第147話 新キノコ

 ギルド長に報告を終えて、トリケラトプスとサルの素材の買取をお願いしたが、どうやら死体のままでも良いようだ。ギルド奥の解体場で素材にするらしい。

 ちなみにトリケラトプスは硬い革が鎧の素材になって、サルはやっぱり脳みそが売れるそうだ…………。


 今後もサルの解体はギルドに任せよう。孤児院地下で解体すると冷蔵庫が脳みそだらけになってしまう。


 素材から解体料金が引かれた値段が今日の収入となったが、ミノタウロスのツノと合わせてなかなか良い稼ぎとなった。だんだんと使い道に困るほどの収入になってきたが、金は幾らあっても良いだろう。


 本来なら装備の更新に金を使いたい所だが、店売りの装備はあまり良いものがなかった。町の店で手に入る最上級の装備はもう入手したので、次はオークションとやらに参加して、更なる高みを目指す事になるだろう。


 そうなるともっともっと金が必要だ。まだオークションへの参加の仕方が解らないが、今から金を貯めておきたい。


 我々の主な収入源はダンジョン探索で得た素材と孤児院地下で収穫されるキノコの販売となっている。もっと収入を増やすために、もうすぐ収穫できるというエナジー茸も売れないだろうか?


 マナポーションの原料になるなら、売れそうな気がするのだが…………。

 孤児院に戻った俺はキノコ農場へと足を運んでみた――。


「いらっしゃい! マコチン。今日はどうしたの?」


 モグラ娘のリーナが俺を出迎えてくれた。キノコ農場は相変わらずストーンゴーレムが忙しそうに働いている。たくさんのキノコが育てられている様だが、俺にはどれが何のキノコなのか解らない。


「ガレフにエナジー茸というキノコの事を聞いて見に来たんだ。ポーションの材料になるんだろ?」


「そうよ! 乾燥させた干しエナジー茸を食べても精神力は回復するけど、錬金術師ならポーションにする事もできるわ。エナジー茸をこっちで栽培するのには苦労したけど、やっと育ってくれたのよ」


「おお、栽培に成功したのか。それでどれがエナジー茸なんだ?」


「これよ!」


 リーナが指さすキノコを見ると、それは紫色をした長細いキノコだった。毒とかありそうで、絶対に口にしてはいけないような風貌をしている。


「これか…………。毒とかないのか? 禍々しい色をしているぞ」


「生では食べない方が良いと思うよ。良く乾燥させれば毒は抜けるらしいけど、私は食べた事ないな。パパなら食べたことあるかも?」


「見た目通り毒があるのか、それならしっかりと加工してポーションにした方が良さそうだな。どうやってポーションにするんだ?」


「さあ? それは錬金術師じゃないと解らないよ。私はキノコの育て方しか知らないわ」


 そりゃそうか。なんでも作れるわけないな。ポーションに加工してから売った方が儲かるだろうけど、錬金術師の店にこのキノコを定期的に売る事ができれば、それでも収入にはなる。


 しかし、この町の錬金術師の店には精神疲労を回復するポーションなんてなかったと思うのだが…………。


 まあ店に行って聞いてみればいいだろう。どうせ買い取って貰えるか聞きに行かなくてはならない。


「これから錬金術師の店にキノコを持って行ってみようと思うけど、リーナも来るか?」


「私はいいかなぁ。エナジー茸がやっと育ってきた所だからやる事あるし、それとポーションの作り方は教えてくれないと思うよ」


「いや、キノコを買い取ってくれないか、聞きに行くんだよ」

 それはさすがに向こうも商売だから、作り方は教えてくれないだろう。もし教えてくれるなら錬金術のスキルを誰かに覚えさせて、パワーレベリングでスキルレベル上げて、マナポ大量生産とかできちゃうけど、絶対もめるから欲張るのは辞めておこう。


「なるほど! それなら私のキノコは高品質だから高く売れるよ。特にこのエナジー茸の品質は良いと思う。ダンジョンの近くだからなのかな…………それとも…………」


 リーナは自分の世界に入ってしまったのか、ブツブツ言いながら農場の奥へと歩いて行ってしまった。


 俺はリーナが先ほど指さしたキノコを採取してマジックバッグにしまう。リーナは行かなさそうだが、俺は錬金術師の店に行ってみようと思う。


 モモちゃんに黙って行ってしまうと怒りそうなので、誘わなくてはならない。


 ロレッタも今後の事を考えると連れて行きたかったが、忙しそうだ。

 定期的に売る事になったらロレッタに頼みたいので、連れて行きたかったのだが、しょうがない。ロレッタの労働環境は何とかせねば負担が大きすぎるな。


 モモちゃんと2人で錬金術師の店に向かう――。


 前に買ったポーションは何本かは使ったが、まだあるので今日は買う必要はなさそうだ。

 俺が思っていたよりもポーションの消費は少ない。

 ポーションは値段が高いから助かるが、ポーションを使わずにすんでいるのは、まだ戦闘に余裕があるからだ。今後、戦闘が激しくなればポーションの消費もふえていくだろう。すでにガレフが魔法の使いすぎでマナ切れを起こしている。


 これからは錬金術師のお世話になる頻度が上がりそうだ――――。



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