五月雨に降込められて燕も蝸牛も薄墨の靑


五月雨さみだれ降込ふりこめられてつばくろ蝸牛まひ〳〵つぶろ薄墨うすゞみの靑



 雨の景色はモノトーン。

 現実には、そんな筈は無いのだが、どういうわけだか脳内の色彩感覚は抑制され、グレーを基調とした色合に感じられる。

 グレーと言えば、白と黒の中間色だが、古い日本語においてこの範囲の色を示す語が「あを」であったとされる。

 また、古代日本語において色を示す語は、赤、黒、白、青の四つだったとされ、その意味する所は、「あか」と「くろ」の対と、「しろ(=はっきりした)」と「あを(=ぼんやりした)」の対だったという説がある。


 ところで、書画に用いる墨のうち、松を燃やした煤で作る松煙墨は古くなると青みを帯びてくるらしい。

 青みがかった薄墨で雨の風景を描けば、愁いを含んだ静謐さが表現され、実に似つかわしいように思われる。




  

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