第43話 ダンジョン 11階

 ゲートを使って11階へと移動した。1階とは壁の色が違うので移動した感じがあって解りやすい。


「こっちだぜ」 ケインが先に歩き出し、残りがぞろぞろと付いて行く。ケインが先頭というのもそろそろ危ない気もするが、慎重に進んでいるので大丈夫だろう。


 今の所はケインに道案内して貰わないと進めないし、それが一番安全だ。


「最短ルートで次の階段に向かっていいのか?」 ケインがこちらを振り向く。


「ああ、それでいい。さっさと20階に向かおう。これから出てくるダンジョントードやポイズンスパイダーは毒にだけ気を付ければ問題ないようだ」


 今までよりは慎重にケインが進んでいるように見える。さすがに初めての階層だと今までのようにはいかない様だ。


「いたぞ」 ケインがこちらを振り向くと手招きする。ケインに近づき次の曲がり角を覗き込んでみるとデカイカエルが3匹みえた。


「あれがダンジョントードか。弓を一発撃ってみるからこっちに近づいてきたらブタちゃんが前に出てね」


「了解です」ブタちゃんが頷く。


 カエルが俺たちに気が付かないうちに矢を放つ。カエルに刺さるが1発では仕留められず。カエルはこちらに向かって来る。


 倒せなかったと見るとユウが横からエアスラッシュを放つ。矢の刺さったカエルを真っ二つに切り裂いた。もう1発別のカエルに矢を打ち込んでブタちゃんの後ろに下がる。


 近づいてきたカエルにブタちゃんがメイスを叩きこもうとするが、その前にカエルが舌を伸ばして攻撃してくる。ブタちゃんはメイスでの攻撃を諦め、盾で舌をふせぐ。


 その時ユウがブタちゃんの前に出てカエルの舌を切り払い、その勢いで前に進みカエルの頭にも切りつける。そのまま止まらずにもう一匹も切りつけ、向こう側へと駆け抜けた。


 最後の1匹は切りつけが浅かったのか、まだ動いている。ユウの方に振りかえり舌を伸ばそうとするが、今度はブタちゃんが後ろから無防備なカエルの背中にメイスを叩きこんだ。


 もう動く魔物はいないようだ。ケインがカエルの舌を切り取りはじめた。


 なかなかの連携だったが、ひとつ気が付いたのは俺の弓が役に立ってないのではないかという事だ。


 いやでも、2匹目には少し弓でダメージを与えておいたおかげで、ユウが一撃で倒せたのかもしれないし…………。 そう言う事にしておこう。


「よし、なかなか良かったぞ。今の調子で次に行こう」


「はい!」 「…………」


「次はこっちだぜ」 舌の回収が終わったケインが進みだす。


 ユウはいちいち待てとか指示を出さなくても状況を読めるようになってきたようだ。ご褒美もたまにあげればもういらないだろう。


 しかし、こうなってくると俺ももう少し火力が欲しいな。勇者と比べてはいけないのかもしれないが、もう少し役割があると戦っている感じがする。純粋な火力ではユウに勝てないから、何か工夫が必要なのかもしれない。


 何度かカエルとの戦闘もあったが、地図を見ながらの最短距離で移動したおかげか思ったよりもはやく12階への階段にたどり着いた。


 まだこの辺りは勇者がいるパーティーには楽勝なのかもしれないので、さっさと12階へと進む。


 しばらく行くとポイズンスパイダーと言うクモも出てきたが、結局カエルと同じような戦いの流れで危なげなく戦いは終わった。


 舌ではなく糸を飛ばしてきたが、ブタちゃんが盾で受け止めている間にユウがクモを切り伏せていた。俺ももちろん後ろから弓でペチペチしたが、そのお陰で早々と戦闘は終了している――。 はずだ。


 クモからは腹を開いて毒腺を取らなければいけないようで、ケインが今までよりは苦労していた様にみえた。


 その様な調子で先に進んでいるとケインが何やらアイテムを発見したようだ。ケインが先頭で歩く意義はこのアイテム発見にもあるなと今更気が付いてしまった。


「お、鉄の剣だぜ。これはユウ姉ちゃんかな」 そういうとケインは俺に剣を渡してきた。


 残念! マジックアイテムではなかった。それでも鉄装備は初めてだし、一番攻撃力の高いユウの武器を拾ったというのは幸運だ。


「そうだな、ユウ! その銅の剣と交代だ」


 素直にユウが剣を渡してきたので、代わりに鉄の剣を渡す。銅の剣はマジックバッグへと仕舞う。マジックバッグめちゃくちゃ便利だな。これは手放せない。


 ユウは剣が変わったからと言っても特に感想はないようだ。あったとしても表情には出ないのかもしれないが……。


 先へと進む――――。

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