第76話 ダンジョン30階 1

 今日はダンジョン30階からスタート。


 パーティーメンバーに本日ボス戦をおこなう予定である事は伝えてあるので、ボス部屋を目指して進む。


 30階だけあってスケルトンウォーリアの数が増えてきていると感じるが、こちらもスケルトンウォーリアとの戦闘に慣れてきているので問題ない。順調に進みボス部屋へとたどり着いた。


「これからボス戦だけど、今回はスケルトンアーチャーという矢を撃ってくるスケルトンがいるから気を付けてね。ケインはなるべく俺たちから離れて流れ矢に当たらないように、ガレフは俺と一緒に行動しよう。前衛3人は部屋に入ったらすぐに突撃、相手との距離詰めてくれ」


「院長、俺も何か隠れているだけじゃなくて戦闘でもパーティーの役に立ちたいぜ」


「ケインは十分にパーティーの役に立っているよ。戦闘するだけが探索じゃないぞ」

 ケインは戦闘後に宝箱を開けるという超重要な仕事があるから、戦闘なんかでケガされたら困る。


「そうかあ? でも俺も戦ってみたいんだよなあ」


「戦いたいのは解ったけど、ボス戦はダメだぞ。やるなら1階から練習しないとな」


「いも虫くらいは俺でも倒せるぜ!」


「それじゃあ今度行ってみるか」

 正直ケインには戦って欲しくないが、仕方ない。戦闘訓練をしておけば何かあった時に役に立つかもしれない。


「まずはスケルトンナイトだ。行くぞ!」


 俺が勢いよくボス部屋のドアをあけると、同時に前衛の3人が走り出す。


 30階のボス部屋も広い。まだ遠くにスケルトンが6体いるのが見える。ここから俺が矢を射かけても届かないであろう距離だ。


 向こうも前衛が4体こちらに向かって来る。ボスのスケルトンナイトは全身鎧に盾と剣。兜はフルフェイスではなく、顔が露出している。顔と言っても骸骨だが…………。


 2体のスケルトンアーチャーはその場を動かないつもりのようだ。こちらの後衛の俺とガレフはゆっくりと前に進む。


 相手を観察しながら前に進んでいるとスケルトンアーチャーが矢を射かけてきた。狙いは前衛のブタちゃん達のようだが、矢は届いていない。射程距離は俺の弓とそれほど変わらなさそうだ。


 お互いの前衛たちの距離がだいぶ近づいてきた。ユウがエアスラッシュを放ち、中央のスケルトンウォーリアの盾を吹き飛ばす。その時、スケルトンアーチャーの矢が後方から飛んできて今度はブタちゃんに届いた。

 が、矢はブタちゃんの鉄の盾によって簡単に弾かれたようだ。


 向こうの前衛4体とこちらの前衛3人がぶつかる。スケルトンナイトの相手はユウがするようだ。陛下もスケルトンウォーリアを1体受け持っている。残りの2体はブタちゃんが相手している。


 俺は陛下を補助するために矢を放つ。スケルトンウォーリアの盾が邪魔で相変わらずあまり効果的ではないが、それでも膝などに矢が刺されば動きが鈍るはずなので、続けて矢を放つ。


 ガレフもストーンバレットの魔法を惜しみなく放つが、こちらも盾持ちには効果が薄く、致命打とはなっていないようだ。


 こうして矢を放ちながら状況を見ていると、当初危惧していた『後衛への遠距離攻撃』はなさそうだと言う事が解った。相手の後衛も攻撃されたくないわけだから、お互いに相手の後衛への射程には近づかないで、一方的に攻撃する事ができる相手の前衛にだけ攻撃することになる。


 こうなると先に前衛が倒れた方の負けとなるが、スケルトンアーチャーの矢もこちらの前衛に効果は薄いようだ。これはこちらの前衛が負けるとは思えない――。


 ガレフのストーンバレットを受けたスケルトンウォーリアがよろめく。守りに徹していたブタちゃんは、それを待っていたかのように動き出した。体勢を崩したスケルトンウォーリアの頭にブタちゃんのメイスが炸裂する。


