におい

 太郎丸(仮名)と次郎丸(仮名)は臭いらしい。

 犬種的にも体臭が強いものなのだそうだ。

 個人的には顔をうずめていたくなるが、そんな私でも雨に濡れたときに彼らの臭いはなかなか凄いなと思うことがある。


 この臭いは彼らの鎮座するスペースにもしみついている。

 車などは彼らの臭いが充満しているらしい。

 出かけるときに母を車に乗せるという話になった。

 向こうから頼んできたのに座ってドアも閉めないうちに、やっぱり◯◯◯(黒石イモウト)の車に乗せてもらうわと言い放った。


 「菊子(仮名)ちゃんも貫太郎(仮名)ちゃんもここまで臭わなかったわよ」

 母は先代犬たちの名前を出して言う。

 いやいや、あなたの鼻が馬鹿になっていただけだから。

 あいつらもなかなかすごかったって。


 犬のにおいといえば、犬飼いの多くがやる至福の一服、肉球かぎ。

 肉球には汗腺があり、それがあのまた吸いたくなるあの香りを発しているらしい。考えてみれば、それを嗅いで喜んでいるのはあれだ。

 汗をくんかくんかしてはぁはぁしているわけだから、まごうことなき変態である。

 開き直ってしまおう。

 さぁ、変態同志よ! たちあがれ! 今日もすーはーすーはーしようではないか! 

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