第34話 奴隷2人目 1

「こんにちはー」 相変わらず立派な奴隷商人の館へと入る。今日は入ってすぐに奴隷商人が出迎えてくれた。


「これはこれはマコト様。ようこそお越しくださいました」


 名前を憶えられている! 見た目通り仕事が出来そうな奴だ。


「今日はここの奴隷を見せて貰おうと思ってな」


「パーティーメンバーの拡充ですか? やはりダンジョンには行かれたのですね」


「ああ、今10階で行き詰っていてな。良い奴隷がいたらメンバーを増やしたい」


「10階! この短時間でもう10階まで行ってるのですか? しかも2人でですか?」


「ガイドにもう1人非戦闘員がいるけどな」


「なるほど、優秀なガイドの様ですね。そして10階から魔物の数が増えて、お2人では厳しくなってきたと言う事ですか? 確か10階はキラービー5匹でしたね」


「詳しいな。キラービー5匹は2人でも行けるんだが、ボスは2人だと厳しそうでなあ」


「! 絶対2人では辞めてください! ボスのクイーンキラービーはキラービー5匹連れて来ますよ。出来ましたらバランスの良い5人以上のパーティーで挑んで頂きたいのですが…………」


「さすがに3人も奴隷を買う金はないな」


「解りました。即戦力となる奴隷をご用意させて頂きます。彼らなら足を引っ張るという事はありません」


 隣の部屋に通され、少し待つように言われた――――。


 しばらくすると何人か屈強な男たちが部屋に入ってくる。むさっ苦しい男達だが確かに強そうだ。


 端から声を掛けていく。


「お前は俺たちとダンジョンに行く気あるか?」


「ダンジョンでも何処でも行くぞ。腕っぷしには自信がある」


 ステータス画面を開きパーティーに加入させて、奴隷のステータスを見ていく。


 どいつもレベルは高いがスキルが平凡だ。


 確かにレベルが高くて剣術レベルも高い奴がいたのでコイツは即戦力になるとは思うが、俺のレベルにあった奴隷の方が将来的には伸びると思う。


 そしてレアスキルを持っている奴がいれば、むしろレベルは低い方がレアスキルを重点的に成長させることが出来る。


 即戦力の奴隷の中にはレアスキル持ちは居なかった。


「即戦力じゃなくても良いから、取り敢えず全員見せてくれ。人を見る目には自信がある」


「解りました。一応戦闘経験のある物から連れて来ます」


 次々と奴隷がやってくるがレアスキル持ちは居ない。面白いのが泥棒っぽい見た目の奴は職業が泥棒で娼婦風はやはり娼婦であった。


「次で最後ですが、こちらはお勧めできません」


 ! さっき見た他の奴隷に手を引かれて、凄い美女が現れた! 


 粗末な服を着ていても美人オーラが溢れ出る。なかなかここまで奇麗な人は日本でも見た事がない。


 ん? しかし何処を見ているのだろうか? 目の焦点が合っていない様だ。よく見ると口が少し空いて涎が垂れている。


「おい、大丈夫か? お前は俺たちと一緒に来るか?」


 声を掛けたが反応はない……。


「彼女は辺境の村の出身なのですが、子供の頃に目の前で魔物に両親が食べられてしまいました。彼女は奇跡的に助かったのですが、その後に預けられた親戚が酷い男だったらしく、虐待を受けて心が壊れてしまった様です。とてもマコト様のお役に立つことは出来ません」


 やっぱり奴隷って不幸な奴が多いな……。

 返事が出来ないのでは確かに連れていく事は出来ないが――。


「おい、お前は魔物を倒したくないか? 俺たちと来れば両親の仇を取れるぞ」


「マモノ……コロス」


 お、返事したぞ。どうだ?


