第6話 俺が照らしたいのは…

寺島はとんでもない罪悪感に苛まれていた。

「本当にごめんなさい……」

「謝ることなんて無いよ♡男子だもんね」

隣にいた水穂さんは寺島を抱擁する。

「いつも来ていいよぉ?……そしたら毎日でもシてあげるのに」

水穂さんの柔らかい胸が僕の背中に当たる。

俺はどうしたらいいか分からなくなってきた。

「ねえ?今度もさ、私の部屋に遊びに来てよ?」

水穂さんは俺の手を取り、自分の胸に押し付けた。

「えっ!?ちょ!」

「ほらぁ♡もっと触って良いんだよ?」

さらに強く押し当ててくる。

そして今度は首筋や耳元を舐め始めた。

「うぅ!」

水穂さんはクスッと笑いながら離れてくれた。

「あ~んもう我慢できないぃ!隣の誰もいない部屋いこ?」

俺は言われるままについていく。

部屋の中に入ると鍵をかけられた。

そこには水穂だけでなく安藤さんもたたずんでいた。

椅子に座って俺を見つめている。

「あら♡」

俺は吸い込まれるように二人に近づく。

二人は手を広げ迎え入れてくれるようだ。

俺はそのまま抱きしめた。

「うふふ♡」

「やっと来ましたわね」

俺は二人の匂いを思いっきり嗅ぐ。

「ああ……この匂い……」

「そんなに私達の匂い好きなんだ?」

「素直で本当に嬉しいですわぁ♡」

水穂と安藤は俺の顔を挟んでキスをする。

俺はなにか間違えているような気がしたが、理解できなかった。

「じゃあ次はどこが好きなのか教えてぇ♡」

水穂は制服から体を半分露出した。

「上の方?それとも下の方が好き?」

俺は答えなかったが安藤に目線でバレバレだったらしい。

「上の方と思ってますわ♡」

水穂は笑顔になり、自分の大きな胸を寄せ上げ見せつけてきた。

「へーそうなんだぁ♡男の子なのにねぇ?」

「ち、違うぞ!!」

否定するが安藤には通用しなかった。

「じゃあ、今日は『上の方』を使ったメニューでアステラ様を満足させてあげる♡」

「♡!もうこんなに下半身は期待してますのね!!」

俺は今日もこの二人のもとに来てしまった……。

あのサンドイッチされた日を忘れることができず、今日も頼んでしまった。

情けなさすぎる。

でも、俺にはこの快楽を止める方法が分からなかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「どうも~。今日は「悩み事」について雑談するね!明日を照らすための動画、アステラ様をお願いしま~す!」

なんか力が入らない。

なんだろう?疲れてるのかな? まあいいや。とりあえず始めよう。

俺スマホで動画を撮り始める。

画面の向こう側にいる視聴者さん達に語りかける。

「最近ね…自分でもどうしたらいいか分からなくて…」

コメント:どんなことですか?

コメント:相談乗るぜ

コメント:力になるよ

コメント:アステラ様の困り事?!

「実はね……最近……他人との付き合い方が上手くいってなくて…」

俺はとっさに、水穂と安藤にサンドイッチで奉仕されたあの時を思い出した。

コメント:え?どういうこと?

コメント:アステラ様?

コメント:まさか女関係?

コメント:あー!彼女いるって言ってたもんね!

「あっいや!その……異性との交際というか……」

やばい!つい口に出してしまった! 慌てて言い直すが遅かった。

コメント:「泥棒猫」ユルサナイ!

コメント:アステラ様はワタシも好きだったのに~!

コメント:( ;∀;)

コメント:彼女持ちが雑談するんじゃない!

