第6章116話:必殺技

「チサトン頑張れー!!」


「負けるな!」


「さっきは圧倒してたじゃないか!」


「頑張って!!」


「チサトン、チサトン、チサトン!!」




観客が大声援を送る。


しかし、その声援にはどこか、切迫したものが含まれていた。


なぜなら、傍目にはどう見てもチサトンが押されているからだ。


劣勢……いや。


圧倒され始めていると言っていい。


「まだや!!」


だが、だからこそチサトンは心の中で吠える。


天へと、剣を掲げる。


絶花のポーズ。


――――こんな短時間で【絶花】を何度も使うのは、身体への負担が大きい。


だけど、そんなことは言ってられない。


流れを取り戻す。


悪い空気を吹き飛ばす。


もう、そういう一撃を繰り出すしか、勝ち目はない。


「必殺剣――――絶花!!」


雷のごとき一撃を放つ、空前絶後の斬撃。


【絶花】が炸裂する。


超エネルギーの激流が、ルミに飛来する。


この【絶花】という攻撃の本質は、刀に魔力を最大限に乗せ。


同じく、自分の足にも最大の魔力を乗せて、超加速で敵に斬りかかるというものだ。


いわば稲妻の速さで斬りかかる、雷速らいそくの斬撃であり、回避はもちろん、まともに防ぐこともできない。


だが。


「フッ!!」


ルミの呼気一つ。


次の瞬間、ルミは【絶花】に真っ向から斬撃をぶちあてた。


絶花と、ルミの斬撃が接触し、ズバァァンッ!! と激しい音が鳴る。


そして、信じられないことが起こった。


(なんやと!?)


チサトンがルミの斬撃に打ち返される。


相打ちどころか、チサトンのほうが力負けをしてしまったのだ。


押し返されたことで、たたらを踏んでしまうチサトン。


……【絶花】が、ルミの放つ斬撃に押し負けた。


チサトンの胸に絶望がよぎる。


(もう絶花すら通用せんのか!?)


ルミの正真正銘の本気モード。


――――試合序盤、ルミがいまいち本気になれていないことにチサトンは気づいていたし、本気を引き出した上で倒したいとも思っていた。


だが……


まさか、ここまでとは思っていなかった。


現在のルミは、極まっていた。


次元が違いすぎる。


もはや、どうあがいても勝てる気がしない。


(攻める糸口が見当たらん。どうしたらいいんや?)

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