谷蟇は背を向けて壁を向きて何をか思ふ靑き頭に


谷蟇たにぐゝそびらを向けて壁を向きて何をか思ふ靑きかしら



 生ある者、他の生ある者をすること無くんば、ながらふることあたはず。

 し今產れ落ちたる無垢の嬰兒とて、が生あるは、先祖おや代代の殺生の業をが身にげるに他ならず。

 耶蘇に『原罪』と云へる、原初の男女なんによ禁果きんくわを口にせる罪に發する由、聖典にはあれど、以爲おもへらく、生ある他者をして食らはずんば吾が生を保つべからざる身の罪こそ之なるべけれ。

 面壁めんぺき蛙族あぞく天窗裡てんさうりにも、或いは、かる思惟しゆいの去來せるにやあらん。



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