第一章 導かれて
☽第一夜 月下の便り
守護犬コロン
「
「いやだって、もうちょっとで見えますさかい……」
年頃の男子が二人、年季の入った柱に隠れて何やらヒソヒソと話をしている。
視線の先にあるのは、彼らと同じ学校に通う女子生徒の脚。
彼女はどうやら瓶の飲み物が並ぶガラス張りの冷蔵庫と壁の隙間に、何かを落としたらしい。奥に入ってしまったようで、床に膝を着いて「んーんー」と声を唸らせながら一生懸命右腕を伸ばしていた。
彼女の意識に偏りが生じ、無防備に開いていくみずみずしい太ももと、そこから足首へ向かうスラリとした脚線美に、二人は頭をクラクラとさせているようだった。
そしてお目当てのものはアングルから察して、ショートパンツの奥か。スカート風に広がった裾の中を必死の形相で……いや、必死の体勢で覗こうとしている。高等学校の男子学寮、健全さはないに等しい。
「ワンワンワン! バウッ!」
寮内で飼われている小型犬に牙をむかれ、二人は「うわっ!」と仲良く尻もちを着いた。
ところ変わってこの煩雑な状況にも全く気付かない鈍感娘はというと、拾った小さな何かを天井に掲げて声を弾ませるのだった。
「と、取れましたー」
馬鹿みたいに人の良さそうな顔で破顔すると「おばあちゃんに知らせなきゃ」と言って、すくっと立ち上がった。
しかしすぐに鈍感娘は、ぺたんっと床に尻を着く。ヒラリと捲り上がった風通しの良いショートパンツの裾が、
「コロン来ていたのですねっ」
そう鈍感娘に細くしなやかな両腕を広げられ、コロンは嬉しそうに尻尾を振った。コロンは娘の太ももを足台に、U字に
「ふふっ。くすぐったいです」
「うわ……まじ
そんな声がそこかしこから漏れる。いつの間にか見物人の数が増えていたようだ。
当の睡蓮は無邪気に喜々していたが、コロンの舌が耳や首筋へ移動すると、段々甘い吐息を零していく。そして睡蓮の薄桃色をした小さな唇にコロンが舌を這わせれば、寮生たちは喉を鳴らせたり、息を荒くさせたりした。
「ワンワンワン! バウッ!」
そうしてコロンは、また寮生たちへ目くじらを立てる。
尖がった三角の耳が
するとそのタイミングで足音が近付いてくる。
「おや、こんなところに居たのかい睡蓮」
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