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僕が戸惑っているとロッサリーさんが
「どうかしましたか?」と聞いてくる。
咄嗟に「あ、何でもないです。大丈夫です」と返す。
しかしこのステータス・・・
あの王女が使った水晶のように他人からは見えない仕様のようだ。
しかし商人の取得とはどういうことだろう?
分からないことだらけだが、ステータスというからには他人に極力知られない方がいいものなんだろう。
取得した商人や異世界のショッピングセンターに関しては棚上げし、後で調べてみることにした。
そうして小さな町に辿り着く。
この町は目的地であるデミウルゴス公国からは一番近いアーガスト王国の町とのことだ。
ただこの町に入るときに門番が、かなり厳重にこちらを調べる様子があった。
何でもこの町の出入り口はその1か所になっておりデミウルゴス公国から来たのかアーガスト王国王都方面からきたのかが分からなかったからだそうだ。
それに町の中に入っても妙にピリピリした感じが拭えない。
加えてどちらの方向から来たのかなんて、そんなに重要なことなのだろうか?
そう思っていると僕の疑問を察したのかロッサリーさんが小声で教えてくれる。
「これは噂話なのですがアーガスト王国がデミウルゴス公国に対して宣戦布告をしようとしているとの噂があるのですよ」
その話を聞いた僕は納得と同時に、新しい疑問が生じてしまった。
それならば国境に一番近い町は戦争になれば戦場になるのは予想できるし、ピリピリするのも頷ける。
しかしこの世界の魔王を討伐するために勇者召喚を行ったわけなんだし、他国に戦争を仕掛ける余裕があれば、それを魔王に向ければいいのではないだろうか?
と思ってしまったが、この世界の事情に対してまだ疎い僕ではわからないことだらけだ。
まして自分の立ち位置すらもあやふやな状態だし、それがしっかりとするまではこの疑問に関して考えることをやめた。
宿屋についたので僕も宿屋を探そうと歩き出すと
「どこにいくのですか?」と訊いてくる。
僕も泊まれる宿屋を探そうとしていることを伝えると、僕の分まで宿をとってくれるという。
しかしロッサリーさんの馬車は商人だけでなく冒険者なのかわからないが、しっかりとした護衛もいる。
出会ったときは見えなかったがかなりの人数だったようだ。
ということはそれだけのお金を稼いでいる商人さんであり、そんな人が泊まる宿だ。
決して宿代も安いものではないだろう。
それを伝えて断ろうとしたが、気にする必要はないと僕の分も含めて宿をとってくれた。
あの王女から銀貨20枚を渡されたとは言え、まだ自分で稼ぐ手段を見つけたわけではない。
それにこの世界の物価が前の世界の物価と同じならば20万円という金額はすぐになくなってしまうだろう。
僕は謝罪と感謝を述べ、ありがたくその宿に泊まることにした。
食事を終えて部屋に入ると一人になった。
迷い人として1人放り出され見ず知らずの土地に見知らぬ人たち。
一緒にいては気も休まらないだろうというロッサリーさんの気遣いだ。
明日の朝、食事の時間になったら呼びに来てくれるということなのでそれまでの間は自由行動になった。
誰もいなくなったのであれば調べる必要がある。
そう『商人』と『異世界のショッピングセンター』についてだ。
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