渡さない
「ヒノ、ミコ。ヤマト……? あっ、またです」
「いい、気にしなくていい」
耳を澄ませる睡蓮に、昂は太秦へ睨みを利かせたまま首を振る。
太秦は立ち上がりながら答えた。
「ああ、それは陽の巫女だけに響く、
「ヒルメ……?」
背中の辺りで結んだ髪は烏のように真っ黒で、反物から仕立てたであろう燕尾服は優美な気品が漂う。太秦の引き締まった体躯と相まうと、威圧感さえも与えるのだった。
だがそれでも昂は臆さない。
「うるさい! 睡蓮を怖がらせたのはお前だなっ!」
昂はカッと目を開くと、上空へ二枚の札を投げた。
「睡蓮は渡さない!
そして発光した
そうしてたちまち障壁が現れると、睡蓮から離れて昂は再び唱えた。
「
もう一枚の呪符も同じように反応した。今度は太秦に向けて術が発動する。
バチンッと強力な静電気が起こったかのような音。見えない何かが太秦にぶつかったらしい。いや違う、当たっていない。それこそ障壁に護られているかのように、昂の術を跳ね返していたのだった。
「こ、昂くん!」
「駄目だ睡蓮っ、そこから動くな! くそ……! 急急如律令——」
昂は必死に排斥の術を繰り返したが、太秦は眉一つ動かさない。
「陽の巫女、私と共に」
不意に太秦は睡蓮に向けて手をかざした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます