感想はいかがですか、対悪鬼抜刀部隊の皆さん
ま、まあそうこだわるまい。重要なのはここから先だ。
『そしてボン・コスミ様は、所信表明演説にて、我らに新しい世界観をお示しなされた!』
出た、所信表明演説。全編ノーカット。
さあどうだ。ここの反応は。
「……月に都市を作ろうとしてるのは、とりあえず嘘じゃないみたいですね」
「だな。しかし、あいつどうやって行く気なんだろうな。あれだろ、月って遠いんだろ」
よしよし、本気度は伝わってるぞ。
「そんなに遠くないんじゃねーの? あれだけはっきり目視出来るんだから。なあカっちゃん」
天体についての認識が雑すぎますアニキ。それなら太陽にだって行けることになっちゃいます。
「確かにそうだな」
……え?
いや……待てカイ。
アニキならまだしも、頭脳派キャラともあろう君がその返しじゃいかんだろ。
月遠いよ?
そりゃあ地球の衛星だから、他の惑星よりは近いけど、大気圏の外にあるから空中戦艦じゃ到達出来ない……よな?
え、やだ。なんか急に自信なくなってきたんだけど。
この世界の宇宙って、僕が知ってる宇宙と違う構成してんの?
……いや、いやいや、そんなわけないな。
今日び幼稚園児でさえ地球が丸いことを知っている。太陽が地球の周りを回っているのではなくて、地球が太陽の周りを回っていることも。
その状況を踏まえれば、いかにクソな運営だとしても、いやクソな運営だからこそ、『はるがる』世界の物理法則を現実世界と異なる設計にするはずがない。ただただ面倒臭くなるだけなんだから。
さあ、考え事をしている間に、いよいよメインのメフィスト裁判だ。
僕監修のもと改訂したナレーションがどのようなものか、皆さまどうか最後までお聞きください。
『悪鬼王ボン・コスミ様はかくして大罪人メフィストを人間に落とし、地上へと追放された!
そう、ボン・コスミ様の偉大なるお力にかかっては、悪鬼を人間に落としてしまうことも可能なのだ!
イバングに生息する有象無象の哀れなる人間どもよ! 畏敬の念を払うがよい!
重要なことだから二回繰り返すが、ボン・コスミ様は悪鬼を人間に落としてしまうお力をお持ちなのだ!』
……そこここに人類をディスった表現がある?
うん、あるね。
でも大目に見てくれ。悪鬼側の人類に対する差別意識が人類の悪鬼側に対するそれと遜色ないの分かってるだろ。これでも相当頑張ったほうなんだ……。
対悪鬼抜刀部隊の反応はどうだ反応は。
「マジか……あいつあんなにでかくなれるのか」
「正味サクラが悪鬼化した時より大きいわよ」
「間抜け面と同一人物とは思えんな」
今間抜け面って言ったの誰だ。ポケットに頭から突っ込むぞ全く。
「つか、悪鬼が悪鬼を人間に変えるなんて、出来ることなのか?」
「出来るだろ。現にやってんだから」
「こんなもんヤラセだヤラセ」
「なんでそう言い切れるんだ。奴は実際破格の魔力を持っているのだぞ。大洪水を引き起こしてみたり、空中戦艦を袋に入れてみたり、イバングを模倣した砦を築いてみたり……」
最初のは僕じゃないってば!
くそう。そのあたりもナレーションでちゃんと説明しておけばよかったかな……まあパレード第二弾ダイジェスト放送の際盛り込むか。
で、ニコラスはどうだニコラスは。
お。明らかに衝撃を受けた顔。
この分であればチマキさんにこの放送内容伝えるな。
むしろ伝えないわけないな。
彼女を長年悩ませている問題が、ひょっとして解決するかもしれないんだから。他でもない、この僕の手で。
悪鬼駆逐脳の二番隊はどんな反応だろ。
「ありえん! 悪鬼が人間になるなど……そんなことがあるものか!」
「神に対する冒涜だ!」
「もしそれが出来るのだとしたら、恐るべきことだぞ。我々がこれまで使ってきた工作員あぶり出しの方策が通用しなくなる……」
「即刻全イバング市民の登録情報を洗い直さねば……不審な点が少しでもあるものは監視対象とすべきだ」
「いや、それでは甘すぎる。拘束し、厳しく尋問を行うべきだ」
あーと……変な方向に話を持っていこうとしていないかい皆さん。
余計な心配しなくていいんだよ?
悪鬼を人間にして送り込むなんてこっち露ほども考えてないよ?
そんなことしようものなら、僕がとてつもなく冷酷非常っていうイメージが悪鬼の間で増幅されちゃうじゃん。
大体スパイ派遣しなくてもイバングの情報はとれちゃうんだよ。このゴーストファミリアとか、キャラなびとかで。
大前提として僕『はるがる』ヘビーユーザーだから。
この世界の設定熟知してるから。最近全然使ってないけど、どこにバグがあるかの知識も持ってるから。
だからそういう変な方向の危機感煽り立てるの止めてくんないかな。
大体イバング、悪鬼絡みの罪人は全員ニューイバングに追放したはずだろ。早くも忘れたのそれ。確かに高所得者層は、軒並み追放リストから除外されてるっぽかったけどさ。
「落ち着け貴様ら。これは悪鬼王が俺たちに向けて作った映像だ。奴が内部分裂を狙ったプロパガンダを仕掛けてきていないと、どうして言えるの。警戒は必要だが、先走るな」
をを。アルフが抑えに入ってきた。
珍しいこともあるもんだ――とは思えないな。ガルム女史の件があるから、ここで事を荒立てたくないんだよな。
「俺が女狐から事の真偽を聞き出すまでこの件は保留だ。いいな」
強引にまとめて終わらせた。
ま、ガルム女史ならうまいことアルフを丸め込んでくれるだろう。
「どう思う、ハルキ。お前悪鬼王を直に見てきてるんだろ? こういうこと、やれると思うか?」
「うーん、どうなんでしょう……人間が悪鬼に変わる、悪鬼落ちっていう現象があったんだから、その逆もあっておかしくないとは思うんですが……」
「つか、こういうことしてあいつ大丈夫か。悪鬼が反感持って刃向かってきたりしねえか?」
「大丈夫じゃね? めたくそ巨大化出来るみたいだし。余裕で蹴散らせるだろ」
五番隊は平常運転で、特に心配する要素なし、と。
で、ニコラス。君はどうする気なんだ。さっきから全然喋らなくなっちゃって、何を考えてんのかいまいち掴みにくいんだが。
一番隊隊員も無言で目くばせばかりしあってる。
なーんか雰囲気悪いぞ君たち。
「……チューダー隊長、いかがいたしますか?」
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