異世界サバイバー ~チートスキルとか貰えなかったので奴隷に依存して生きていきます~
アイザック
第1話 サバイバル 1日目
目を覚ますと森の中だった。
俺は自宅のベッドで寝ていたはずだが、ここはどこだろうか?
パジャマ代わりにしているジャージの上下姿なので家に居たのは間違いないはずだが?
それにしても暑い……喉が渇いている。
辺りを見回しても樹木しか見当たらない。
視界の端に見慣れぬアイコンの様なものが目についた。
意識してみると視界いっぱいにゲームのステータス画面の様なものが広がる。
「なんだこれ……」
思わず口に出てしまい静かな森に響く、遠くから鳥の鳴き声が微かに聞こえる。
昔ながらのゲームのステータス画面
名前:タイラ マコト
種族:人間 性別:男
職業:サバイバー
レベル:1
スキル:
レベルは1。スキル欄は空白。
夢の中でゲームをしているのかと思ったが、匂いや風や暑さ、全てがこれは現実だと伝えてくる。
これがゲームであろうと現実だろうと、いつまでもこんな森の中に居るわけにはいかない、人里に行かなくてはと移動する事にする。
少し歩けば道にでるだろう。
歩きながら状況を確認する。靴下は履いているが、靴は履いていない。
服はパンツとTシャツとジャージ上下、ポケットの中は糸くずのみ、暑いのでジャージの上は脱ぐ事にした。
それとステータス画面を開いてみる。半透明なので歩きながらでも見る事が出来そうだ。最近のゲームと比べるとずいぶんと項目が少なく簡素である。
レベルが上がるとスキルを覚えるのだろうか? シンプルすぎて何もわからない――。
1時間は歩いたと思うが何も変化がない――。
見渡す限り木々だけしか見えないが、ジャングルと言う感じでもないので、さほど歩きにくさは感じない。
それでも道なき道をたまにツタを払いながら進んでゆく。
しばらく行くと水の音が聞こえてきた。近くに滝があるのだろうか?
起きてからずっと喉が渇いているので、音の方に進んでいくと空気がひんやりとして来た。
水の気配を感じる。
暑い森の中を歩いてきたので、気温が下がるだけでも救われる。
徐々に水の音が大きくなり、川と小さめの滝が見えてきた。
川の水は冷たく澄んでいたが、直接飲むのには少し抵抗がある。
しかし近くにコンビニや自販機がある事に期待出来るはずもなく、手ですくって少し飲んでみる。
良く冷えていて、美味しい。
すぐに喉を鳴らしてお腹いっぱい水を飲む。
人は食べなくても大丈夫だが、水がないと死んでしまうと聞いた事がある。
川沿いを歩き水はいつでも飲めるようにしておこう。
川は歩きにくかったので少し離れた平坦な地面を川下に向かって歩き続ける。
川のそばの木陰は涼しく暑さはだいぶ和らいだが、食事も取らずに歩き続けるのはキツイ。
はやく橋や道が見えてくれば安心できるのだが、そもそも起きてから人工物を何一つとして見かけていない。
たまたまなのかそれとも、かなり山奥の秘境に居るのか……。
後者じゃない事を祈る。
太陽の位置を見ると確実に午後になっているようだ。2時か3時くらいだろうか?
すぐに道が見つかると当初は思っていたが甘かったようだ。
そろそろ決断の時だろう。
このまま人里を探して歩き続けるか、今日は諦めて暗くなる前に野営の準備に入るかだ。
野宿するなら火ぐらい起こしておきたいし、薪も集めておきたい。
ん……静かな森だから考えてなかったが、これがゲームだとしたら敵も現れるのか?
モンスターとか?
そういえば最近やったゲームは夜になると敵が襲ってくるのがあったな――。
やばくないかこれ……。
すぐ夜に備えて準備しよう、早めに気づいて良かった。
とりあえず「ひのきのぼう」以上の武器は欲しい。
できれば石斧くらいは作っておきたい、河原で良さそうな石を探さなければならない。
確か社会の授業で旧石器時代の人は打製石器を使っていたと習った気がする。
研ぐ時間はないから磨製石器は無理だ。
打製石器は割れやすい石を探して、打ち割って刃の様に薄くするはず、層になっている石が良いだろう。
川には色々な石がゴロゴロと転がっているので探してみる。しばらく辺りを漁っていると手頃な大きさの三角の石を見つけた。
なかなか良さそうだ。岩に向かって打ってみると、意外と簡単に欠ける。
斧っぽくなるように少しずつ刃の部分を割っていく。
意外と悪くない出来栄えだ。
これとナイフっぽくなりそうな細めの石を探して持っていく事にする。次は寝床探しだ。川の近くは冷えるから少し離れて開けた場所を探す。
川から上がって森に少し入り、平らな地面を探してみる。
すぐに平らな地面を見つけたが、草刈りが必要な様だ。
草刈りをしつつ、ツタと枯れ枝を集めておく。
焚火して横になるだけだから大してスペースは要らない。適当に太い木の下にむき出しの地面を作る。
小石をどけて座り心地を良くして、地面に座り込む。
さて……。
火を起こさないといけない訳だが、ライターなどなしで本当に火を点けることが出来るのだろうか?
