絶対に仲良くなってみせる
数日前に仲良くなったのかよく分からないが、ひとまず知り合う事の出来たヒロインはなんと言うかすごく癖の強い奴で仲良くできるかどうか不安だったけれど、俺決めました。仲良くなります。どんな手を遣おうと仲良くなって見せます。
「はい? 女の子が喜ぶ贈り物ですか。何でそんなことを」
そんなわけでまずは賄賂からと一番聞きやすかった常に傍にいる護衛の騎士に聞いたのだけど、騎士は首を傾けてしまった。まあいきなり問いかけてしまったのでそうなるだろう。
「いや、さ、じゃなくてオーディア嬢に贈り物をしたくて」
「……オーディア嬢にですか。彼女と何かあったのでしょうか」
ここはちゃんと理由を言わないと、と思い話した。途中間違えてヒロインの名前を口にしてしまいそうになったがここでは異性同士で名前を呼ぶのはご法度というのを思い出して言い直した。
この世界のそういうルールにはなれないところがあるものの間違いを犯す前に大抵記憶が思い出させてきて犯さないで済んでいる。どうせ思い出すならもうちょっと早い方がいいがまあ望み過ぎてもいけないんだろう。
騎士はというと何故か先ほどよりもずっと驚いた顔をしていた。問いかける声も何処か戸惑ったものだ。目を見開いて驚いてるけどそんな顔も普通にイケメンだ。医師はイケメンじゃなかったけどこういうゲームでイケメンになれるキャラとなれないキャラはどこが違うのだろうか。
「あ、差し出がましいことを聞いてしまいました。えっと、オーディア嬢はどのようなものがお好きかとかはわかりますか」
「嫌、別にそれぐらい気にしなくてもいいけど……。何かあったわけじゃないけど仲良くなりたくてさ。好みとかも知らないから、何となく女の子が喜びそうなものがあったらいいんだけど」
「……そうですか。好みも分からないとなると少し難しいですね」
変な事考えて答えるのが遅くなってしまったせいで気を遣わせてしまった。反省だ。でもやぱりちょっと気になる。傍にいてわかるけど性格もいい男だしな。
こんな急な質問にも真剣に悩んでくれるなんて俺が惚れそう。まあ、アデール一筋なんですけど……。
「そうです。アデール嬢にオーディア嬢の好みを聞くのはどうでしょうか。お二人は親しいようなので知っているかと思いますが」
「え、あ、否、それは困る!」
とか思っていたらいきなりピンチでして俺は慌てて首を振る。力強くもげるんじゃないかって勢いで振ると騎士は先よりも驚いた顔をしていた。かと思えな柔和な顔立ちに少しだけ眉が寄っていた。王子と呼ぶ声がちょっと低くなったようだ。
「アデール嬢にお聞きするのは駄目というのはどういう事でしょうか。こういう場合親しい人にお聞きするのが最善だと思うのですが」
「そうなのかもだけど、でも、その、アデール嬢への贈り物を用意するのにオーディア嬢と親しくなりたいんだ。オーディア嬢ならきっとアデール嬢の好みとか知っていると思うから。
後、オーディア嬢と仲良くなれればアデール嬢とお話しできるかもしれないから」
口にしてみるとやはり恥ずかしいもののそんなことは言っていられない。だからお願いと騎士に頼み込んだ。
何せヒロインとアデールの中ははたから見ても分かるぐらいに日に日に縮まって言っているんだ。昨日なんて中庭で二人キャッキャウフフと笑い美味しそうにティータイムなんてしていた。学園にはティータイムのための教室なんてものもありつつ孤高の令嬢と呼ばれるアデールが誰かとお茶を飲んでいる姿なんて昨日までは見たこともなかった。
ヒロインはとんでもない女だ。そのヒロインと仲良くなればなんか避けられている気がするアデールとももっとたくさんお話ができるようになって、そして俺もお茶会に参加できるかもしれない。その為に今を頑張るのだった。
騎士の顔はあっけにとられたものになっていたが、わりとすぐにいつも浮かべている笑みに戻っていた。そうですかと柔らかい声。
「それでしたらお茶会でアデール嬢と二人で食べるようのスイーツなどをお贈りするのがよろしいのではないでしょうか。その方がアデール嬢に王子のことをよく印象付けることができるでしょう。
アデール様には紅茶などを贈るのがいいのではないでしょうが。お茶会の時に使っていただけますし、アデール様は紅茶を飲んでいる姿をよくお見掛けしますのできっとお喜びになっていただけるかと思います」
ひええと情けないような声が出てしまった。さすが騎士というのかこれぞ百点満点としか思えないような答え。こんなの聞かされてしまえばそれに飛びつく以外できようかという感じであった。
それで頼むと食い気味に答えれば騎士は穏やかに笑った。
「紅茶やスイーツの種類などはこちらで用意してもよろしいでしょうか」
「おう。任せる」
「かしこまりました。すぐに手配いたします」
これでアデールとのお茶会の夢に一歩近づけた。絶対に仲良くなって見せるぜ、ヒロイン。
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