第17話 修行達成

 あれ以来、俺とセレナは毎日一緒に早朝の特訓をするようになっていた。

 お互いの本音を聞き、仲良くなっていった俺たちは魔法の練習をしていた。セレナのおかげもあって、簡単な火魔法を使えるようになっている。

 もっとも魔力値100だと簡単なやつしか使えないが………。


「セレナが魔法教えるの上手くて助かったよ」


「そ、そんなことないわよ」


「いやいや、ほんとだって」


 俺が魔法を教えて欲しいとお願いすると、最初は火魔法は使えないからと断られていたが、根気強く頼んでいると引き受けてくれた。


「言っとくけど、火魔法は私だって使えないんだから、ちゃんと習うならマー爺に教えてもらいなさいよ」


「それはそうしたいけどさぁ、師匠、『ルフの神木』登りができるまでは何も教えてくれないんだよなー」


 今の修行ができるまでは次の修行はお預けじゃって笑っていた師匠の顔を思い出す。


「ふーん、ジークまだ登りきれてないの?」


「まだって………始めてまだ2ヶ月経ってないんだぞ?

 師匠には、半年で登り切れればいいって………」


「半年って………はぁ………。それ、身体強化使ってない場合の話でしょ?」


「え?身体強化?」


 確かに言われて見れば、今までどうして使っていなかったのだろう。

 身体強化を使えば、今なら登ることなど簡単に思えてくる。


「どうせ使わずに馬鹿正直に登ってるんでしょ」


「それはそうだけど………」


 セレナに言い当てられ、歯切れが悪くなってしまう。


「いま身体強化はどこまで使えるの?」


「魔力10なら結構長く、20なら5分くらいかな」


 セレナに身体強化の練度に聞かれ、答えた。

 魔力10を使う2倍なら長時間、魔力20を使う3倍なら5分くらいなら持続させることができる。


「それくらいできれば上出来よ。私でも登れるから、もう十分登り切れると思うわ」


「ほんとか!?でもどうして師匠は言ってくれなかったんだろう………?」


「マー爺はちょっと意地悪なところあるから、自分で気付くまではほっとこうと思ったんじゃない?」


「ありそうだな」


 確かにあの人ならやりそうなことだなと考える。


「よし!じゃあ、今日中に登り切ってみせるぞ!」


「頑張ってね」


 そうして、今日の目標を立てて俺たちの特訓は終わった。


♢ ♢ ♢


 俺は今から今日、最後の挑戦となるであろう木登りをしようとしていた。

 セレナのアドバイスを受けてから、身体強化を使って挑戦していたが、あと少しというところで失敗してしまっていた。

 先ほど合流したシル、セレナ、師匠が見守る中、俺は登り始める。


「ジーク!頑張ってー!」


 下から聞こえてくるシルの声援を聞きながら、順調に登っていく。

 40mを超えたところで手に力が入らなくなり始める。

 もう限界かと思われたその時俺は魔力20を使い、身体強化をする。

 3倍に強化された身体能力で、するすると登っていく。

 

「あと少しだよー!」


 70……80……90m、残りあと10mまで迫ったところで足を踏み外してしまう。

 なんとか手で掴まりながら、俺は魔力を30使う。


「おっらぁ!」


 強化された身体で、一瞬で体勢を持ち直して、無事頂上まで登り切ることに成功した。


「よっしゃぁ!」


 嬉しさのあまり雄叫びを上げた俺は、師匠が魔法を使ってくれていたので、そのまま飛び降りた。


「やったぞ!シル!」


「やるじゃん!ジーク!」


 喜びそのままでシルとハイタッチをして、セレナの方を見る。


「セレナのおかげだ!ありがとな!」


 そう言って、ハイタッチをしようとする。


「べ、別に私は何もしてないわ!ジークが頑張ったからよ、よかったわね」


 恥ずかしがりながらもセレナもハイタッチをしてくれた。


「あれれ?いつの間にジークとセレナちゃんそんなに仲良くなったの?」


「色々あってな」


「よかったね!ジーク!」


「ああ」


 シルの知らない間にセレナと仲良くなったからか、シルが不思議がっている。


「セレナちゃん、ちゃんとジークのこと見てくれたんだ!ありがとね!」


「………ええ、シルヴィのおかげよ。ありがとう」


「ん?見てくれたってどゆことだ?」


「んんー、それは内緒!ねー!セレナちゃん!」


「ふふっ、そうね内緒よ」


 シルとセレナが気になることを言っていたので、聞いてみたが、はぐらかされてしまう。

 2人は顔を見合わせながら、笑い合っている。


「ほっほっほ、若いってのはいいもんじゃのお」

「ガァガァ!」


「それにしても、たった2ヶ月足らずで登り切るとは、なかなかやるではないか。これなら次の修行に移っても問題ないじゃろう」


 師匠が褒めてくれ、次の修行に移る許可がもらえた。


「それで次の修行って……?」

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