第2話 翳る魔法

 彼と住むようになると魔女は極力魔法を使わなくなった。今まで魔法でやっていた掃除、洗濯、食事など彼に教わり自分の手でやっていた。ついいつもの癖で魔法を使いそうになったが、いずれくる魔法がなくなったときのために自分の手でやると決めたのだ。


 その点においては彼はいい先生だった。ありとあらゆることを知っており、自らの手で生活していたのはさすが旅人といったところだろうか。初めてつくったシチューは煮込みすぎて焦がしてしまった。芋の皮むきもできない魔女が初めてむいた芋はもう半分以下の大きさになっていた。


 それでもなぜだろう、魔法で作った料理よりもおいしい。焦げたシチューも小さくなった芋も彼と共に自分の手で作ったためであろうかとてもおいしかった。何より彼は「おいしい!」と言って食べてくれたのはいちばん嬉しかった。なんでも食べてしまうので、ちょっと味音痴なのではないかと疑ってはいるけれど。


 誰かのために何かをつくるのがこんなに楽しいことだと魔女は初めて知った。人がとてもめんどくさいことをしているとバカらしく見ていたが、今となっては尊敬の念すら抱いた。


 だんだん自分でできることも増えてきたので、魔法が弱くなっていることはさして気にならなかった。自分の手でできることが増えてきたのは嬉しかった。もう料理は彼よりも上手になっているのではないかと思っていた。彼にはまだまだと言われていたけれど。

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