放課後ダンジョン探検部!!【1章完結!!】
けるべろん
1章 翼の少女
第1話 ここから始まるプロローグ
「
「がーん!!」
わたし、蘇芳ほのかはそう告げられた。
余りの衝撃に脳内はフリーズ。これがアニメなら白塗りになったことだろう。
「……残念ながら
「2回も言わなくていいです先生!というか廃部っ!?…何で!??」
「教師陣の間でここが部としての要件を満たしてないと判断されたからだ。悪いが部室も明け渡してもらう」
先生が持ってきたプリントを覗き込む。そこにはわたしの所属する部活、”
──「廃部」とハンコが押された状態で。
「な、なぜ……」
「お言葉ですが先生」
隣のロングヘアーの少女が言う。
「私達は魔道具の開発、
「
トゲのある反論をしたのはわたしの幼馴染であり、迷宮探検部の副部長でもある”
背の高いモデルみたいな美人さんで、青みがかった長い髪は星空のよう。昔本人にそれを伝えた時は真っ赤になって照れてたっけ。才色兼備な彼女は部の内外を問わず有名人で、魔道具の開発実績も殆どはさやかの功績だったりする。
「実績ね。静寂の作った”
「それは……逆に心配なのですが……」
「ともかくだ。今回の決定に実績は関係ない」
「じゃあなにが問題やねん」
さやかとは対照的に小柄な少女が言う。
関西弁のこの子は”
身長140センチ台、ふさふさとしたツインテールとたまに見える八重歯がチャームポイントと(わたしの中で)評判。可愛いというと「やめれ!」と怒るのも可愛い。探検家の装備を作る『装備デザイナー』を目指してるらしく、わたしの装備もいくつかはこの子に作ってもらった。
先生がため息をつく。
「ウチ──
「いやいやいや!まだまだ5月に入ったばっかりだよ!?これから勧誘すれば入ってくれる子だってきっと──」
「確かにそうだな。まだ5月に入ったばかりだ。だがもう5月だぞ?」
先生が死んだ目で睨みつけてくる。その視線からは不満そうな気持ちが滲み出ていて、わたしは思わず口を噤んでしまった。
「言わせてもらうが、お前達はこの1ヶ月何をやっていた?」
「ギクッ」
1ヶ月。
そう。1ヶ月あったのだ。
先輩が卒業し、わたしが部長になってから1ヶ月。新入生を勧誘する時間はたくさんあった。
わたしは先生の追及に罪悪感を感じ、目線を壁に向ける。
白い壁にかかったコルクボードには、先輩たちとの思い出の写真やさやかの研究資料、あとはかえでが描いた装備の図面が張られている。
わたし達の大切な思い出。だけど同時に勧誘ポスターの1枚も無いのがこの1ヵ月の現実でもある。
「静寂。お前は最近新しい魔道具を作るとかで部室に篭っていたな。研究は結構な事だが、学生の本分を忘れているのは感心しないぞ」
「進級に必要な分の出席日数は計算しています。それに製作していたのも必要な道具で──」
「つまり勧誘はやってないんだな」
フイッとそっぽを向くさやか。図星なんだね……。
「蛾羽。お前は1年次の成績が進級ギリギリだったはずだが、いつも授業中に見ているのは予備校の教材か?」
「堪忍してや〜。武具メーカー大手、
「それで毎日のように居残りなのだからもう少し反省しろ。部活の時間が無くなるぞ?はぁ……」
吐息を漏らす先生の目には大きなクマが見て取れる。もしかしなくても、この人のストレスってわたし達が原因……?
「そして蘇芳。お前は──」
「あ、ハイッ!ほのかです!!」
「返事はいらんっ!」
びっくりして背筋が伸びる。次はわたしが糾弾される番だった。心臓がバクバクと音を立てる。
「お前はそもそもこの1ヶ月、1度も登校していなかったな……。どこで何をやっていたッ!!」
「えぇっと、あの〜……実はですね…」
……今日のわたしは1か月振りの登校だ。久しぶりの校舎、久しぶりの友達。先生とだって久しぶり。けれども、隠したってしょうがない。どうせ明日にはバレるし──。
「えっとですね……迷宮に潜っていたら、珍しい魔物を見つけちゃって……追いかけていたら、いつのまにか知らない場所に入ってて……」
「お前……まさかとは思うが、遭難してたのか?」
「(コクリ)」
この1ヶ月、わたしはある
探検開始から数時間後、見たことのない魔物に目を奪われたわたしは、それを追いかけて追いかけて……気付いたときには地図に無い危険地帯に迷い込んでいた!
