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連れてこられた男性は僕の持ってきた塩と胡椒をまじまじと見ている。

すると

「ここじゃちょっと話ができないな。悪いが別室でさせてほしい。ついてきてくれるか?」


驚かれることは少し予想していたとはいえ、別室に呼ばれることのほどなのかと内心驚きながら素直に頷く。


個室に案内されて席に着くと自己紹介される。

「俺はこのファスペル辺境伯領の商人ギルドマスター、エコラック・バーザスだ。」


続けてエコラックさんは放った

「お前さんの持ってきた塩と胡椒だが、どこで手に入れたものなんだ?」


「すいませんが入手経路についてはお答えできません。商人にとって情報は命にもなりますので」と返した。


苦しいだろうか?

しかし正直に言ってしまえば最悪いいように使われる未来しか見えない。

すると


「ハッハッハ!カマかけてみたが心配なさそうだな。お前さんの言うとおりだ。

商人にとって情報は命だ。自分の商品の入手経路を素直に話すやつは大成しない。

商人らしい身なりじゃないから心配してカマかけてみただけなんだ。悪いな。」


なるほど。

このマスターはこれから僕が商人としてやっていけるか不安に思って心配してくれただけのようだ。

これだけで全面的に信用することはできないが、とりあえずの信用はおいても問題なしだと判断することにした。


「それで本題だな。これを売りたいそうだな。

そうだな・・・見たところかなり品質のいい塩と胡椒だ。

そんじょそこらでは手に入らんだろうしちょっと味見してみてもいいか?」


まぁ見ただけで全面的に信用するのもどうかとは思うし、こちらも責任が取れない。

迷うことなく僕は頷くと人差し指に乗るか乗らないかぐらいの量を手に取り味見している。


「ふむ。見た目通り、実際の味の質もいい。こりゃあ貴族も求めるくらいだろう。

どちらも銀貨10枚で、合わせて銀貨20枚でどうだ?」


え?2つ合わせて銀貨20枚?

仕入れ原価としては小銀貨1枚と大銅貨5枚だぞ?


驚きながらも全く不満のない僕は「お願いします」と頷いた。

「毎度あり。しかし、なんだ。こっちとしちゃ助かるし、確かに欲張りすぎも身を滅ぼすことになる。

けどよ、ちょっとはつり上げの交渉をした方がいいんじゃねえのか?あまりに素直だと舐められるぞ?」


言われて内心、しまったと思ったが商売は信用が第一だ。

しかし僕にはその信用が今現在全くないと言っていい。

そういった交渉はもう少し信用を得られてからやろうと思うことを伝えると。


「まぁ確かにそれもそうだな。金にがめつい奴らがしょっぱなから引き上げ交渉しまくって信用失って身を滅ぼすのはよくある話だ。それに比べてお前さんは謙虚だな。

いまはその謙虚さは良い面として働いてるが、そのままじゃ何も変えなきゃいつかは負の面に変わっちまう。きちんとそのタイミングを見極めろよ?」


「はい。そのつもりです。商人にとって情報は命ですから。周りの人が自分をどう見ているのかも常に気を付けるつもりです」


「うむ。いい心がけだ。お前さんには期待できそうだな。商売で困ったことがあったらいつでも相談するといい。可能な範囲で力になると約束しよう。」


エコラックさんはそういいながら手を差し出してきた。

僕もそれにこたえるように手を出し握手を交わす。

この人もとりあえずは信用してもよさそうだ。

もちろんギルドマスターではあるが一商人でもあることは忘れずにいる必要はあるが。


「時に相談なんだが、この塩と胡椒は定期的に入手できそうか?」

と質問される。


うーん。基本的に今のところ町から大きく動くつもりもないし、この世界の方法で多量に入手できるとは思えない。

ならば増量などの交渉はさせないで、週に1度のペースであれば可能という形ならば、そこまで怪しまれないだろう。

同じ量でも短期間で仕入れるとなると、普通に考えれば足跡が残る。

それを辿られて自分のスキルまで把握されればアドバンテージが消えてしまう。


「そうですね。週に1度で同じくらいの量であれば仕入れることができると思います。」


「そうか。そいつはありがてえ。このデミウルゴス公国はほとんどが内陸に位置する国で海に面しているのはほんのごく一部でな。

公国の中でも内陸の深いところに位置しているこの領には塩が届きにくいんだ。届いたとしてもただでさえ高値になっちまうからな。

お前さんの入手経路については正直に言えば、かなり気になるところではあるが、下手なことやって嫌われちまったらせっかく通常よりも安く仕入れることができる経路が失われちまうからな。

となりの領の貴族や商人たちも欲しがってるし助かるだろう。

もし可能なら偶にでいいから増量もしてくれると助かる。

当然だが買い取り額もその分勉強させてもらうぜ?」


と説明してくれる。

僕は頷きつつも感じた疑問を投げかけてみることにした。

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