第73話 ダンジョン27階

 目が覚めるとベッドの上だった。


 気絶したまま朝まで眠ってしまったらしい。これは疲労がたまっていたので仕方がないだろう。昨日はダンジョン内を駆けずり回って大変だった。


 ユウが起きてくる前に昨日起きた事と陛下について皆に説明しておく。一応、転生前は王様だったと言う話もしておいたが、だからといって態度をかえる必要もないとも話しておいた。


 ブタちゃんからは謝られまくってしまった。しかしこっちがそもそも迷惑を掛けたせいなので申し訳ない気持ちになってしまう。


 ユウが起きて来たので朝食を取り、気を取り直して皆でダンジョンへと向かった――。


 いつの間にか6人とパーティーメンバーが増えている。ケインの話では6人パーティーが多いそうだ。理由はダンジョン内のゲートで移動できる人数が6人までと制限があるらしく、2回に分けて移動して目的地で合流する事は出来るそうだが、ボス部屋には7人以上の人数で入るとボスが出現せず、当然だが次の階への出口もでないらしい。


 どうやらこのダンジョンは6人パーティーを推奨しているようだ。今の俺たちはちょうど前衛3人、後衛3人とバランスは悪くないので、この6人で行ける所まで行って見ようと思う。


 ただし、唯一心配なのは回復役が居ない事だ。ポーションで今の所は問題ないが、戦闘が激化していった時に戦いながらポーションで回復などする余裕があるのだろうか?


 まあ先の事を考えすぎても仕方がない。今は進める所までダンジョン攻略を進めるとしよう。危なくなってきたら、少し戻って安全な所で稼げばよいのだ――。


 今日は26階からスタート。見覚えのある所があるかと思ったが、よく解らない。昨日あれだけ走り回ったのに…………。


 逆にケイン達は俺を探し回って26階をウロウロしたので迷う事はなさそうだ。まっすぐと下に降りる階段に向かっている。


 どこかに昨日踏んだランダムテレポートの罠があるはずなので恐ろしいが、ケインを信じて付いていく。俺はもう二度とケインの下調べを無駄にしないようにしなければならない。


 スケルトンウォーリア4体と遭遇した。


 前衛の3人が前に出る。ブタちゃんが2体を受け持ち、ユウとヴィルこと陛下は1体ずつそれぞれ相手をしている。ブタちゃんとユウは危なげなく戦っている様だが、陛下が昨日のスケルトンを相手にするようにはいかないようで苦戦している。


 俺の弓で援護すれば何とか持ちこたえられるようなので、しばらく耐えて貰っていると戦闘を終えた他の前衛2人が加勢に入り、すぐに陛下のスケルトンウォーリアも倒されて戦闘は終了した。


 レベル差があるので当然だが陛下にはまだこの階層は厳しいのかもしれない。鎧のお陰かダメージはないようだが、1対1でスケルトンウォーリアに勝つことはできないだろう。


 それでも6人パーティーならまだまだ余裕がある。今回は温存したがガレフの魔法もあるので、陛下が危ないようならガレフに助けて貰えばよい。陛下もレベルがあがればもっと戦えるようになるだろう。


 ただ、このまま陛下の剣術スキルを上げて良いものだろうか? どう考えても陛下がユウの剣に追いつくわけがない。何か剣の道以外も考えなければ陛下はこのパーティーでは輝けないであろう――。


 27階到着。


 27階からはスケルトンウォーリアの数が増えてきて、気が抜けない戦いになってきた。スケルトンウォーリアの数が多すぎるときはガレフのストーンバレットで削ってもらう。


 パーティーメンバーに陛下が加入したことで俺にも陛下のお守りという役目ができたので、戦闘に緊張感が持ててとてもよい。今までは戦闘中にやる事が少なすぎたと思う。


 昼休憩を挟んでさらに探索を進めているが、スケルトンウォーリアが増えてきたせいで1回の戦闘に時間がかかるようになってきた。このペースだと28階のゲートで今日は終了であろう――。


「主人よ。どうやらストーンウォールの魔法を覚えた様じゃ」

 俺が今日の予定を考えているとガレフが話しかけてきた。


「おお、そうなのか? それじゃさっそく見せてくれ」


 この新しい魔法を覚えるってのはどんな感じなのだろうか? おそらくレベルがあがったから覚えたのだと思うけど……。


「それがストーンウォールはダンジョン内では使えないのじゃ。ダンジョンの道を塞いだりする事ができるから使えたら便利なんじゃが、ダンジョンの構造を変える様な事は禁忌みたいじゃな」


 ダンジョン内で使えないのでは面白くないな。魔物の数が多いときに分断して少しづつ倒したりできるとだいぶ楽になったのだが…………。


 せっかく覚えたのに申し訳ないが、外の広い所で壁を出してもあまり使えないかもしれない。


「ダンジョン内で使えないと使い方が難しいな」


「そうじゃな、孤児院の修復ぐらいしかできんと思うぞ」


 な、何!! もしかして魔法で建築とかできちゃうのか? 建築まで出来なくても、とりあえず外壁だけでも修復できるととても助かる。


「それはストーンウォールの魔法で孤児院の外壁を修復できるってことか?」


「そうじゃ、それぐらいは簡単にできる」


「おお、それは素晴らしい。帰ったらすぐにやってほしい」


「それとな、もし主人の許可がおりればワシは孤児院の地下を拡張したい思っておるのじゃ。ストーンウォールの魔法があれば、掘って、壁を作ってを繰り返して好きなだけ拡張できる。ワシらモグラ族は地下の方が居心地が良いからな。娘が来る前に快適な寝床を用意して置いてやりたいんじゃ」


「それもいいね。孤児院も人が増えて少し手狭になってきたから、地下を拡張すれば全員に個室が作れるかもしれない。俺も地下に引っ越そうかな」


「余も地下の方が良いぞ。最近明るいのが苦手になってきたようだ。むしろ外よりもダンジョン内の方が居心地が良いくらいだな」


 どうやら陛下は好みもアンデッドに近づいてしまったようだ。しかし土魔法で大がかりな土木建築ができるとは思っていなかった。


 これは帰ったら楽しみだぞ――――。

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