いぇ~いwwwアーサー王くん見てるぅ?君のかわいい大事なNTRビッチ嫁なら俺と結婚しちゃったよwwwだから早くアヴァロンから起きてこのビッチを迎えに来てください!
園業公起
シーズン1 そうだ。アヴァロンにNTRビデオレターを送りつけて、このビッチをアーサーさんに迎えに来てもらおう。
第1話 ビッチ蘇る!
特別な人になりたかった。だって俺は出来損ないだったから。
『大丈夫だ。お前はいつかすごいことを成し遂げる。お父さんはそう信じてる』
父は魔術師の名門に生まれたのに魔術がちっとも使えない俺のことをそれでも愛してくれた。
『許してあげるんだよ。お前は何でもできる強い子だ。だから弱い人の悪いことも許してあげるんだ。そして償う時の間、やさしく守ってあげるんだ』
だけど俺は自らの過ち故に父を失ってしまった。そして母は俺を見限り家から追い出した。戻りたくって必死に何でも頑張った。スポーツも勉強もなんでも一番だったけど、魔術だけはどうにもならなかった。結局母は才能にあふれる異父弟だけを可愛がり、一度たりとも俺の方を振り向いてはくれなかった。
ーーだけどあなたはいつかわたくしの元へ辿り着く。
ーーだってあなたは王子様。
ーーあの金の枝を折れたのだから。
イギリス グラストンベリー郊外
母親に見捨てられて実家を追放されてチンケな人生を送る俺は大学を休学してバックパッカーの旅に出た。そしてやってきたのはイギリス。
「つーかここに来てる時点で未練たらたらだよな…」
ここグラストンベリーはオカルトの聖地のひとつだ。UFOや宇宙人、音楽フェス。それに華麗なる英雄伝説の終焉地。魔術の才能のない俺でもここに来れば秘められていた才能に目覚めるとか。そんなくだらないことを内心では期待していた。だけど当然そんなことはなく、今日この地を去る。だけどその前に一つ行きたい場所があった。郊外にある小高い丘の上に塔が立っている。そこにある大英雄の墓の前に俺は立った。
「ここがアーサー王のお墓ですか。思ってたほどじゃないなぁ」
まあアーサー王伝説のことは詳しく知らないけど、そんな俺でもアーサー王が最後に行きついたのはアヴァロンという場所だということくらいは知っている。ここは後世に人々のアーサー王への思慕が生み出した仮初のお墓に過ぎないのだろう。
「まあそもそも伝説はフィクションだしな。くだらない」
魔術師たちは神話や伝説をあたかも実在していた出来事のように思いたがるが、大学でがっつり理系に進んで学問を学んでいる者としてはそれは絵空事にしか思えない。でも魔術は実在している。それはありもしないことをまるであるかのように起こす奇跡の力。俺は其の奇跡には選ばれなかったけど、目にしたことは何度もあるのだ。
「だけどみんな伝説の英雄に憧れる。だって俺たちは選ばれた特別な人間じゃないのだから」
俺以外の観光客は墓に花を供えたりスマホでセルフィーしてたりしてた。みんな英雄の持つ力に肖ろうとしている。それはエゴに満ちた祈りなのだろう。まあどうせ俺の願いは叶わない。魔術のことはやっぱりきれいさっぱり諦めるしかないのだ。
「アーサー王さま。アーサー王さま。すごくかわいくて美人で聡明で優しい彼女を俺に作ってください!…なんちって」
どうせ願うなら生産性の高いお願い事がいいかもしれないと思って言ってみた。だけどよくよく考えれば嫁さんに浮気された女運のウルトラ悪いアーサー王にそんなことお願いしても駄目だろう。俺は墓に背を向けて塔から離れようとした。その時だった。背後から大きな音と共に衝撃が俺の背中を襲った。その衝撃に吹っ飛ばされて俺は地面の上をゴロゴロと転がる。俺と同じように観光客も吹っ飛ばされていた。
「ごほごほ!何が起きた?!一体何が?!」
周りには土埃が舞い上がっていた。そしてそれが晴れると見えたのは木端微塵になったアーサー王の墓だった。
「ふぁ?!え?!なに?!え?ええ?!墓の下のアーサー王が爆発でもしたのか?!」
そしてよく見ると爆発の中心に金髪の女が倒れていた。古めかしいデザインのドレスと頭には冠がはめられている。
「ううぅ。ああっ…」
女は苦しそうに呻いていた。俺はすぐに近くに駆け寄った。
「おい!大丈夫か!しっかりしろ!!」
俺は女の頭を抱きかかえて呼びかける。
「…あれ…?ここは…?…アーサーなの…?」
女は目を瞑ったまま俺の顔に手を伸ばし頬を撫でる。
「ごめんね…アーサー…私は…間違え…」
そして女は目を開けた。湖水のように澄んだ蒼い瞳が俺を見詰めている。女はとても美しい顔をしている。神話に語られる美の女神が実在するならばきっとこの女だろう。
「…あれ?…アーサーじゃない?…っ!!夫でもない男が私に軽々しく触れるな!!」
俺は女に突き飛ばされた。介抱したのにこの扱いはあんまりだと思う。女は立ち上がり、突き飛ばされて蹲った俺を見下ろしている。その瞳はとても冷たくて恐ろしかった。何よりもその異形に俺は震えてしまった。虹彩が縦に割れている。まるで蛇のように。
「お前はこの私に触れたな?ブリテンの女王であるこの私に!その所業、万死に値する!」
何を言っているのだろうか?訳が分からない。だけどその言葉になぜか説得力を感じてしまった。この女には畏怖を感じさせるカリスマがある。だけどそれ以上に俺の勘が囁いている。この女は人間じゃない…!
