序章:幸せの兆候
「ああ…いいな…」
私はスマホを見ながらため息をついた。
最近始めたインスタグラム。投稿された写真やストーリーを眺めながら、私は悲しみに襲われた。
幸せになりたい。天葉が亡くなってから、何度も悪夢にうなされ、悩み苦しんだ。
もう1年は経つのに、まだ幸せを掴めてはいない。
波乱すぎる人生だけど、何とか生きてはいる。それだけでも、天葉は許してくれるかな。
天葉ー中学3年生の時、私を救ってくれた恩人。でも、その数カ月後、彼は自殺した。
自殺願望があったと言うよりは、目に見えぬ力に、無理やり抑え込まれたというべきか。
彼がくれた手紙から「自殺することが決まっていた」というニュアンスを感じた。
天葉とはー多分もう二度と出会えない。
天葉が亡くなる前日、彼と言い合いをした。
その少し前から、彼の二重人格ぶりが気にかかっていた。
服装、話し方、目つき、その何もかもが、私を救ってくれた当初とは、大きくかけ離れていた。
もしかしたら、私が思っている以上に、天葉は恐ろしい人なのかも知れない。
そもそも自殺する運命を受け入れる時点で尋常ではないけれど。
悪夢にうなされたのは、私がそれに薄々気づいていたのに、気づかないふりをして、天葉と接していたからなのかも知れない。
天葉を、枠に押し込めていたのはー私だったのだ。
人殺しーそんな思いがずっと消えない。
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