第26話 ダンジョン 5
翌朝、ブタちゃんと2人で朝食の準備をしているとケインがやってきた。
「おはよう」「おはようございます」「おはよう、ケインも朝飯食べるかい」
「いや、食べてきたから大丈夫」
「そう?」 もう食べたなんて、ずいぶん早起きなのだな。
「こっちはまだだからもう少し待っててくれ」 手際よく朝食の準備をすすめる。
なんか飯の支度ばかりしている気がする。3食自炊だからしょうがないのか、実家の母親は毎日これをしてくれていたのだと思うと感謝しかない。
でも俺はこれがずっと続くのは嫌なので何とかしたいとは思う。何にしても金を稼がねばならない。
「今日は何を狩るんだ?」
「オオトカゲの次にもっと稼げるのはアナコンダだと思う。牙が1本で銀貨2枚になるから1体倒すと銀貨4枚になるぜ」
「オオトカゲの倍も稼げるなら良いじゃないか、今日はそいつだな」
朝食を取りながら答える。朝食はいつもの干し肉サンドだ。
「アナコンダは9階にいて毒はないけど、噛みつかれたら重症を負うし、丸呑みされたら即死。尻尾の一撃も強烈だから気を付けないといけないぜ。あと10階にもいるけど10階からは必ず複数で魔物が出てくるから難易度が高くなるぜ」
「複数って何体くらいだ?」
「3、4体が多いみたいだけど、深く潜れば潜るほど増えるみたいだぞ。9階までは多くても2体までなんだぜ」
「3人だと10階以降は厳しそうだな。とりあえず9階のアナコンダに行ってみよう」
「はい! お任せください」
手早く片付けダンジョンに向かう。この野営の設営とか撤収も慣れてきたな。ブタちゃんとも阿吽の呼吸であっという間に片付くぞ。
戦闘でもこれぐらいのコンビネーションで立ち回れたら良いのだが、残念ながら俺の実力が足りていない。
ダンジョンに入りゲートに向かう。さすがにゲートまでの道はもう覚えた。一人で来ることはありえないけどね。
「それじゃ、今日は9階にいくぜ」 3人でゲートをくぐる。
相変わらず代り映えのしない部屋に出たが、本当に9階なのかは良く解らない。地下何階みたいな表示があれば良いのにと思う。
「こっちだ」 ケインに言われるがままに付いていく。9階もケインが良く知っている場所の様だ。
しばらく付いて行くと――
「居たぞ」
ケインがこちらを振り向く。通路のだいぶ先に蛇らしきものが見えるがだいぶ大きそうだ。頭だけでケイン位の大きさなのだが……。
「なんかデカイね。ケインは一口で食べられちゃうんじゃないか?」
「このままだとパクリといかれちまうぜ」
アナコンダもこちらに気が付いたようで、まっすぐに向かって来ている。だんだんスピードも上がってきているようだ。
無言でブタちゃんが前に出て迎え撃とうとする。
俺はブタちゃんの脇から弓を射る。アナコンダの右目に刺さったようだ。的が大きい分当てやすい。
少しこちらに向かって来るスピードは落ちたが、それでも真直ぐ向かって来ている。
2本目の矢は間に合いそうにない。そろそろ喰いつかれる!
というタイミングでブタちゃんが前に出て、メイスをアナコンダの鼻っ柱に叩きつけた。アナコンダはのたうち回る。蛇の癖にだいぶ痛がっている。
その隙にブタちゃんがアナコンダに近づきメイスを何度か頭に叩きつける。
アナコンダはぐったりと伸びてしまった。
「1匹ならアナコンダでも余裕だな」
「普通はメイス何発かで倒せたりしないんだけどな……」
ケインは実際に見ても信じられない様だ。
「このメイスはやっぱり軽すぎですね。丈夫ですが物足りないです」
ブタちゃんは安物のメイスに不満そうだ。十分な威力を発揮したと思うがブタちゃんの能力に見合った武器ではないのだろう。
ケインがアナコンダから牙を抜く。相変わらず手馴れている。
「さあ、どんどん行こう」 俺はケインに次に行くように促した――――。
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