「騎士たちよ!!いますぐにそこの男の首を刎ねなさい!!」
騎士と聞いて俺は身構える。だけど周りには誰もいない。爆発の衝撃で気絶している観光客達くらいだ。幸い命に別状はなさそうだ。
「…あれ?騎士たちがいない?……っあ…国滅んでたの忘れてた…というか私なんで生きてるの?」
ますますわからない。女は両手をぐーぱーしてみたり顔に触ってみたり、自分の体にしきりに触れたりしている。まるでその様子は墓の下から蘇った死者のようだ。…え?うそだろ?!まさか?!木端微塵になったアーサー王の墓、そしてそこにいた女。漫画やアニメで見たことある!織田信長が女の子になりがちなのと同じような理由なんじゃないか?!
「おい。今あんたブリテンの女王って言ったな!?」
「なに?私に気安く話しかけないでちょうだい」
そして俺は満を持してこの女の正体を口にする。
「あんたはまさかかの有名なアーサー王なのか!?アヴァロンから帰ってきたのか!?」
俺はいますごくワクワクしていた。本当は女の子だったアーサー王と出会い、これから冒険の日々に出る!そして俺は秘められていた魔術の才能に目覚める!そんなことを夢想していた。なのに、頬に鋭い痛みを感じた。
「べふぅ!お前今、俺のことを引っぱたいた?!」
「当たり前でしょ!!アーサーは男でしょ!なんで私みたいな綺麗で美人で可愛い女をアーサーと間違えるのよ!この愚か者!!」
目の前の女はアーサー王ではないらしい。だけど超常の存在なのは間違いない。では誰なのよ?ブリテンの女王?
「じゃあお前誰なの?なんでアーサー王の墓から出てきたの?なんか人間じゃなさそうな感じだけど?」
「はぁああ?!言ったじゃない!ブリテンの女王と!!その名を知らない?!この私を知らないの?」
女は頭に手を当ててため息を吐いた。
「…いいえ。よくよく考えたら、なんでかはわからないけど後世に私は蘇ったのよね。なら知らないのも仕方がない?でもアーサーを知っていて、この私を知らない?理解できないわね」
なんかすごく納得いってないような顔をしている。俺だってこの女の正体がよくわからなくてもやもやする。
「お前。答えなさい。私が死んでからどれくらいの時がたったの?」
「いやむしろお前誰だよ?お前が死んだ時間なんて知るかよてか誰だよ?まじで」
目の前の女がアーサー王じゃない時点でなんかテンションが上がらない。
「お前。酷く生意気ね。円卓の騎士たちがいたならば今頃首と胴がサヨナラしてるはずよ。ああ、ランスロットがいれば…。いいえ、いつも肝心な時に傍にいない男だもね。萎えるわ」
吐いた言葉からするとこの女は円卓の騎士たちのだれかということでもなさそうだ。ますます萎える。
「で、お前はまじでどこの誰なの?」
「…そもそもなのだけど、女から名乗らせようとするなんて男らしくないわね。光栄に思いなさい。お前の名前をこの私自ら尋ねてあげる。さあ言いなさい。名はなんと?」
大仰でムカつく言い方だったけど、筋は通ってると思った。名乗るなら自分から名乗るのが礼儀ってものだ。
「
どうせ継げない家の苗字だ。呼ばれるのは好きじゃない。
「そう。サネトシね。どうせすぐに忘れるでしょうけど」
いちいち腹の立つ女だな。
「で、お前は何て名前なの?」
「わかったわ。教えてあげる。わたしこそがブリテンの女王。名は…」
「グィネヴィア」
女が名乗る前にその名が背後から響いてきた。振り向くとそこには白い髪に赤い瞳の美形な男がいた。淡い色のスーツを身にまとい、どこかその存在感は胡乱に感じられた。まるで幽霊のような感じだ。
「その女の名はグィネヴィアだよ。ツカツキ・サネトシくん。かのアーサー王の妻であり、ランスロットと不倫して王国を崩壊へと導いた稀代の魔女さ」
ランスロットと不倫したと聞いて思い出した。確かにアーサー王の妻はなんか発音しにくい変な名前だった憶えがある。幽霊のような男は俺たちの方へと音もたてずに近づいてくる。そして俺たちの目の前に立つ。すぐそばに立っているのに、やっぱり存在感を感じない。
「久しぶりだね。長い時が経ったけど、君のことを忘れた日は一度もなかった。いいや忘れることはどんなに頑張ってもできなかったよ」
その声音には親愛と情の響きがあった。二人は知り合いのようだ。ということは目の前の男もアーサー王伝説に関係する人物なのか?まあ一人だけが蘇るなんてことも不自然だろうし、他にも何らかの異変で蘇ったやつはいるのかもしれない。
「…もうあなたとは終わった。一体なんで顔を見せに来たの?」
グィネヴィアが声を震わせている。怯えている?
「そうだね。君と僕の物語はもう終わっている。とうの昔にケリがついたはずの物語だ。だけどね。アーサー王の物語はまだ終わっていないんだよ。『かつての王にして未来の王』」
幽霊のような男は微かに微笑みを浮かべる。それはゾッとするほど美しくて儚い狂気を宿していた。
「アーサーは復活を予言されている。君が墓の下から帰ってきたのだから、アーサー王もまた地上に帰ってくるんだ」
「…い…や…私は…!」
「共に会いに行こう。君が選んだ最高の王様に。そして地上に永遠の王権を打ち立てようじゃないか!!」
目の前の男の気迫に俺は恐怖を覚えていた。だけどふっと背中に柔らかな感触を覚えた。グィネヴィアが俺の背中のシャツを微かにつかんでいる。その時に俺が覚えた感情は本能的なものだった。
「君のお転婆はもう見たくないんだ。できるだけ大人しくしていてくれよ」
幽霊のような男が指を叩くと、陽炎があたりに立ち上がり、それはやがてまるで剣を持つ人の姿のようになった。陽炎の戦士たちは剣を俺とグィネヴィアに向けてくる。俺はグィネヴィアに振り向き。
「安心しろ。必ず守ってやる。だって俺にできないことなんてないんだから!」
「さあ戦士たちよ!女王を捕らえよ!!」
俺はグィネヴィアを抱きかかえる。
「きゃ?!ちょっとお前!?」
「文句は後にしろ!!」
迫ってくる陽炎の騎士の胴に思い切りケリを入れて吹っ飛ばす。そして戦士たちが降ってくる剣を躱しながら俺は幽霊のような男から距離を取り、丘の斜面に向かって思い切り跳ぶ。
「きゃああああああああああ!!」
「いやっほーーーーー!!」
斜面を両足で滑るようにして俺は下っていく。幽霊のような男は茫然と俺を見下ろしていた。俺はそのまま街の方へとグィネヴィアを抱えて走っていく。
幽霊のような男は丘の上から、街へと逃げていく二人を見ていた。
「はぁ…。寝起きを襲えば何とかなると思ってたけど、やっぱり君は誰かしら騎士をすぐに見つけてしまうんだね。しかしあの男…変な気配がした。まさか女神の匂いなのか?くくく。だとすると面白いことになるかもしれないね」
彼はスーツの懐からスマホを取り出して、だれかへとかける。
「一旦僕はひくことにするよ。もちろん可愛い彼女の元カレ同士だ。約束は守るよ。君が彼女を捕らえたのならば好きにしてくれてかまわないよ」
そして男はスマホをきってその場からは陽炎のように消え去った。
****作者のひとり言****
ヒロインの元カレたちに襲撃される系現代ファンタジーってなんか新しくないですか?
あとビッチデレ。略してビチデレ。
楽しんでくれたのならば幸いです。ではまたお願いいたします。
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