第61話 お買い物

 探索者ギルドに着くと何やら今日は人が多い。探索者たちにこちらをジロジロ見られている気がする。有名人だとか悪い噂があるなどと昨日シスターから聞いたばかりなので、なおさら人に見られていると意識してしまうのかもしれない。


 受付で金貨を払い図書室への入室を許可してもらった。受付のローズさんはガレフを連れているのを見ても何も言わなかったが、チラチラとガレフを横目で見ていたと思う。何も言われないのも逆に恐ろしい気がする…………。


 また変なのを連れているが、一々突っ込んではいられないという事だろうか?


 30階までの情報を図書室で入手する。俺はどんな魔物が出るかという魔物の情報だけだが、ケインは地図を写しているので時間かかりそうだ。罠の位置なども書いてあるので書き写すのも手間だろう。


 俺が調べた所どうやら21階からはスケルトンが出るらしい。しかしアンデッドの魔物で有名なゾンビは出ない様なので助かった。


 同じアンデッドでもゾンビは臭そうだし、変な汁とか飛び散りそうなのでダンジョンに出てきたら嫌だなと思っていたところだ。スケルトンは骨だけだから清潔感があっていい。それだけで好感が持てる。


 まだ時間がかかりそうなのでケインの護衛にユウだけ残して、ブタちゃんとガレフと俺は武器屋に行く事にした。


 魔法を使うガレフを見て杖を持たせたいと俺は強く思ってしまったのだ。杖から飛んでいく魔法がみたい。それにガレフの古びたローブに杖はとても良く似合うと思う。


「これから武器屋に行ってガレフに杖を買おうと思う」


「杖はなくてもいいんじゃぞ」


「でも、あってもいいんだろ? それとブタちゃんのメイスもいいのがあったら欲しいな」


「私はすでにメイス持ってますよ?」


「21階からはスケルトンが出てくるらしいんだけど、メイスで叩くと効果的な気がするんだよね。ストーンバレットも良く効く気がするんだけど、逆に俺の弓は効かないと思う。この先はガレフとブタちゃん2人の活躍にかかっていると思うから武器も新しくしておこう」


「そうなんですね! 頑張ります!」 「ワシもじゃ!」


 武器屋に着いたのでさっそく杖を探してみると、木の杖は金貨3枚で大量に売られていた。俺のイメージ通りの杖の上の方がカタツムリの様にグルグル巻いてある杖だ。


 片っ端から自分で装備して見ていくと『魔法強化 弱』という杖が見つかった。念のため他の杖も全部装備してみたが『魔法強化 弱』は他にもあったので、杖に付きやすい効果なのかもしれない。


 杖はちょうどいいのがあったので、次はメイスを探す。ブタちゃんが今使っているメイスは銅のメイスなので、鉄のメイスを片っ端から装備してみる。とても重くて苦労したが、メイスは残念ながら特に効果の付いているマジックアイテムは見つからなかった。


「ブタちゃん、鉄のメイスから好きなの選んでいいよ」 


 俺に言われたブタちゃんは真剣な表情で1本1本手にメイスを持って確かめはじめた。あまり店の中で振り回さないで欲しいが、どうやら振った感じを確かめているようだ。


「これにします。これが一番重量があって振りやすいです」


 ブタちゃんからメイスを受け取ると確かに重いが、頑張って店の受付まで持っていく。鉄のメイスは金貨6枚、銅のメイスを下取りにだしたら金貨4枚にしてくれた。木の杖の代金と合わせて金貨7枚支払う。


 だいぶ懐が寂しくなってきた…………。明日からのダンジョンでたっぷりと稼がなくてはならない。


 先ほどギルドで調べた所、スケルトンは倒すと魔石という奇麗な石を落とすらしい。この魔石は銀貨5枚でギルドが買い取ってくれるらしいので、今までになく稼ぐことができるはずだ。


 大量にスケルトンを倒してガッポリ稼げば、孤児院の修繕ができるかもしれない。そして孤児院がキレイになればきっと院長の評判も上がるはず。


 まずはその辺りから手をつけていきたい。教会だって建物の立派さで権威を示していたので、孤児院の見た目も重要なはずだ――。


 ギルドに戻るとケインの下調べも終わって、俺たちを待っていたようだ。


「ケイン、待たせたな」 


「ちょうど終わったところだぜ。この後はどうするんだ? またダンジョンに潜るか?」


「いや、今日はもう辞めておこう。夕飯に唐揚げを作ろうと思うから、先に帰ってロレッタに俺が夕飯作ると言っておいてくれよ」


「なんじゃ、主人が料理もするのか? 料理など奴隷にやらせたらどうじゃ? ワシはできないけどな」


「いいんだよ、ガレフ。俺が食べたいものを作るだけだから、ついでにみんなの分も作るけどね」


「そうですよ! 余計な事を言わないでください。ご主人様の料理は最高ですから、作って貰ったほうが絶対いいですよ。ちなみに私も料理はできません」


「それじゃあ、今日の夕飯は院長が作るんだな。でも唐揚げってなんだ?」


「鶏肉を揚げたものだよ。俺の故郷ではよく食べていたから久しぶりに食べたくなった」


「そうか、じゃあ俺はユウを連れて先に帰ってるぜ。ロレッタにも言っておくからな」


 ケインにはよろしく頼んで、残った3人で買い物に向かう。鶏肉、油、ニンニクがあればいいかな。他の調味料は持っている。そうだ、マヨネーズも欲しいな。


 揚げたての唐揚げにマヨネーズを付けて食べるのが美味いんだよな。マヨネーズも作ろう!


 卵と酢が必要だな。下味の酒はワインでもいいか、料理酒なんてないからな。


 材料は広場で簡単に揃った。こっちにもニワトリ的な鳥がいるようだ。肉屋でトリ肉をくれと言ったら、羽も内臓も抜かれている丸どりを渡されたが、その見た目はニワトリそっくりだった。


 味も同じだといいな――。

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