基本は火がつきやすいものから徐々につきにくいものに火を移して行くという方法で良いはず。
乾いた小枝は集めたから、もう少し太い枯れ木と小枝より火がつきやすい物が必要だ。
まだ腰を落ち着けるには早すぎたようだ。木の皮みたいな物を探す事にする。
それと近くに枯れ木はいっぱい落ちているから、適当な長さに折って寝床に積んでおく。
少し寝床から歩くとシュロの木みたいな木を見つけた。
こいつの皮はモジャモジャしていて火付きが良さそうだ。シュロの皮を持ち帰り。
今度こそ腰を据える。
後は木の枝を両手で挟んで他の木とこすり合わせ摩擦で火を起こすわけだ。
テレビでは見た事あるが――まあやってみよう。
その前に火種がもし出来た時に、すぐに焚き木に移せるように先に小枝を組んでおく。
そういえば焚き火の周りに石をいくつか丸く並べていたはず、何の役に立つのかは解らないがマネしておこう。
さてこするぞ――。
手が痛くなってきた頃に焦げ臭い匂いがしてきた。
こすれている箇所も黒くなって――。
お、一筋のケムリが立った。
もう少しか?
ポケットの糸くずを黒くなっている所に置いておく。さらにシュロを押し付けて引火させる。
おお、ケムリが増えた。赤いのも見えたぞ。
強く息を吹きかけながら小枝の山に移す。着火したようだ。メラメラと燃えている。
ちょっと感動した。
また火を起こすのは面倒だから絶やさないようにしないといけない。
今使った道具も濡らさない様に大事に取って置くことにする。
太い枝に移るように多めに薪をくべておく。これでしばらくは勝手に燃えているはずだ。
次は武器になりそうな木の棒を探しに行かなくてはいけない。
日も少し落ちてきた。
薪を集めているときの経験で枯れ木はどうも簡単に折れるから生木の方が強そうだ。さっきの石斧になる予定の石を手にもって手頃な太さの木を切ってみる事にする。
焚火から離れすぎないよう周りを探すとすぐにバット位の太さのまっすぐな木を見つけた。
石を360度色々な角度からたたきつけて木を切る。少し時間がかかったが木を切り倒す事ができた。程よい長さになるように反対側も石で叩き切る。
これで木のバットくらいの装備にはなったが、石斧までグレードアップしたい。
ツタを巻いて石を固定するか、穴を開けて石をはめ込むか。
三角形の石を拾ってきたので細い方をはめ込む穴を開けてみようと思う。
ナイフ用に持ってきた細めの石を彫刻刀になるように、先だけ叩いて欠けさせて木を削りやすくする。
バットの持つ所も少し太いので、少しずつ石彫刻刀で削る。
さらにバットの一番太い部分の真ん中に石彫刻刀を当てて刃の反対側を別の木で叩き、木を削るように穴を開けていく。
ある程度あいたら例の三角の石をはめ込み、近くの大木をそれで叩いて完成。
完全に斧だ。
これも良い出来だなあ。
少し暗くなってきたがとりあえず必要なものは揃ったので焚火の前に座り落ち着く。
火を見ていると和むが今後どうしようか……。
明るくなるまで動くことは出来ないから、今日はここに居るしかないようだ。
たいくつなので、まずは状況の確認、装備は石斧が増えたが靴下が完全に破けてしまった。
明日からは素足になってしまうので、靴が欲しい。
近くに落ちているツタでワラジが作れると思うのだが、作り方が解らない。
しかしまあ朝までたっぷり時間はあるから、何とかそれっぽいものを作ってみる事にする。
糸から布を作るのは縦の糸と横の糸を交互に互い違いになる様にしていくだけなので、最悪それをツタで作って足を包んでしまえば良いかな?
色々やってみることにする――。
何となく出来たがかなり不格好だし明日歩いてみないと使えるか解らない。
おそらく靴擦れはするだろうけど、素足よりはマシなはず……。
ふと気づくと辺りは完全に闇に包まれていた。
焚火を見ている分には明るいが、少し離れた位置は暗くて何も見えない。
たまに木の爆ぜるパチパチとなる音以外は静かで、遠くからフクロウの鳴き声の様なものが聞こえる。
体はかなり疲れているが腹が減っているせいもあり、あまり眠くはない。
明日は食べ物を探しながら移動しなくてはいけない、水だけではもたないだろう。
眠気がなくても目をつむり少しでも休んで休養を取らねばならない、お手製の石斧を握りしめ何も近づいて来ないことを祈りながらウトウトと時を過ごす――
音がした!
草木の揺れる音だ。音のした方に目を凝らすが暗くて何も見えない。
音の原因を見に行くことも出来ず、暗闇に目を凝らし静寂に耳を傾ける。
何も見えないし、何も聞こえない。良くない想像だけが頭をよぎる。
恐怖で頭の中がいっぱいになる。落ち着け……何もないはずだ。
薪を焚べながら、ただじっと耐えることしか出来ない――――。
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