 1体撃破。


 スケルトンウォーリアが1体減ると一気に状況が変わる。ブタちゃんが残ったスケルトンウォーリアに猛攻をかけ、それに合わせてガレフのストーンバレットがスケルトンウォーリアの膝を砕いた。ブタちゃんが間髪入れずに頭を砕く。


 手が空いたブタちゃんは陛下が相手をしているスケルトンウォーリアも背後から一撃。


 スケルトンウォーリアは全て片付いた。


「陛下はスケルトンアーチャーを倒しにいってください! ブタちゃんはユウを手伝って!」


 先ほどから見ていたところ、相手のアーチャーの矢は陛下の鎧に全て弾かれていた。鎧の隙間にもし矢が刺さっても陛下なら問題ないであろう。


「うむ、任せておけ!」 

 陛下がアーチャーに向かってガチャガチャと走っていく。これでこちらに飛んでくる矢は減るであろう。


 ボスであるスケルトンナイトとユウの戦いはどちらも決め手に欠けて最初から膠着していた。ユウは防御力の高い相手が苦手の様だ。スケルトンナイトの攻撃をユウが喰らう事はないが、ユウの攻撃もスケルトンナイトにダメージを与えられない。


 いくら剣術レベルが高くても鉄を切る事ができる訳ではないので、鉄の鎧に守られたスケルトンナイトは相性が悪いようだ。


 そこへスケルトンウォーリアを倒し終えたブタちゃんが参戦する。ブタちゃんは相手の盾だろうと鎧の上からだろうとお構いなしにメイスを叩き込み、スケルトンナイトをよろめかす。


 体勢を崩したスケルトンナイトに自分の盾ごと体当たり。シールドチャージをスケルトンナイトに喰らわせ吹っ飛ばした。


 仰向けに倒れたスケルトンナイトにユウが走り込み、首元の鎧の隙間に剣を差し込むと剣を捻り首を刎ね飛ばした。


 兜を被ったままのスケルトンナイトの頭が転がる――。


「ブタちゃん! 頭潰して!」

 スケルトンは頭を割らないと動きを止めない。そう考えるとスケルトンナイトは厄介な魔物だ。急所の頭が鎧で守られている。ユウが胴体と頭を切り離さなければ、もっと時間がかかったに違いない。


 ブタちゃんが兜ごとスケルトンナイトの頭を叩き潰した。硬いダンジョンの床とメイスに挟まれては鉄の兜でも潰れて、中身の頭蓋骨も割れたようだ。


「ご主人様、大きな魔石が取れましたよ」

 ブタちゃんが嬉しそうに、こちらに向かって走ってくる。


 ブタちゃんの息が荒い。1匹目のスケルトンウォーリアを倒してからブタちゃんの動きが止まらなかった。巨体が派手に動き、周囲のスケルトンをあっという間に蹴散らしていく様は痛快であった。あれはさすがに息も上がるだろう。


 あ、スケルトンアーチャーはどうなっているのだろうか? 陛下の方をみると、ちょうど2匹目のスケルトンアーチャーを倒したところのようだった。特別心配していなかったが陛下はしっかりとスケルトンアーチャーを倒せたようだ。弓しか持っていなかったので近づかれたら何もできなかったのだろう。


 ケインが他のスケルトンからも魔石を回収しはじめた。部屋の奥に宝箱が出現し、戦闘は完全に終了したらしい。どうやらケガをしたメンバーも居ないようだし完勝だ。


「ケイン、宝箱を開けて来てくれ」


 さあ、お待ちかねの宝箱ガチャタイムだ。そろそろ俺用のつよつよ弓とか欲しいぞ。


 ケイン頼んだ――――!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る