「いやいや!本当に違いますよ!聞いてください!」

なんとか弁解しようとするが、火に油を注いでしまう。

さらに激化してしまったのだ。

最近炎上したばっかりなのにとんでもない失態だ。

「まじか…」

少しばかり絶望しながらコメント欄を眺めていた。

そこには嫉妬の声を上げるものが多く、あまり見ていて心地いいものでなかった。

「…ん?」

そこで俺はある一件のコメントに目が留まった。

「これってもしかして……」

コメント:「多分、アステラ様は大人気だと思いますし、アステラ様を思う人は多くいると思います。

ですが、一つ一つの物事に重きを置いてしまったら本末転倒ですよ。

きっと、相手の方も病んでしまうでしょう。

だから、言葉にしにくい想いも不器用ながらに伝えた方が後になって、皆幸せになのではないでしょうか?」


「…………」

俺が伝えたい事……。

そうか……。

俺はなんて馬鹿なことをしていたんだろう。

俺はただ快楽を求めていただけだったのか……。

本当に申し訳ないことした……。

俺は今度こそちゃんと向き合うべきだ。

俺は決めた。

「……ありがとうございます!皆さんのおかげで吹っ切れました!」

俺は涙を浮かべながら感謝を伝えた。

「ではまた来週会いましょう!明日も皆さんを照らします。誰一人として俺は見捨てるつもりはないです!!」

そう言いながら配信を切る。

よし、明日、本音で語ろう。

水穂、安藤、実久、迷惑かけてごめんな。

俺が照らしたいものはきっと君達なんだ!


~~~~~~~~~~~~~~~


次の日

俺はいつもより早く学校を出た。

そして、家に着くなりすぐに着替えて家を飛び出した。

そうして走り続けた先には、もちろん高校だ。

しかし今日は憂鬱な授業を受けに来たのではない。

今日は…日曜日。

ただただあの三人と話すがために来た。

ガラララッ! 勢いよく扉を開ける。

そこには……安藤、水穂、実久の三人が居た。

「あぁ〜!!寺島様だ!!」

「……アステラ様ですわ!」

「アステラ様……♡」

三人とも俺を見るなり笑顔になった。

その顔を見て、昨日の事を思い出した。

『じゃあ、今日は『上の方』を使ったメニューでアステラ様を満足させてあげる♡』

『♡!もうこんなに下半身は期待してますのね!!』

彼女持ちのくせにありえない光景だと自重した。

そして、俺は三人にこう言った。

「ごめんなさい……」

「えっ?」

「なんのことですか?」

「さっきから変ですよ?アステラ様」

困惑する三人に、俺はもう一度頭を下げながら言った。

「本当にごめん……。実は昨日、大切なことに気付いて、それで…

君らをずっと傷つけていた。ごめん。本当に申し訳ない!!」

「……」

「……」

「……」

沈黙が続いた。

それはそうだ。いきなり謝られても意味不明だろうし、それに何よりも……怖いはずだ。

だから、まず最初に言わないといけないことは決まっている。

「駄目!!!なんで寺島様が謝るの?わけわかんな!!悲しいよ、寺島様が謝ることなんて許せない!私の神様が謝るなんて…!」

「…はわわわわ!なんで謝ってしまうのですの?だったらワタシが全ての原因ですわ!」

「次、アステラ様が謝ったら私、死のうかな…」

三人は怒っていた。

間違った方向で起こっていたことは三人らしいと感じた。

でも俺は彼女たちに本当のことを話さないと行けない。

それがどんなに辛いことでも、それこそが俺の責任であり罪であるのだ。

「実久、浮気して悪かった。言い訳はしない。事実だけ受け取ってくれ…」

「……じゃあ、今日は私の色に染めないさなくちゃ♡」

「水穂、気付かないフリをして申し訳ない。俺が言うのも恥ずかしいが好きなんだろ?俺の事」

「(赤面)コクコク……にまぁ」

「安藤、本心に気付けなくてごめん。現実逃避行動を促していたのは俺の方だ。もう少し俺が馴染めるように補助してあげれば良かった…」

「……もう、ワタシ、アステラ様に一生貢ぎたいですわ………」


それぞれが本心を言い合う。それはとても勇気がいる事だった。

だが、これが今出来る精一杯なのだ。

そして、辛い事と理解している寺島だが友達の関係まで距離を置こうとしていた。

もうこれ以上、ギリギリの関係で彼女たちを病ませたくないと考えたからだ…。

そして、「友達の関係でいよう」と言葉にしようとしたとき、

「「「「嫌だ!!!!」」」

三人同時に叫んだ。

これは三人が察した何となくの雰囲気だった。

「私は、アステラ様を愛しているんだもん!だから、別れるとか絶対にやめて!!」

「ワタシだって、アステラ様が好きですわ!別れるのは……イヤ……ですわ」

「寺島様も辛いでしょ?それだったら、私も辛いよ!」

それぞれの想いを告げられる。

正直嬉しかった。こんなにも自分の事を好きでいてくれるのかと思うと胸が熱くなる。

だけど、俺は彼女達を傷つけてしまった。

そんな俺には、もう付き合っている資格はない。

「本当にごめん……!俺みたいなクズ野郎とは…」

そう言いかけた時、三人が口をそろえて言う。

「「「じゃあ、私達全員を公式の彼女にしてよ!!!!」」」

……!

その発言に寺島は一瞬戸惑ったが、すぐに決心をした。

これは俺自身が望んでいるというより、アステラ様が続くうえでとても大切な選択であった。

「分かった……!」

「「「やったぁー!!!」」」

三人とも喜んでくれた。

これで、また元の日常に戻る事が出来る。

寺島にとっては、それだけで十分だった。

「これからもよろしくな」

「うん!」

「はいですわ!」

「もちろん!」

こうして、寺島と実久、水穂、安藤は和解する。

そして、新たな学校生活が始まった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「おい!向こうの席に座ってる寺島見ろよ!S級美女たちに囲まれてるぜ?ずっる」


「うっわぁ〜!俺もあんな美少女に囲われてぇ〜」

「くそぉ……リア充死ね」

寺島のクラスでは、いつも通り男子達の嫉妬の声が響いていた。

「アステラ様って、ホントに人気だよね」

「……うーん。こういう噂は好きじゃないけどね」

「じゃあ、今日はワタシが独占してもよろしいでしょうか?」

「えっ?いいけど……」

「やったぁ!!」

寺島の言葉に、安藤は喜んだ。

「あっ、ずるい!私もアステラ様と話したかったのにぃ」

「ごめんなさいですわ」

「むぅー。仕方ないなぁ」

「ふふん♪」

「「ムカつく……」」

「ちょっと待て!喧嘩はいけない!!」


とても騒がしいが充実した日々。

それを日常生活と配信生活の支えとなった。


「…これからも一生、アステラ様を照らしてあげる♡」





作者より、

完結しました。

ここまでご覧いただき、ありがとうございます!

ヤンヤンデレデレで崇拝されたらどうしますか(笑)?

それはさておき、この話のスピンオフの希望があったら執筆します。

コメントで知らせてください。

それでは、またいつかの作品で会いましょう!!

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