第22話 メンヘラちゃんは必死に抵抗している
【メンヘラゴスロリ娘
嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
目の前の光景が現実だなんて受け入れられない。
――ユウ様が……ユウ様がッ……!
目の前でお腹に刃物が刺さり、痛がるそぶりもろくに見せずに動かなくなってしまった。
――ユウ様が死んじゃう……! 亜美のせいで……ッ!!
「ちぃっ…………なんて女だコイツ……イッテェ……! ふざけやがって!!」
男がユウ様のお腹を蹴る。
ユウ様は動かない。声も上げない。死んでしまったかもしれない。
そう思うと、涙が溢れて止まらなくなる。
「やめて……ッ!」
亜美は縛られている両手両足で、身体をひきずってユウ様の近くまで行った。床がじゃりじゃりしていて、擦れた脚が痛い。
ユウ様を庇うことすらままならない状態だが、覆いかぶさるようにユウ様をかばうしかできなかった。
「ユウ様……! ユウ様!!」
涙で前が見えない。ユウ様が見えない。ただ、赤い血が沢山滲んでいるのは涙で霞んだ目でも分かった。
――亜美のせいだ。亜美がユウ様を困らせたから……!
そう考えると涙が止まらなかった。
泣いたって、何にもならないって知っているのに。でも、いつも亜美はこういうときに泣くしかできない。
男の1人が亜美の髪をつかみあげてユウ様から引き離す。
「痛い! やめて!!」
「うるせえ黙れ!」
「お願い……救急車を呼んで! ユウ様が死んじゃう……!」
「救急車を呼びてえのはこっちだっつーの!」
今度はお腹に痛みと衝撃と苦しさが走る。亜美はあまりの苦しさにお腹を庇うようにうずくまる。
口から唾液があふれ出て、吐きそうなのに吐くものは入っていない。
「殺す気で殴ってきやがって……」
何人もいた男たちの中で意識がある人たちは2~3人しかいなかった。
「この女、ヤッちまいましょうよ」
後ろから男が亜美の身体をまさぐってくる。
気持ちが悪い。
「っ……!!」
亜美はこのとき思った。
亜美の身体を好きにさせる代わりに救急車を呼んでもらえるか聞いてみようって。
そんな選択肢しか考えられない自分の弱さが恨めしかった。
ユウ様のように強くなりたいのに。あのとき助けてくれたユウ様のように。今も助けてくれようとしたユウ様のように。
でも、亜美にはそれができない。
「亜美の身体なら好きにしていいから! ユウ様を……!! 救急車を呼んで!!!」
「黙れ!」
ガッ!
頭を踏まれ、ジャリジャリとした床に顔を強く押し付けられる。
「お前、そんなこと言える立場かよ。つくづくおめでたいお嬢ちゃんだぜ!」
涙が枯れてしまうってあるのかな。こんなに涙が出てくるのに。
泣いたってユウさまが助かるわけじゃないのに。
「このアマ!」
もう1人の意識のある男がユウ様の頭を蹴った。何度も何度も。
「やめて! 死んじゃう……ッ!!」
よもや、声にならない声でしか訴えることができない。
――助けて。誰か助けて!
何度も男がユウ様の頭を蹴って踏みつけていた。
「おい、そのくらいにしておけ! マジで死んじまうだろ!」
「殺す!」
「いい加減にしろ!!」
男がユウ様の頭を蹴っていたもう一方の男を取り押さえる。
ユウ様は動かない。
「この暴力女……話に聞いていたよりもずっとひでぇな……こんな細い女に何度も手を焼かされるなんてな」
男が亜美の顔を手で持ち上げて、無理やり顔を自分の方に向かせた。
「ふん、こんな馬鹿みてぇな恰好してる嬢ちゃんが雨柳財閥のご令嬢とはな。身代金をたんまり要求してやる」
もう嫌だ。こんなの。
――なんでもするから……亜美のことはどうなってもいいから……ユウ様だけは……――――
ドンドンドンドンドン!
そんな願いが枯れ果てそうなとき、大きく扉をたたく音が聞こえた。
「誰かいませんか?」
叫ぼうとしたけれど、すぐさま男が亜美の口を塞いでくる。声を出せないように。
ここで声を出さないと、ユウさまが死んでしまう。
亜美は思い切り男の手を噛んだ。
「いってぇ!!」
男が手を離したすきに、亜美は大声で助けを呼んだ。
「助けて!! お願い!!!」
違う男がすかさず亜美の口を塞いで刃物で脅してくる。
「黙らないと痛い目遭わせるぞ……!」
それでも亜美は声を出すのをやめなかった。
「嫌……助けて……!!」
扉の外が何やら騒がしい。
亜美は刃物を首に突き立てられ、押さえつけられて口を布で塞がれた。
「このアマ……!」
バン!!!
というすさまじい音が聞こえた。
暗い部屋に外の眩しい街灯の明かりが入ってくる。
「警察だ! 全員動くな!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます