第17話:校長と教頭
「やってくれたな、見限られた分家のガキが!」
早朝の通学路で起きた事件を聞かされた校長は、絶叫して校長室の机を叩いた。
黒檀の机はビクともしなかったが、薄くなった頭からは数本の抜け毛が散った。
「 揉み消せそうか?」
傍らに控えた教頭に、
「
教頭はアルカイックスマイルを浮かべたまま、朝の事件の被害者になった生徒の名を並べていく。
「学園の評判が下がれば、自分達の得にもならんことは分かっとるだろう!?」
「でしょうな。いつものように学園と関係の無い所で、加害者が
アルカイックスマイルのまま、教頭は言った。
「ま、所詮学校は学問を教える機関で、我々はただの教員。こんな犯罪に対処できるような能力も権限もありゃしません。イライラしたってどうにもなりゃしませんよ」
「能力も権限も無いのに、責任だけは追求されるからイライラしとるんだ!」
「そりゃ、
「分かっとるわ! 言わんでいい!」
校長の頭から、また一本、長い友が別れを告げる。
「119番より先に学校へ連絡があったのが不幸中の幸いですな。病院から警察へ、なんて面倒なことにならずに、無事3人とも保健室へ回収できました」
「頭の悪い
「学園内では学園のWi-Fiを通さないとネットに繋げない仕様ですし、フィルタはかけてありますが…… 事件は通学路で起きてますからなぁ」
「ネット見廻り班を総動員して、見つけ次第削除要請を出せ! お問い合わせなんて使うなよ。上の
抱えた頭から、また一本毛が落ちた。
「ああクソッ、日辻川のガキめ。今まで大人しくしとったのに、どうして……
「担任に聞き取りに行かせたとこですんで、とりあえず落ち着いて待ちましょうや。最悪夜逃げする羽目になっても、隠し金くらいはあるでしょう?」
「気軽に最悪の話なんぞするな! ああ、定年まであと5年もないというのに、なんで今……」
彼らはまだ、鈴木小路家の令息の腕が千切られたことさえ知らない。
教頭のアルカイックスマイルと校長の髪の毛が消え失せることになる長い長い1日は、まだ始まったばかりである。
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