『ユウをパーティーに加入しますか?』 ステータス画面は見る事ができそうだ。


 名前:ユウ

 種族:人間 性別:女

 職業:勇者(奴隷)

 レベル:15

 スキル:精神攻撃遮断3、痛覚遮断3、物理抵抗4、炎抵抗2、飢餓抵抗3、毒抵抗2

《習得してないスキル》エアスラッシュ

 スキルポイント 12


 ???


 また突っ込み所が多くて困るステータス画面だが、まず勇者の文字は見逃せない。


 勇者ってあの勇者だよな? こんな所に居て世界は大丈夫なのか?


 そして痛々しいスキル群。この子が今までに何をされてきたのか読み取れてしまう。


 エアスラッシュってスキルも謎だ。また輝いているからレアなのだろうけどスキル名とは思えないし、どちらかと言えば技名?


 あとはスキルポイントがレベルと比べて多すぎる――。


「ディーンさん、彼女を貰う事にするよ」


「いえいえ、マコト様。彼女は問題が多すぎます。見た目の良さでたまに売れるのですが、翌日には返却されます。何故かと言えば奴隷なのに言う事を聞かない事があるのです」


「そんな事が可能なのか?」


「普通は奴隷の首輪の力に抵抗できないのですが、彼女は抵抗できてしまう様です。恐らく嫌だと思った事には抵抗できるのでしょう。だからと言って逃げたり暴れたりもしないですし、自分から行動するという事はありません」


「俺はダンジョンで彼女にも戦って貰おうと思っているが、可能だろうか?」


「そのような事は誰も考えた事がないと思いますので、戦えるかは解りません。それと彼女は自分からは何もしないので食事を与えたり、排泄物を処理したり、寝かせたりなどの世話が必要です」


「何もしないとは? どういう事だ?」


「文字通り、何もしません。放っておけばあそこにずっと立っています。排泄物は垂れ流しですし、空腹を訴えたりもしません。簡単な命令は聞きますので『こちらに来い』、『ここに座れ』、『これを食べろ』など指示をしてあげる必要があります」


「よくここで面倒をみてるな。商売にならないのではないか?」


「先ほども言いましたがたまに売れるのです。そして売る時に予め皆様に言っておきますが、引き取る事は出来ますが買取は不可であります。こちらで値段を付けることは出来ません。それでも返却されるので儲けは一応でます」


「それでは俺が今日買って、明日ダンジョンに連れて行って、彼女は戦う事が難しいと解ってもここで買い取ってはくれないという事だな?」


「はい、そのようになります。もちろんお引き取りは致しますので、手に余ったら連れてきてください。それと奴隷を虐待する事は法律で禁止されていますが、特に彼女に暴力はいけません。主人側の殴った手が折れたなどと言う事もありましたし、命の危険を感じれば反撃もしてくるようです」


「戦闘に向いてそうじゃないか」


「彼女の問題点としては世話が必要な事と、言う事を聞かない事があるという事です。それでも宜しければ金貨10枚でお譲りできます」


「では、貰おう」 金貨10枚渡す。


「はい、ありがとうございます。しかし本当に宜しいのですか? オムツが必要ですよ?」


「まあ、なんとかなるだろう」


 厄介な話だが勇者を放置して置くわけにはいかないし、戦力にはなるはずだ。


「私がお世話しますよ。ご主人様にオムツ交換はさせられません」


 確かにブタちゃんが普段はお世話してくれると助かるな。俺がオムツ交換をするのは色々問題があると思う。あるよね?


「それではマコト様、こちらに来て首輪に手を触れてください」


 ユウの首輪に手を触れると一瞬光った様に見えた。


「これで彼女はマコト様の奴隷となりました。彼女の名前はユウです。大切にしてあげて下さい」


「ああ」 大切にか……。


 出来るのかな? 世話はするけど結局戦わせる事になるから奴隷商館に居た方が大切にされる事になるのかもしれない。


 でもまあユウは魔物を殺す事を望んだようだから、思う存分暴れて貰えば良いか――――。

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