第33話 レイドボスを倒せ
「ふふ、ここはアリスにお任せを。
ヘルファイヤ!!」
ドガアンッ!!
アリスの爆炎魔法がダンジョンの壁ごとオークの群れを爆砕する。
ガラガラガラ……
魔法の威力に耐え切れず、崩落する天井。
アリスの魔法の威力はさらに上がっているようだ。
今回はレイニさんがこの77層を含め数フロアを貸し切っている。
「わお☆
相変わらずヤバすぎだし!」
ゆゆも負けじと爆発から逃れたモンスターを倒していく。
「はあっ!」
ザンッ!
剣を構えたままクルリと空中で一回転。
鋭い剣閃がゴブリンを真っ二つにする。
「どや☆
新技、ゆゆカッター!」
剣を構え、大きくポーズを取るゆゆ。
弾みでふわりとスカートがめくれ上がる。
”ゆゆかっけ~!”
”やっぱゆゆの魅せ技はスゲーな”
”みえ……みえ”
「にひ♪ だからスパッツだって言ってるっしょ!」
ゆゆのフォロワーは相変わらず盛り上がっているが……。
「ほらほら、先を急がないと使徒の皆様が飽きてしまいますよ?
バーストレーザー!」
ヴイイイイインッ
ズッドオオオオンッ!!
アリスの閃光魔法が一直線にダンジョンの壁を貫く。
「ふふっ♡」
右手の人差し指と中指をぺろりと舐めるアリス。
ドキリとするような流し目をドローンカメラに送ると、すらりとした脚を見せつけるようにダンジョンの奥に向かって走る。
”えっっっっ!!”
”アリスの新路線いいぞ~”
”ゆゆ、ちょっと魅せ攻略しすぎじゃないかな~。
アリスみたく圧倒的な破壊力を見せて欲しい”
”時間かけ過ぎだよね”
”いやいや、魔法だけじゃ面白くないっしょ?”
”ほらほら、仲良し二人の配信なんだからケンカしない”
「もふもふ」
俺はいつも通り、ふたりの倒したモンスターをクリーナースキルで魔石に変えていく。
「うは! 今日のアリスっぴちょいドS!?
だがそれがいい!!」
ゆゆはアリスのキャラ作りと思っているようだ。
嬉しそうに身体をくねくねさせると急いでアリスの後を追う。
「…………」
だが俺は、少しだけ違和感を感じていた。
前回のダンジョン配信に比べ、ダンジョンの破壊度合いが大きい。
攻略後にまとめて直すのかもしれないが、壊れたダンジョンはそのままだ。
モンスターに対しても意図して高威力の魔法を使っている気がする。
プロデューサーであるレイニさんの指示なのか、それとも……。
先ほどからアリスの足元に付き従っているピンクカーバンクルのマジェのことも気になる。
(気のせいか……?)
マジェを見ていると、なぜか全身がぞわぞわするのだ。
不快感と言い換えてもいい。
「もふもふ」
どこかすっきりしない違和感を抱えたまま、俺は二人の後を追うのだった。
*** ***
オオオオオオンッ
ダンジョンの最奥にいたレイドボスは、事前にレイニさんから告げられていた通り巨大なタコ型モンスターであるクラーケン。
……なんでレイニさんはレイドボスの種類まで事前に分かるのだろう?
「へへ、当たらないし!」
天井までの高さが15メートル以上はある、大広間の壁面を埋め尽くさんばかりの巨体。
だが、その巨体が災いして攻撃に鋭さはない。
ビシュッ!
触手の突きをあっさりとかわしその上に乗ると、そのまま駆けあがるゆゆ。
「ゆゆカッター!!」
ザンッ!
どさり
ゆゆの高分子ガラスブレードが一閃し、大人の胴体より太い触手を切り飛ばす。
じゅるじゅる
「うぇえ、やっぱし!」
だが、類まれなHPを誇るレイドボスだ。
切られた触手の断面がすぐに再生していく。
「……バーストレーザー」
間髪入れず、アリスの閃光魔法が放たれる。
ヴィイイイイイイインッ!
「っとぉ!?」
ちりっ!
一直線に伸びてきた赤い閃光を辛うじてかわすゆゆ。
ドンッ!
再生しかけていた触手は焼き切られ、クラーケンの本体に大穴が開く。
「っっ、アリスっぴ、ナイス!!」
サムズアップするゆゆだが、その額には冷や汗がにじんでいる。
「もふ……」
今のは危なかった。
かわすタイミングがわずかでも遅ければ、ゆゆに当たっていたかもしれない。
一応、探索者が使う魔法には対人威力を抑えるリミッターがついており、ゆゆの着ている制服の魔法防御力も高いが、元の威力が桁違いだ。
「もふ(気を付けて、アリス)!」
念のため、アリスに警告を送る。
「ふふ、ゆゆのこと信頼してますので」
俺のメッセージを一瞥すると、蠱惑的な笑みを浮かべるアリス。
……やはり様子がおかしい。
キャラづくりだとしても、他人に危害を加えてしまいそうになったのに、平気な顔をする子じゃなかったはずだ。
みきゅっ
アリスの足元に纏わりつくマジェは、相変わらず澄ました様子でこちらを見ている。
”うわ、あっぶね~”
”せめて魔法を発動させる前に声を掛けなきゃ”
”今日のアリス、ちょっとおかしくね?”
”いやいや、ゆゆこそアレくらい攻略パートナーとして感じてくれないと”
”そもそも対決、だし!”
”危ない事をしていいわけじゃないだろう?”
コメントも少し荒れ気味だ。
少なくとも第一回対決のような和気あいあいとした雰囲気はない。
「さあゆゆ、早くとどめを刺しますよ」
「う、ういっ!」
その後もゆゆとアリスの危なっかしいコンビネーション攻撃は続き、
何とか無事にレイドボスであるクラーケンを倒すことが出来たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます