第5話 人生最低の日

 俺の家からしばらく歩くと、大きな白い建物が見えてくる。


「ほら、ジーク!あそこだよ!」


「わかってるから、そんなにひっぱるなってー」


 そうこうしているうちに神殿に着いた俺とシルは、中に入っていった。俺たちの他にも来ていた人たちがいるようで、喜んだり、落ち込んだりしている。


「けっこう人がいるんだなぁ」


「ほんとだね〜」


 シルと話をしながら、中を進んで行くと、神官と思われる男性に声をかけられた。


「君たちも魔力の測定と女神様よりスキルを授かりに来たのかな?」


「はい、そうです」


「向こうの女神様の石像の前で、祈りを捧げなさい。そしたら、女神様よりスキルを授かることができるよ」


「ありがとうございます」

「ありがとう!おじちゃん!」


「いいスキルを授かることができるといいね」


 神官のおじちゃんに言われた通り、俺たちは、女神様の石像の前に向かった。

 石像の前に着くと、俺とシルは、片膝をつき、手を合わせて、女神様に祈りを捧げる。

 すると、俺とシル二人の体が光に包まれ、しばらくすると霧散していった。


「これでいいのか………?」


「うーん?さっきのおじちゃんに見てもらおうよ!」


「そうだな。お、ちょうどあそこにいるな。よし、シル、行くぞ!」


 俺がそう言うと、なぜかシルがこっちを見てにやにやしている。


「なんだよ……?」


「いや、やっぱりジークも楽しみなんだなぁ〜って思って」


「い、いや!これは、その!」


「はいはい、いいから早く行こー」


 シルに引っ張られた俺は、仕・方・な・くさっきおじちゃんのところに向かった。

 おじちゃんのところまで来ると、向こうから話しかけてきた。


「おや、君たち結果はどうだったかな?」


「それが自分でも分からなくて、おじちゃんに見て欲しいんです!」

「俺からもお願いします」


「ああ、お安い御用だよ。私たち神官は、皆ランクは様々だけど鑑定スキルを持っているからね。………………おお!お嬢ちゃんの方は、4つスキルを持っているね。

 【上級】水魔法、【上級】風魔法にこれは、、、、【特級】光魔法、【王級】同化!?なんと!水魔法、風魔法に加えて珍しい光魔法まで、しかも王級のスキルまであるじゃないか!

 同化というスキルは聞いたことないが、固有スキルの一つだろうね。凄いね、久しぶりにここまでのスキルを持っている人を見たよ」


「やった!どうよ、ジーク?」


 ニコニコ笑いながら、こっちを見てくるシルは、心の底から嬉しそうにしている。


「ああ、良かったじゃないか」


「よし、次は坊ちゃんの方だね。……………おお!これまたすごい!坊ちゃんも4つのスキルを持っているね」


 この言葉を聞いて、俺は小さくガッツポーズをする。だって、俺だけ劣ってるとか嫌だったからな。


「うーんと………【上級】火魔法に【上級】剣術があるね。【特級】鑑定もあるじゃないか!君、ここで働かないかい?」


 鑑定スキルがあると分かった途端、おじさんが食い気味で勧誘してきた。

 神官って人手不足なのかな?

 でも俺は、冒険者になるつもりなので答えは決まっている。


「お断りします」


「そうか〜残念だなぁ〜。あと1つは、【王級】『魔力回復魔法』?聞いたことないスキルだなぁ。まぁ、固有スキルの一つかな。

 しかしまぁ、坊ちゃんもお嬢ちゃんも王級スキルの保持者とは、今年は女神様の機嫌がいいのかな?」


「良かったね、ジーク」


「ああ!」


「いや〜、君たち凄いね!これから頑張りなよ」


「はい!ありがとうございました!」

「ところで、魔力を測定したいんですがどこで出来ますか?」


「それなら、あそこの水晶『魔晶石』に手をかざすといいよ」


「分かりました」


 神官のおじちゃんに言われ、青白く光る水晶があるところに向かった。


「わぁ……!きれい……!」


「早くしてくれよ!」


「もう、待ちきれないからってそんなに急かさないでよ」


 俺が急かすと、シルは仕方ないなぁーと言いながら水晶に手をかざした。すると、魔晶石が眩しいくらい強く光った。


「………魔力値30000だって!」


「まじかよ!すごいな!」


 シルの魔力値は、30000だったらしい。3000あれば、優秀とされるのにその10倍とは、シルは天才かもしれない。


「ふふん〜、さすが私!」


「よし!次は俺だな」


 シルが30000なら、俺もそれくらいあるかもしれないな。

 俺は期待しながら、水晶に手をかざした。先ほどのシルに比べると明らかに弱々しく光る。

 表示された魔力値を見て、俺は愕然とし、目の前が真っ暗になった。


「…………魔力値100…………」


 今日が人生最高の1日から人生最低の1日に変わった瞬間だった。

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