。
「あ、完成したら孤児院に持っていきますよ。今日の夕方にはお届けできると思います。お代はその時で大丈夫です」
「配達してくれると助かるよ。ありがとうね。それじゃよろしく」
「は~い」
ネムルちゃんに挨拶をして店をでた俺たちは孤児院へと歩き出した。
「さっきは助かったよ。モモちゃんの一言でネムルちゃんの気持ちが変わったと思うよ」
「そうですか? 私は本当の事を言っただけですよ」
モモちゃんはきっと頭の中で思ったことを言っただけなのだとは思うが、モモちゃんが言ったという事が大事なのだと思う。
ネムルちゃんから見ても、この奴隷は嘘とか付けなさそうと思えたのだろう。
これはモモちゃんに感謝だな。
そうだ、お礼に何か美味しいものをモモちゃんに御馳走してあげようじゃないか。
何がいいだろうか? モモちゃんの好物と言えばカロリーだろう。
よし、今夜は背徳のハイカロリー飯を振る舞ってやろうではないか。
まずはカロリーと言えばピザだ。ちょうど俺も食べたかったから、ガレフにピザ窯の作成を頼んである。あとは揚げ物も良いだろう。揚げ物をおかずにピザを頬張って貰えば、たっぷりとカロリーを摂取できる。
そうするとピザ、唐揚げ、ポテトあたりが良さそうだ。しかし唐揚げは何回か作ったが醤油がないのが残念だ。それだったらフライドチキンの方がこの世界には向いているのではないだろうか?
なんで今まで作らなかったのだろうか、白髭のおじいさんには敵わないと思うが、手に入るスパイスでフライドチキンに挑戦してみよう。
そしてポテト。今までにこちらの世界でも芋を素揚げにしてフライドポテトは作った事があったが、俺はポテトチップが食べたい。
日本に帰る事ができるかもしれないという可能性が見えてから、なぜかポテチを食べたい欲が生まれてしまった。きっとあの味を思い出してしまったのだろう。
「今日は休みだから久しぶりに料理をしようと思う。モモちゃんもこれから市場に行って買い物するから手伝ってよ」
「やったー! ご主人様の料理大好きです。荷物持ちは私に任せてください。さあ買い物いきましょー!」
町の中心の市場へと行き先を変更――。
パン屋で小麦粉、パン種を購入。ピザ生地はちょっとだけ発酵すれば良かったはず。パンはロレッタでも焼けるようになっていたので、ピザ生地も教えれば大丈夫だろう。
雑貨屋でスパイスを物色。
バジル、オレガノ、タイムが手に入った。家にコショウとニンニクはあるので、これでフライドチキンはなんとかなるか? ただ、最近はロレッタが肉にスパイスを効かせてくれるので、孤児院にあるスパイスと被るかもしれないな。
食料品店でピザの具になるトマト、チーズ、腸詰を購入。それと鳥肉。
最後に大量のジャガイモを購入。
大きな袋ごとモモちゃんが担いでくれる。モモちゃんが居なかったら持ってかえれない量だ――。
「ただいまー」 台所に荷物を運び込むとロレッタが出迎えてくれた。
「まあ、マコトさん。どうしたんですか? 大量の食料を買ってきたみたいですけど……」
「今日は俺も久しぶりに料理をしてみようと思ってね。色々買って来たんだ」
「え、そうなんですね。それは楽しみです。そろそろ新しい料理のレシピを教えて貰いたいと思っていたんですよ」
「今日はピザとフライドチキンとポテトチップスを作るぞ!」
「おー? ???」
料理名を伝えてもロレッタにはピンと来ない様だ。この世界ではまだ発明されてない料理なのかもしれない。
「まずはピザからいこう。ピザ生地はパン生地の少しだけ発酵した状態にしてくれ」
「小麦粉を練って一次発酵で止めるって事ですね」
「そ、そうだね。ピザソースは玉ねぎをオリーブオイルで炒めたら刻んだトマトを加えてオレガノ、バジルなどのスパイスを入れて、最後に塩で味を整えて煮詰めてくれ」
「了解です」
「ピザ生地が出来たら円盤状に伸ばして、ピザソースを塗ってスライスした腸詰やチーズをたっぷり載せて、ガレフに庭に作って貰ったピザ窯で焼くよ」
「こうですね? 解りました」
「フライドチキンは唐揚げのスパイスバージョン。衣にたっぷりとスパイスを効かせてほしい。スパイスの調合はロレッタが今後色々と試してみてくれ」
「お任せください」
おー、何て楽なんだ。俺が適当な作り方を教えると俺よりも上手くロレッタが作ってくれる。
さらにロレッタは作り方を覚えると、辺りを飛んでいるインプに指示を出し始めた。
ロレッタシェフを中心にキッチン全体が動き出す。これならポテチも大量生産できそうだ。
「ロレッタ。ポテトチップスは薄く切って並べて、そのまま少しおいて乾かしてから揚げるだけだよ」
「なるほど、こうですね」
ロレッタはジャガイモを薄く切り出す。料理スキルの高いロレッタは薄く均一にジャガイモを切る事ができている。俺が切ったらこうはならないだろう。もっと分厚くて、厚みもバラバラになってしまう。
だが、ロレッタは丁寧に切っているので、ちょっと時間が掛かる。見かねたインプが手伝いだしたが、ロレッタの様には上手く切れない。
これはミスったな。
大量にジャガイモを買ってしまったぞ。このペースでは捌ききれない。
スライサーがあれば誰でも薄く切る事ができるのだが…………。
ん? スライサーか、ここには人間スライサーが居た様な――――。
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