第163話 地下温泉

 肉体的にも精神的にも疲れ切った俺は地下の温泉へと直行した。こういう時に風呂は助かる。体を湯につけると身も心も湯に溶けていくようだ――。


 とりあえずアナのトラブルはこれで落ち着いたと思いたい。戻ってきた彼女の報告を聞くまでは解決したか解らないが、これ以上は考えてもしょうがないだろう。


 さらに彼女の事で気になる事に夜のお勤め発言がある。

 今夜は大丈夫だと思うが解らないぞ。


 よく体を洗っておいた方がいいだろう。何が起こるかは本当に解らないのだ!


 それに彼女はダンジョン探索も手伝ってくれると言っていたな。

 アナのステータス画面をチェックしてみよう。


 名前:アナスタシア

 種族:人間 性別:女

 職業:聖女(奴隷) レベル:13

 スキル:棍術5、光魔法8、交渉7、算術3、カリスマ1

 スキルポイント1

 物理攻撃力:185

 物理防御力:260

 魔法攻撃力:2100

 魔法防御力:768


 なかなか強そうじゃないか、レベル13でこの数値なら悪くない。攻撃力や防御力は探索用の装備に変えれば、さらに伸びるだろう。

 いや? なんか計算するとおかしいぞ。スキルポイントが多すぎる。


 あ、シスターじゃなくて聖女? 


 いったいこの町はどうなってるんだ? 勇者の次には聖女まであらわれた。

 しかも2人とも奴隷になってしまったんだが、本気でこの世界は大丈夫なんだろうか?


 これじゃ世界の危機とか来ても救えないだろ…………。

 まあ他にも勇者や聖女は居るのかもしれないので、深く考えるのは辞めておこう。


 それよりもスキルポイントを足してみると勇者と同じように1レベルUPで2ポイント貰えるようだ。

 結局これが一番チートだと思う。正直うらやましい。


 さらにアナが持っているスキルのカリスマはレアスキルらしく輝いてみえる。

 スキル名的には聖女専用スキルなのか? 

 おそらくパッシブスキルで魅力値補正的な感じかなと思うが、どうなのだろう。

 あれだけ整った容姿をしていれば十分魅力的に見えると思うので、特にスキルで強化されているとは思えない。


 ただ、今はレベル1だから効果をあまり実感できないだけかもしれないので、とんでもないチートスキルの可能性もある。このスキルも取り扱いに注意が必要だろう。


 あとは光魔法。これをアナは神聖魔法って言ってた気がするが、ステータス表記上は光魔法となっている。これは教団が格好つけて神聖魔法と名乗っているのかもしれないな。


 光魔法の詳しい内容は今度アナから聞き出さなくてはならない。回復があるとポーション代が浮いて助かるので、期待したい所である。


 ひとつ問題となるのはダンジョンは6人パーティーが基本らしいから、誰かと交代しなくてはならない事だ。


 相性を考えると陛下と交代することになりそうだが、役割的にはガレフに近い気もする。

 前衛に出るならモモちゃんと武器種が被っているが、モモちゃんの役割をアナにさせるのは無謀だろう。


 モモちゃんとカレンの役割は代えが効かないので交代できない。一番火力の高いユウもできれば外したくない。そうするとやはりガレフか陛下との交代が良さそうだ。


 一度、陛下とパーティーを組んでみて相性を確かめてみるのが、まずは良いのかもしれないな――。


 考えがまとまった所で風呂を出る。次は夕飯だ。


 *ゴクゴク*


 ぷはぁー、風呂で火照った体に冷えたエールが染みわたる――。


 この充足感は労働の一番のご褒美だろう。家でゴロゴロしているだけでは絶対に味わう事が出来ない。この世界に来て良かったと思える瞬間だ。


 さらに、ダンジョン探索が泊りがけになって遠征となった翌日はお休みにする事にしよう。これで気兼ねなく飲み食いする事ができる。


 当孤児院はホワイトな福利厚生の充実した職場環境を目指しているので当然の事だ。


 しかも食事は席に座るだけで勝手に出てくる。インプが運んできてくれるのだが、そういえばアナにはこのインプ達を何と説明したらよいだろうか?


 ここは正直に陛下の事を包み隠さず話すしかないだろう。ここで一緒に生活してダンジョンにも行くなら隠し通すことは難しい。


 ユウには何故かバレてないようだが、そもそもユウの魔物判定の基準がどうなっているのか解らない。今もインプにはなんの反応も見せずに食事に集中している。


 意外と陛下が兜を脱いでも無反応な可能性もある。今度試してみても良いかもしれない。


 久しぶりの我が家での食事を堪能できた。キャンプだと焼いただけ、軽く煮ただけなどの簡単な料理になりがちだが、孤児院だと調理に時間も掛けられるし、その分品数も多く出てくる。


 たっぷり食事を取って、自分のベッドに潜り込む。やはり寝袋なんかより、自分の布団が最高だ。


 良く眠れそうである――――。



 今日は休日、朝もゆっくりと惰眠をむさぼれる。


 今は何時だろうか? 

 まだ昼にはなっていないと思うが、これ以上は眠れそうにない。俺はベッドから起き上がり、顔を洗って朝食を食べに食堂へと向かう――。


 食堂に入ると背筋を伸ばしてお行儀よく座っているアナが目に入った。


 服装はいつものシスター服だが、なにやら首にごっつい鉄の首輪をつけている。

 教会ではめられてしまったのだろうか?

 アナの白くて細い首にあの首輪は痛々しい。おまけに首輪には太い鎖まで付いている。


 何があったのだろう――――。


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