第3章56話:決着


「我も、このように心躍る戦いはひさしぶりだ。よもや、人間相手にそれを感じることができるとは思わなかった。感謝するぞ、仮面の剣士よ」


「それは……どうもです」


「だが、残念だな。この宴も、そろそろ終わりが近いようだ」


「はい。どうやら私の勝ちのようですね」


少しずつ少しずつ、ルミの斬撃が竜人王に入り始めていた。


それによって竜人王の動きが鈍くなっている。


対してルミは、軽い裂傷こそ負っているものの、有効打と呼べるほどのダメージを負っているわけではない。


形勢は明らかだった。


「最後は私の奥義の一つで決めさせていただきます」


そう宣言してから、ルミは剣を上段に構えた。


竜人王に向かって切り下ろす。


スキル―――【ハイドラル・ブレイド】。


史上最強の水流斬りが竜人王に炸裂する。


竜人王はそれを斧の柄で受けようとするも、ルミの斬撃は柄ごと竜人王を切断した。


驚異的な威力で切り裂かれた竜人王は、大ダメージを負う。


さらにとどめの一撃とばかりに、ルミが突きを放つ。


それが竜人王の胸に突き刺さった。


斧を取り落とす竜人王。


「我の負けだな」


ルミが剣を引き抜いた。


竜人王が、仰向けに倒れる。


「見事な剣だった。どうやら我では、貴様の相手は役不足だったようだ」


「……そんなことは」


「謙遜するな」


謙遜……か。


確かにルミは、本当の意味で全力だったとは言いがたい。


全ての剣技を出し尽くしたわけでもないし、余力を残していた。


とはいえ、それでも白熱する戦いではあった。


殺そうと思っても、なかなか殺せない相手との死合だった。


それは事実だ。


「あの……一つ聞いてもいいですか?」


「なんだ?」


「あなたがた魔物やダンジョンは、どこから現れたのですか? なぜ現れるのでしょう?」


ずっと気になっていたことではある。


魔物とは何か?


ダンジョンとは何か?


それは歴史上、さまざまな学者たちを悩ませてきた問いであったが……ルミは別に、学者を代弁して聞いたわけではない。


純粋に知りたいことであった。


「我々は、異界からの訪問者だ」


「……異界」


「信じられぬかもしれんが、この世界とは、全く異なる世界が、どこかに存在しているのだ。我々はそこからやってきた」


つまり異世界ということか。


ファンタジーみたいな世界がどこかにあるのかな。

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