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ベアトリーチェと名乗った女性は、わけも分からず見知らぬ場所に来た僕たちに話し始めた。
この世界は僕たちが住んでいる次元とは違う次元の世界であること。
魔物や魔族たちが住んでおり、何百年も前に討伐された魔王が、数年前に再び現れたこと。
勇者召喚を以てして僕たちをこの世界に呼び出したことを説明した。
まるでラノベの世界のような出来事が起きている事態に、内心混乱している僕と、納得している僕がいて不思議な気分であった。
しかし当然のことながら
「ふざけないで!元の世界に返してよ!」
「家に帰れないのかよ!?」
など生徒たちは至極当たり前の反応を示す。
ベアトリーチェは
「申し訳ありません。我々人族には召喚の方法は伝わっているのですが、送還の方法はその時代の魔王がもつコアにしか記述されておらず、魔王を倒さない限りは皆さんをもとの世界に送り届けることはできません」
と申し訳なさそうに謝罪した。
その答えを聞いた生徒たちの反応は様々であった。
絶望するもの
泣き叫ぶもの
怒りを露わにするもの
普段は清々しいほどに冷静な幼馴染、勇也ですら「ふざけるな!」と怒っている状態だ。
しかし元の世界に対してあまり執着を持っていなかった僕は「ああ、そうなんだな」としか思わなかった。
しかし同時に『生きたい』という願いは変わらず持っていた僕は、この世界で生きる術を身につけなければと新しい目標を持っていた。
そしてこの場にいる全員の、ありとあらゆる感情の波が落ち着いたころにベアトリーチェは口を開いた。
「皆さんには申し訳ありませんが、能力鑑定を受けていただきます。その後はこちらで用意した宿舎の方に移動していただき、お休みいただこうと思っています」
生徒たちの一人が「能力って何?」と質問を投げかける。
「能力とはこの世界で使える特殊な力となります。この世界には魔法や技能、スキルがありますが、この世界の者たちはノーマルな能力しかもっておらず、レアスキルやユニークスキルを持っているのは別次元より召喚された勇者様のみ。
つまりあなた方のみとなります。数百年前に魔王が現れた時にも勇者召喚は行われており、その時に召喚された勇者にはユニークスキルというものがあったという記録がございます。
皆さんには魔物の討伐でステータスを鍛え上げ、唯一無二の能力をもって魔王を討伐していただきたいのです」
と彼女は説明する。
重川君の友人の彼が
「っち、しゃーねーな。ここで蹲ってても何も変わらねえしな。そのスキルってのを確認する方法はあるのか?」
と質問をする。
「皆さんにはこれから、この水晶に手をのせていただきスキル鑑定を行っていただきます。とりあえず、その後は何日かの休息の後に関連する魔法や技能をもつ兵士たちと戦闘訓練を行っていただこうと思っています」
と言いながら水晶を台に乗せながら王女は説明をした。
期待と不安が入り混じりながら僕はその時を待った。
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