第4話 決心
テリアは帰りの車の中で考えていた。この先どうしたらいいか考えていた。もう自分ではどうすることもできない。魔法陣も発動しない、使える魔法も日に日に少なくなってくる。このままいくと魔女家系の家から魔女がいなくなってしまう。でもどうにもならないのだ。
サリアとトールが並んでいるのを見て心がモヤモヤした。たぶんこれは”嫉妬”だろう。嫉妬するなと言われてもしてしまうものを抑えることはできない。先ほど楽しそうな人混みの中を歩いても自分の心は満たされなかった。車の中で、じいは何も話しかけてこなかった。だから私も何も話さなかった。
家に着いた。中に入るとお母様が心配そうに近づいてきた。
「遅いから心配しちゃったわよ。大丈夫。」
「大丈夫だって言ったじゃない。」
ちょっと今はお母様と話したくなかった。早くひとりになりたかった。
「いくらサリアちゃんと一緒だからって遅いわよ。」
お母様は怒っているというより心配で泣きそうになっていただけだった。だから私は、
「ごめんなさい。ちょっとだけ疲れていたので言い方がキツくなってしまいました。お母様心配かけてごめんなさい。」
そういうとお母様は納得したようで、それ以上は責めてこなかった。
少し悪いなと思ったのだけれど、今は本当に一人になりたかった。
自分の部屋に戻りいろいろと考えた。もう逆にトールのことは忘れるために家を離れて魔女に弟子入りしよう、そして魔法の道を極めようそう思った。そうしたらトールは褒めてくれるだろうか。またトールのことを考えてしまった。これじゃ全く意味がない。結局魔法を失う事に変わりはない。
もう何も考えたくない。家のことも魔法のこともトールのこともサリアのことも、何も考えたくない。深い海に沈んで音も光もない世界に行きたい。今日ぐらい許されないのだろうか。それも叶わない。もうここでどうにもならない事に気づいた。
それならばもうどう転んでもきちんとしていこう。魔女の道からはずれたとしてもその道を歩いていこう。その中でできることを頑張っていこう。そう決心した。もうそうするしか仕方ないのだ。今日はたくさんのことがあった。このたくさんの出来事がいつか笑い話になるのだろうか。そうなると信じたい。
窓からさした満月の光は高く深く部屋の中まで照らしていた。
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