第6章114話:チサトンの苦戦

お知らせ:

本作は、チサトン戦の終了とともに完結を予定しております。

最終話まで執筆を頑張っていきたいと思いますので、どうかお付き合いいただけると幸いです!

――――――――――――――



ルミが空中で剣を振りかぶる。


「っ!!」


次の瞬間、おとずれるのは超エネルギーの爆発である。


振るわれる剣の威力は、規格外という言葉ですら生ぬるい。


まるで体重500キロ以上あるミノタウロスが、10トン以上あるバトルアックスを、フルスイングで叩きつけてきたかのような衝撃。


たとえ防御に成功しても、正気を失いかねないほどの圧力が全身を駆け抜ける。


防ぐだけで体力がごっそり奪われるのだ。


実際、チサトンは吹っ飛ばされ……


遅れて、とてつもない虚脱感に全身をさいなまれた。


「はぁ……はぁ……はぁ……っ……はぁ……」


息が荒れる。


「……っ」


チサトンは、嫌な空気を感じ取っていた。


戦いには"流れ"というものがある。


流れに乗っていれば、いつも以上のパフォーマンスだって出せる。


逆に、流れが悪い場合は、剣技は鈍るし、動きも落ちる。


そして。


現状、少しずつ少しずつ、ルミのほうに流れが傾いてきているのを感じていた。


ただの「空気」でしかない話だ。


しかし、チサトンはそれを甘く見ない。


(まだや。まだウチの流れや!)


形勢逆転された感はあるが……


ルミの爆発力に圧倒され、一時的に混乱に陥っただけだ。


と、チサトンは自分に言い聞かせる。


気持ちで負けてはいけない。


混乱や動揺は、思考を鈍らせるからだ。


(守ってばかりじゃアカン……攻めるで!)


チサトンは自分が磨いてきた剣技を振るうことに決めた。


双陣剣そうじんけんッ!!」


敵の正面に斬撃を放つと、敵の背後からも斬撃を放つことができる……


一度で二度斬る双撃そうげきの剣――――双陣剣が、ルミに炸裂する。


だが。


「……」


ルミは楽々と回避する。


チサトンは顔をしかめ、次なる剣技を放つ。


「ステルスソード!!」


刀身を透明化させることのできるスキル――――ステルスソード。


チサトンの刀が透明状態になる。


その状態で振るわれる剣を、回避することは至難の業だ。


日本最強ともいえる、チサトンの剣術や体術もあわさっているのだから尚のこと。





神埼「チサトン選手! 防御から一転、見事な剣術スキルで反撃を開始します!」


新田(あくまで攻めの姿勢を忘れない、か。さすがは年間ランカーだな)






人間は本能的に、苦しいときほど守りに入りたくなるものだ。


しかし、戦いでは、きついときこそ攻めの姿勢を忘れてはいけない。


チサトンはよくわかっている。


だが。


それでも。


ルミには届かない。


「くっ!!」


チサトンは歯噛みする。


ルミはチサトンの刀のリーチを完璧に把握していた。


ゆえに、ステルス状態の剣で斬りかかっても、紙一重で回避される。


不可視の剣を、ルミはかわし続ける。


「まだや……!!」


チサトンはさらなる追撃をおこなう。


さきほど沖田チサトンと謳われた最強剣技―――桜刃撃おうじんげきだ。


「ハァアアッ!!」


実は、ステルスソードは別のスキルと組み合わせて使うことができない代物だ。


ところが、桜刃撃だけは例外である。


桜刃撃は、ステルス化した状態で放つことができるのだ。


つまり、見えない三段突きの攻撃が、ここに具現する。


チサトンが放つ、不可視の三段突き。


「……!」


けれど、ルミは。


軽々と距離を取って、桜刃撃の射程範囲から外れる。


この程度の攻撃では、もはやルミには通用しないのだ。

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