第3話 Q.ストーリーをクリアするとどうなるのか? A.アイテム収集作業が待っている
レベル上げもそこそこにクリアを目指して逸子はひたすらに進んでいく。
ストーリーも高評価されていただけあって努力あり、勝利あり、友情ありと分かり易く面白い。
日が傾いて夕方になり、そろそろ薄暗くなる頃には――
逸子の操作する騎士が最終ボスである魔王を打倒し、エンディングムービーが流れる。
攻略サイトを見ながら一気に駆け抜けただけあってかなり早く片が付いた。
――本編は。
「いやぁ、面白かったね! わたし的には助けた姫様が後で助けに来てくれるところが激アツで――」
「妹よ」
「――それで――何?」
継征はクリアで上機嫌になっている妹に現実を突きつける。
この催しは単にクリアしただけでは終わらないのだ。 真のクリアはトロフィーをコンプしなければならない。 これを見ろと実績画面を表示させるとトロフィーの収集率二十パーセント。
「えぇ、これだけしか集まってないのぉ……」
「頑張れ」
逸子は小さく肩を落とすが思い直したのか即座に気持ちを持ち直した。
「で? 一番簡単そうな奴ってなに? 本編クリアしたのにそんなに集まってないって事はさっさと進んだのがまずかった感じ?」
「いや、ほぼほぼやり込み要素だな」
項目の詳細を見せると逸子の顔色がさっと変わった。
何故なら内容がアイテム百種類収集、アイテム五百種類収集、アイテム千種類収集。
モンスターの累計撃破数五千、モンスターの累計撃破数一万。
コレクションアイテムの収集。 サイドエピソードを全て発生させるなど。
特に最後のは最初からやり直さなければならないのでかなりの重労働となるだろう。
それだけではなく、サイドエピソードを発生させるための条件も満たさなければならないので非常に面倒な事になっていた。
「じょ、上等! 見ててよお兄ちゃん! わたしが本気を出したらこんなの楽勝――」
――十時間後。
継征はコントローラーをカチャカチャと操作していた。
隣では逸子が力尽きてダウンしていた。 取り合えずアイテム収集を片付けようとマップを端から端まで移動している最中だ。 コレクションアイテムに関しては特定のタイミングでしか入手できないので諦めるしかないが、それ以外ならどうにでもなるのでこうして入手可能なトロフィーをせっせと集めていた。
「クソ、これ思った以上にきついな」
そう呟きながらスマートフォン片手に攻略サイトをチェックしながらアイテムを収集していく。
通常アイテムはモンスターからのドロップ品も多分に含まれているので出るまで倒し続けるしかない。
そんな事をやっているものだからレベルはあっという間にカンストしており、戦闘時間はかなり短くなってきている。 ただ、肝心のドロップ率があまり高くないのでとにかく試行を繰り返さなければならない。
「――あ、出た」
もう数えるのも馬鹿らしくなる回数の戦闘を経てようやく目当てのアイテムをドロップし、継征は次は何処だと確認すると――これで最後だった。 その証拠にトロフィー獲得の表示が画面の端に出現している。
「よし、取り合えず今の段階で取れる奴は取ったな」
後はストーリーをやり直して特定イベントを回収すれば完了のはずだ。
そこで継征は軽い眩暈を覚えた。 集中が切れた事で疲労が襲ってきたのだ。
寝ようとベッドへ行こうとしたら既に逸子が使っている状態だったが無視してそのまま潜り込む。
目を閉じたと同時に継征は意識を手放した。
継征が力尽きて少し経過した後、逸子は目を覚ました。
ちらりと隣を見ると兄がぐうぐうと小さくいびきをかいている。
その様子を見てどうやら頑張ってくれたかと察した彼女は兄の頭を軽く撫でて――
「うわ、お兄ちゃん風呂入りなよ。 油でギトギトじゃん」
――ウエットティッシュで手を拭った。
さてと気を取り直した逸子はトロフィーの取得画面を見るとモンスターの討伐数と通常アイテムの収集は終わっていたので後はストーリー関連のトロフィーだけだ。
一通りクリアしているので、何処にあるか分かっていればそう難しいものではないはず。
「よーし、あと一息。 頑張るぞー」
兄を起こさないように逸子は小声で小さく拳を突き上げた。
日が沈み、月が昇り、今度は沈む。 そして再度、日が昇り――朝を越えてそろそろ昼になる頃。
「終わったー! ざまあみろ! わたし達にかかればトロフィーコンプ何て楽勝よらくしょー!」
達成率百パーセントを達成した実績画面を見て逸子はうらーと拳を突き上げる。
その声に反応した継征はびくりと身を震わせて跳ね起きた。
「な、なに? なんだ? ――あ? あぁ、終わったのか」
キョロキョロと周囲を見た後、画面と振り返ってピースサインをしている妹に苦笑。
取り合えずではあるがナイツストーリーは完全攻略に成功したようだ。
食事休憩と逸子の仮眠を挟んだ後、次のゲームの開始となる。
四本目。 機界戦記。
ロボットを操作して襲い来る敵をばっさばっさとなぎ倒す爽快さが売りのゲームだ。
トロフィー取得条件も比較的ではあるが、簡単なので気楽にやれそうだと継征は思っていた。
そして何より、二人で協力プレイができる事が大きい。
「いやぁ、しょうがないなぁ。 わたしが手伝ってあげるよぉ。 お兄ちゃんはわたしが居ないとダメなんだからぁ」
隣で肘をぐりぐりと押し付けてくる妹がちょっとうざかったか取り合えず開始となった。
「うはははは、これ楽しいねー!!」
「お前、突っ込みすぎんな。 囲まれるぞ」
ざくざくと敵を薙ぎ払いながら突っ込んでいく逸子の機体があっという間に囲まれて袋叩きに遭う。
言わんこっちゃないと継征がフォローに入ろうとするが「わ、わわ」と逸子の慌てた声と共に機体が爆散。 クリア失敗となる。
「あはは、やっちゃった」
「おいおい、何をやってるんだよ。 どうする? 前のステージで稼いでから進むか?」
「うーん。 ごめん、次は上手くやるからこのままで」
「オッケー、んじゃ離れずに固まっていこう」
爽快感の強いゲームは時間を忘れさせ、気が付けばあっという間に夜になっていた。
時間を確認するとそろそろいい時間だったので継征はそろそろ切り上げると声をかけると逸子は渋々と同意した。 明日は学校なので徹夜といった無茶が利かないのだ。
切りのいい所で終わり、明日へと備えて逸子はじゃあお休みと言って部屋へと引っ込んでいった。
俺も寝るかと継征はシャワーを浴びた後、就寝した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます