第5章97話:チサトン視点
ルミは拍手喝采を浴びながら、控え室に戻る。
現在は午前。
午後にもう1試合あるので、しばらく待機だ。
<チサトン視点>
チサトンこと、千里は、控え室の椅子に座っていた。
モニター画面には2回戦・第2試合の映像が流れている。
しかし、それには目もくれず、千里は携帯に目を落としていた。
千里が見ているのは、ルミちゃんねるの配信である。
「なるほどなぁ……」
ぽつりとつぶやく。
携帯画面に映るのは、上級ダンジョンにて竜人王と激戦を繰り広げるルミの姿。
千里は、大阪大会が始まる前は、ルミのことはノーマークだった。
やたらと大会運営がプッシュしていることは知っていた。
しかし、ルミのチャンネル登録数は中堅レベルであるし、何より無名の選手。
アイドル的に運営が売り出そうとしているだけかと思っていた。
だが……違う。
ルミは、まさしくスーパールーキー。
ダンジョン配信界の超新星だ。
これほどの強者が、今の今まで無名だったことに驚きを感じる。
(いや、無名ではないんかな?)
ルミの正体は不明だ。
仮面をかぶっているので、顔がわからない。
名前も、ペンネームだろう。
もしかしたら無名と思っているだけで、実は中身はとんでもない有名人だったりするかもしれない。
(でも年間ランカーではないな。ランカーと特徴が一致せんし)
仮面をかぶっていても、それ以外の部分はチェックできる。
体格、剣の使い方、足運びなどなど。
千里の頭の中に、ルミと一致する年間ランカーはいない。
かといって、他業種の強者にも、思い当たる者はいない。
千里は、配信者や探索者以外の目ぼしい強者もだいたい知っているが……ルミのような剣士は心当たりがない。
(まあ、素性についてはどうでもええか。問題は、優勝するためには必ず障壁となるっちゅうことや)
――――千里がルミと対戦するとしたら決勝だ。
すぐに当たるわけではない。
しかし、千里は、必ずルミが勝ち上がってくると確信していた。
現在の大阪大会において、ルミの快進撃を阻む者は存在するまい。
だから、今のうちにルミとの対決を見据えておかなければならない。
「でも、決勝は明日やしな。今日はのんびりいこか」
と、一人つぶやいて、千里は携帯をアイテムバッグにしまった。
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