第143話 ダンジョン51階準備 2

 検証の結果。

 物理攻撃力の数値には武器依存度も高いことが解った。


 検証実験はいちいち、なんでこんな事をするのか説明する必要がないユウにお願いしたが、結果的に剣のスキルレベルが高いユウに頼んで正解だったようだ。とても解りやすい結果となった。


 ユウに様々な武器を持たせてみたが、剣を持たせてみた時と他の種類の武器を持たせてみた時の数値がはっきりと違う。さらに同じ剣でも銅と鋼で倍近く数値に差が出る結果となった。


 試しに俺も銅の剣と鋼の剣を装備してみたが、どちらを装備しても物理攻撃力は低い数値のままで、そこまで差は出なかった。


 正確な計算方法は解らないが、おそらくスキルレベルと武器の性能に相乗効果があるのだろう。

 スキルレベルが高い人ほど武器の性能に最終的な物理攻撃力は大きく左右される様だ。


 さらに基礎ステータスとなる腕力などもスキルや装備で強化できるが、こちらもユウの腕の部分の鎧を付けたり外したりして、腕力20%UPの効果が物理攻撃力に影響するのかも試してみた。


 こちらも武器程ではないが結果に影響を与えるようだ。物理攻撃力が直接20%上がった訳ではなかったが、10%弱ほどの上昇効果がみられた。


 という事は、高い物理攻撃力を出すにはスキルレベルと武器のどちらもハイレベルな必要があるようだ。弘法筆を選ばずとはいかずに、スキルレベルだけ高くても武器のレベルが低いと武器が足を引っ張って、最終的な物理攻撃力は伸び悩むという事だったらしい。


 俺の目の前でぼんやりと突っ立っているユウは、剣を極めて剣神へとスキルレベル的にはカンストしてしまったが、物理攻撃力にはまだまだ伸びしろあると言う事だ。

 店売りの武器ではなく、ダンジョンでユウに相応しい剣などを手に入れて装備を整えて行けば、まだまだ強くなるだろう。


 しかし、ただ突っ立っているユウを見ても全然強そうには見えないな…………。


 無表情なので人形の様だが、華奢で奇麗な普通の女の子にみえる。

 出会った時以外では話し声を聞いた事がないが、こちらの言う事は良く解っているようだし、表情は変わらないが好き嫌いもあるようだ。肉を良く食べるし、俺よりもカレンやロレッタに懐いている様にみえる。


 だんだんユウの動きや態度が人間らしくなってきたのか、俺がユウの行動から感情を読み取れるようになったのか解らないが、良い傾向だと思う。


 また、習慣になってきたことは命令しなくても自分で動くようにもなってきた。なぜかトイレはいまだにロレッタに連れていって貰っているようだが、粗相をしたという話も聞かない。


 ユウのリハビリ生活はうまくいっている様なので、このままある日、急に喋りだしたりしてくれるといいのだが…………。


 しかし、ユウの心の傷は深そうだ。まだしばらくは難しいかもしれない――。


 さて、物理攻撃力には武器依存が強かったが、魔法攻撃力はどうだろうか?


 俺の予想ではスキルレベルに比例して数値が上がると思う。


 ためしにガレフに杖を見せてくれと言って、ガレフの杖装備をつけたり外したりしてみたが、魔法攻撃力の数値が10%上下した。これは木の杖に付いている『魔法強化 弱』の効果だろう。


 となると、スキルレベルと装備効果だけで決まるのだろうか?

 ただ、陛下とガレフを比べると陛下の方がスキルレベルが高いのに魔法攻撃力はガレフの方が高くなっているので、それだけではなさそうだ。


 あと他に魔法攻撃力に関係しそうなのは基礎ステータスだろう。ガレフの方がレベルが高いし、もしかしたらガレフの方が元が賢いみたいなのが、あるのかもしれない。その辺が計算式に組み込まれているのだろう――。


 最後に陛下の謎に物理攻撃力が低い問題を検証してみよう。


 陛下の検証が最後になってしまったのは、何て言って剣をもたせるか思いつかなかったからだ。

 案の定、陛下に銅の剣を持たせようとすると嫌がる。


「なぜ余がこの様な安物の剣を持たねばならぬのだ? 余にはブラッドソードがあるぞ」


「まあ、そうなんですけど……。あ、この鋼の剣はどうですか? 陛下のお眼鏡にかないますかね? ちょっと見るだけみてください」


 ユウから借りてきた鋼の剣を取り出す。本当は両方装備させて数値を比べてみたかったが、しょうがない。


「ほう、ユウの剣か。どれどれ、あの安物よりは幾分ましな様だな。それでも余のブラッドソードにはかなうまい」


 陛下が鋼の剣を眺めている間に物理攻撃力をチェック!

 思った通りに数値が上がったが、なぜか倍以上に数値が上がっている。


 物理攻撃力:2343

 俺よりも全然高いな。

 レベル的に俺の物理攻撃力と同じくらいにならないとおかしいと思うのだが、やはり奴隷強化か…………。

 あれはだいぶ強力なようだ。


「よし、特別にブラッドソードの新形態を見せてやろう。マコトよ。よく見ておくがいい」


 鋼の剣を俺に返して、陛下はブラッドソードを発動。さらにかっこいいポーズまで取ってくれた。普段ならどうでもいいが、検証中なので助かる!


「おお、やっぱり陛下にはブラッドソードが良いですね!」


 物理攻撃力:1151

 鋼の剣の装備を外すとブラッドソードを発動中でも物理攻撃力は元に戻った。

 という事はブラッドソードは魔法攻撃力に依存するっぽいか?

 血術でブラッドソードを発動しているはずだが、闇魔法のスキルレベルをあげるとブラッドソードの攻撃力も上がると考えていいのだろうか…………。


 そうすると陛下の剣術スキルをあげたのは無駄だったかもしれない。

 しかし、攻撃力の数値だけ考えたらそうかもしれないが、相手に攻撃を命中させなければ意味がないし、剣で防御もするのだから技術的な意味では剣術スキルも必要だろう。


「どうだ? この新しいブラッドソードは? 前よりも洗練されたと思わんか?」


 剣の形を変えたらしいが、何がどう変わったのか解らない。カレンなら解るのだろうか…………。


 あ、もしかしてギザギザが増えたか?


 まあ、それはどうでもいいか。

 それより急に気になったのは、クレセントレイガンを装備した時の俺の物理攻撃力はいくつだったのだろうか? と言う事だ。


 いや、もうこの事について考えるのはよそう…………。

 不毛すぎる――――。


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