第79話 ダンジョン31階準備 1
ギルドに着くと今日も賑わっている様だ。何気にギルドに来るのは久しぶりで、落とし穴に落ちて遭難してからは来ていなかったと思う。ギルド内は結構混んでいるが、ブタちゃん効果なのか人混みが割れて前が開き受付までの道ができる。
あれ? どうも自分に視線を感じる…………。
前はブタちゃんに恐怖の視線が集まっていた様に思ったが、今は俺が見られている気がする。気のせいだと良いのだが…………。
今日も受付はローズさんだ。いつも受付に居るような気がするが、ちゃんと休みは貰えているのだろうか?
「あ、マコトさん。お疲れ様です。迷宮で迷子になったと聞いて心配しましたよ」
「心配して頂いて、ありがとうございます。おかげさまで無事に戻れました。その後も探索を進める事ができています。今日はギルド長にお礼と報告と30階ボスを倒したのでボスドロップの魔石を換金しにきました」
「え? 30階のボスってスケルトンパーティですよ? 魔物なのに人間のパーティの様に連携してくるので、急に難易度があがって危険なボスです。マコトさん達は大丈夫だったのですか?」
「まあ、なんとか倒せました。私のパーティーメンバーも6人に戦力が増えましたので、30階も突破することができました。それとギルド図書室の情報のおかげですね」
「普通は6人になってからダンジョン探索をはじめるものなんですが……。まあマコトさんは普通じゃないですから、そんなこと言ってもしょうがないですけど……」
「とにかく、30階突破おめでとうございます!! マコトさん達が1階からコツコツと進めているのを私は知っています。これは凄い探索スピードですよ。当ギルドで30階を超えて探索をしているのは上位10%に限られますので、マコトさん達は上級探索者と今後呼ばれることになるでしょう」
「あ、ありがとうございます」
そうなのか。確かにスケルトンが出るようになってから、見かける探索者の数が減ってきたからおかしいと思っていたが、皆はもっと安全な所で稼いでいたのか……。
「上級探索者になると何か特典とかあるのですか?」
「特にないです。でも周りの探索者から一目置かれるので、こういう仕事だとそれが重要みたいですよ。マコトさんには関係ないと思いますけど」
どういう意味だろうか? 俺だって一目置かれたい。町とかで上級探索者のマコトさんだって言われたいぞ。
「マコトさんはもう一目置かれるぐらいではないですから、二目も三目も置かれてますよ」
俺が何か言おうとしたらローズさんに先回りして言われてしまった。でも俺が聞きたいのはなぜ三目も置かれているのかだ。
「さあ、それでは30階ボスドロップの魔石をだしてください。それを鑑定しているあいだにギルド長にお会いするといいですよ。今日はちょうど2階にいますので、私が声をかけてきます。少々お待ちください――」
ローズさんは行ってしまった。なんとなく避けられている様な気がするが、きっと気のせいだろう。俺はマジックバッグから魔石を取り出してテーブルに並べる。
「ご主人様は凄いですね。上級探索者だなんてカッコいいです」
ブタちゃんだけが俺を褒めてくれるが、俺の承認欲求はもうブタちゃんだけでは満たされない。もっといいねが欲しい。
「マコトさん、ギルド長がお会いになるそうです。今日はギルド長のお部屋にご案内します。その大きな魔石は鑑定に回しておきますね」
ローズさんに連れられてギルド長の部屋に着いた。
「失礼します」 俺はローズさんに促されて、ギルド長の部屋の扉を開いて中に入る――。
部屋の中は意外と豪華な内装で、立派な木製の執務机の向こうにギルド長は座っていた。
「おう、良く来たな。今日はどうした?」
「ええ、先日は助けて頂いてありがとうございました。今日はそのお礼と陛下がこうして立派に探索者をやっている姿を見て頂こうと思いまして。お時間いただきました」
「助けたってお前は1人で勝手にダンジョンから出て来ただろうが…………。 普通は遭難したらその場で隠れて救助を待つんだ。それでも助かる確率は五分五分なんだが、お前は平然とスケルトンを捕まえてゲートから帰ってきたからな。スケルトンエリアを1人で突破して生還した強者と噂になってるぞ」
えー……。また変な噂が立ってしまった。俺はダンジョン内を逃げ回っていただけなんだが、他の探索者からみたら1人でも余裕で行動できてしまう強者になってしまうのだろうか…………。
確かに実際にスケルトンから逃げ回っているところは見られていないし、俺がゲートから陛下を連れて出てくるところだけ見たらそうなってしまうのか?
「お前は今までは強い奴隷に頼って探索をしているだけで、本人の実力はたいしたことがないと思われていたが、これで自分の実力も示せたな」
「いえいえ、私は逃げ回っている所をこの陛下に助けて貰っただけですよ」
「まあ、お前がそういうならそう言う事にしておこう」
ダメか…………。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます