第4話 照らしてよ

 寺島は家に帰り、今日の配信の準備を始めていた。

「今日は何の配信をしようか?」

正直ネタがない。

悩みに悩んで結局何も決まらないまま、時間だけが過ぎていく。

「とりあえず、雑談でゲーム関連の話するしかないか……」

そう思った時だった。

ピンポーン♪ 誰かがインターホンを押したようだ。

こんな時間に誰だろう? 不思議に思ってドアを開ける。

「こんばんは!」

「えっ……実久……?」

そこにいたのは実久だった。

「一緒に配信しよ?私は『クロ』って名前で出演するからさ」

「えっ……それはちょっと……難しいんじゃないか……?」

「大丈夫!付き合ってるでしょ!ねっ?」

「うっ……わ、わかった……」

俺は渋々承諾してしまった。

だが、この選択は間違っていた。

「それじゃあ、始めまーす!」

動画が回り始める。

「…ど、どうも。明日を照らすための動画、アステラ様です!ちなみに今日も出演者が二人で行きたいと思います!!」

「クロだよ!猫みたいに気まぐれだけどよろしくね~!」

コメント欄で『神回期待』という言葉が多く寄せられていた。

しかしそれと同時に。「泥棒猫」という発言も多い。

「泥棒猫」?なんのことか…

「今日は、今流行りの『ソルダの伝説』を語ってくよ~!」

ソルダの伝説とは最近人気急上昇中のゲームだ。

寺島と実久はそのゲームにドハマりしたらしく、よく話題に上がる。

「このゲーム面白いよね!特に……とかさ!…とかも凝ってるよね!」

【クロ】は会話がうまい。

視聴者さんを引き込む能力がずば抜けて高いからだ。

なんでこんな高スペックの彼女が俺にいるのだろうか…。

そんなことを考えながら、配信の画面を眺めていた。

すると、ある事に気付く。

「あ。スーパーチャット切ってない」

実はアステラの配信はスーパーチャットの機能を制限しているのだ。

目的は、皆の明日を照らすためであって、お金を集めるためではない。

コラボの時は、【みらくる天使ちゃん】の方のチャンネルを使っただけであって、

スパチャを貰うのがあの時が初めて出会った。

しかし、今回の件では、その制限を解除していたため、気付いた人が拡散してゆく…

そして、ついにスパチャを入れられてしまう。

「えっと…!だれが入れたの?」

コメントが凄い勢いで流れてくる。

数千円をふざけて入れる人…中には三万円を何回も投げ入れている人もいた。

「これはやばいよ……」

コメント欄を見ると「やっと…アステラ様を支えられる!!」「猫泥棒引っ込め」などのコメントが大量にあった。

実久はこちらを見つめる。

「えっと、いったん中断。しましょう。ではまた明日!」

俺は速攻で切り上げようとした。

なぜなら、炎上する可能性もあるからだ。

ここまで荒れているとどこを切り抜かれるかが想像もつかない。

「…」

俺は配信を切るボタンを押そうとする。

しかし、実久はそれを阻止してきた。

「…どうしたんだ?クロ…」

「…ふう」

実久は俺の手を払い、マウスを奪い取る。

そして実久は思いっきり叫んでいた。

「私、クロはアステラ様と付き合っています!!」

俺は呆然としていた。

「おい……何を言って……」

「いいじゃん!別に!隠す必要なんてないし!」

「だからって!」

俺は動揺を隠せなかった。

なぜ彼女は俺の私情を明かしたのか……それが理解できなかった。

「これでアステラ様に変なこと言う女がいない…私が独占できちゃうよ…♡」

もちろん、コメント欄は荒れに荒れまくった。

それを鎮圧する作業でさえ、実久はとても可愛らしい顔で笑っていた。



~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~


「…許さないよ、絶対に許さない!」

ここは高級高層マンションの最上階である。

そこにある少女が座っていた。

「アステラ様は…私だけを照らしてくれる存在なの!!」

銀髪で、顔立ちは整っており、男性ならだれもが好意を抱いてしまう。そんな風貌だった。

しかしそんな少女の今の眼は猛獣の様に獰猛だった。その目つきに睨まれるだけで体が硬直してしまうほどだ。

「絶対に……渡さない……」

ピロンッ!とスマホが鳴る。

「…」

そこには『こんにちわ~♡』の文字があった。

「…」

その画面をタッチするとまた新たな文字が現れた。

『どーも!みんなの恋心を冥界にいざなっちゃうよ!みらくる天使ちゃんだよ~!』

「…いま取り込み中なのよ…」

そういってメールを閉じる。

ピロンッ

また新たな着信が入る。

『ねぇ……アステラ様を自分のものにしたいって思わない?』

「~~~~っ!!」

この少女はその一言で身もだえてしまう。

違う、自分のものにしたいんじゃない。

アステラ様の所有物になりたい…!!

〈なあ、俺の性欲を満たしてくれないか?〉

そうアステラ様に言われながら彼のすべてをぶつけられることに妄想してしまう。

「んふぅ……いいですわぁ……」

そういって彼女は体をビクンビクンさせてしまう。

しかし、すぐに正気に戻る。

『つまり、何を言いたいのかしら?』

ある少女はメールで返信した。

すぐに返事は返ってくる。

『一緒に協力して、アステラ様を満足させましょ?そして依存してもらうの』

体が熱くなってきた。ワタシは…。

少女は熱心にメールを打ちはじめた。



作者より

♡一つでもあったんで作りました!!

次の更新は未定です。

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