サバイバルに慣れてたからよかったけど、正直何度力尽きそうになったかわからない。
「だから今日は久しぶりに先生に会えてうれしいです!!」
「勢いで誤魔化そうとするなっ!」
今日一大きなため息をつき、先生が頭を抱える。
ふと横を見れば、事情を知ってる友達2人も呆れた目でわたしを見ている。面目ない……。
「はぁ……。無事なのは何よりだが、とにかくお前たちは1ヶ月間、誰も勧誘をやってないわけだ。事実としてな」
「それは……そうですが……」
先生の言葉になにも返せず、わたし以外の2人が押し黙る。
だけど……!
「先生!なにか……なにかいい方法ないかな……わたし諦められない!」
わたしは先輩に部長を……部活を護る立場を任された。たとえ図々しいと思われても、簡単には引けない。
「この部室には、今までの【迷宮探検部】の活動の結晶が詰まってる!それはわたし達だけじゃない、先輩や、その更に先輩達の分だって……」
「……」
「勧誘できなかったのはごめんなさい!けど、わたし頑張るから!もう一度チャンスをください!!」
頭を下げる。
こんなことになったのも、きっとわたしが1ヶ月もの間姿を消したからだ。ここを任せてくれた先輩や親友のためにも、この問題は現部長であるわたしが解決しなくちゃいけない。
──何より、自分の居場所すら守れないような人間が偉大な探検家になんてなれるはずもない。
わたしの告白から少しして、先生が重苦しそうに口を開く。
「……はぁ……。お前はそう言うと思っていたよ」
「先生…?」
「まあ、そうだな」
ため息をつき、後ろを向いていた先生が向き直る。その目にはハイライトが入っていた。
「部員数も足りず、勧誘する姿勢も見られない。そんな部活、本来なら即刻廃部決定!!部室は新たに魔性植物同好会のものになるはずだった」
「そっちはそっちでちょっと興味あるんやけど」
「こらかえで!」
「先生、それって……?」
わたしの反応を見て、先生がニヤリと笑う。
「少ない人数、かつ現部長が不在という特殊な状況下。ほかの部活と同じ条件をこなせというのはそもそもがアンフェアだからな。上に無理言って、決定を5月末まで伸ばしてもらった。感謝しろよお前ら!」
「ほんと!?ありがと先生信じてた!!」
「そう素直に感謝されると逆に釈然としないんだが」
とんでもない!
1年の頃から何かと親身になってくれた先生。信じてたというのも本心だ。ひとしきり褒められた後、先生はいつもの死んだ目に戻る。
「まあな。力ある若人達から、みすみす成長の機会を奪うのも考え物だろ?」
「ありがたい話ですが、結局私たちは何をすれば?」
「簡単だ。5月が終わるまでに、新入部員を見つけて加入させればいい」
なるほど。
つまり期限内に部活の要件である部員4人をクリアしよう!ってことらしい。
「ただ、5月ともなれば部活に入るつもりの奴らは既に入部を決めている頃合いだろう。お前達は歓迎会で宣伝もしてないし、これから勧誘を始めるのは過酷な作業になるはずだ」
「大丈夫大丈夫!!わたし達が力を合わせれば部員の10人や100人ぐらいすぐ集まるよ!」
「ま~た部長が適当なことぬかしとる」
かえでのツッコミは正しいけれど、むしろこれはチャンスでもある。どうせ新入部員は集めるんだ。目標は高いほうがいいもんね!
「じゃあみんな!!いつものあれやるよ!」
「はいはい」
「しゃあないなぁ」
わたしがかざした手の平に、さやかとかえでがそれぞれ手のひらを重ねていく。
「迷宮探検部!!ファイオーー!!」
「「お~」」
「声小さくない2人とも?」
──こうして2年生としての初めての活動、「部員集め」が始まった。
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2024/2/4 改稿
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