第3章42話:隠し部屋ふたたび
SNSではリスナーたちによって、この配信が拡散されていた。
ルミ・来花それぞれのリスナーが拡散を行ったので、通常の倍の速度で広まっていく。
さらに、有名配信者であるルミと来花が、トラップを踏んで下層に落とされたという、衝撃のアクシデント。
それが大きな話題性を呼び、たくさんの新規ユーザーを引き込んだ。
同接数40万人。
3秒後、41万。
3秒後、41万5000。
3秒後、42万1000。
3秒後、42万3000。
3秒後、43万。
3秒後、44万。
加速度的に同接数が増えていく。
この伸び方は、ルミが魔王騎士を倒したときぐらいの伸びである。
つまり、バズっていた。
ふと来花が、携帯で自身の配信を確認したとき、驚愕した。
「こ、こんな同接の伸び……見たことないわ」
「ん……そうですか。今どれくらいになってます?」
「こっちは20万ぐらいね。ルミさんは?」
「ええと……44万です。いえ、45万を突破しました」
「あたしと倍ぐらい違うのね。まあそれもそうか」
もはやこの配信の主役はルミである。
そう来花は理解していた。
下層において、来花にできることなど何もない。
ルミばかり活躍するのだから、引き立て役にすらならない。
来花は思う。
(これはもう、リスナーを食われてもしょうがないわね。まあ、命を助けてもらってる身だから、ある意味で恩返しと思いましょう)
そして、来花は思考を切り替える。
ここは下層だ。
一人では決して来られない高ランクフロア。
貴重な資料を得られるチャンスである。
戦闘はルミに任せて、来花は、下層のデータを獲得することに専念しようと思った。
「ん……ちょっと待って。ここ、隠し部屋があるわ」
通路の途中で来花が発見する。
ルミがいぶかる。
「また罠ということはないでしょうか?」
「宝部屋なら罠がある可能性はあるけど、さっきみたいな転移トラップは、もう無いと思うわ」
「ふむ……では、殴って開けますかね」
ルミが壁に向かう。
そして、拳を振りぬいた。
ズガァァァァァアンッ!!!
……と、壁が爆砕する。
ついに壁パンチが始まり、コメント欄は狂乱した。
そのあいだ、来花は周囲の壁を調査する。
(実際、壁を殴って開けるなんてのは、たぶん無理ね。どこかに隠し部屋の『鍵』があるはず)
来花は考えながら、ルミが殴ってる壁とは逆サイドの壁に、ぺたぺたと手を這わせる。
すると、一つだけ感触の違うレンガブロックがあった。
当たりだ。
来花は、そのブロックを押す。
するとブロックは、壁へと沈み込んだ。
直後、ルミの正面の壁がゴゴゴゴゴゴと音を立てて開かれる。
「開いたわね」
「来花さんが開けたんですか?」
「ええ。あっちに解除ブロックがあったわ」
来花は隠し部屋を探し当てるレアスキルをいくつか保有しているので、こういう仕掛けを見抜くのは得意だ。
ルミと来花が隠し部屋に入室する。
中央に宝箱があった。
「ルミさんは、罠解除ができる?」
「いいえ。できませんね」
「じゃあ、あたしが開けるわ」
来花が宝箱に近づいて、さまざまなスキルを発動する。
宝箱を物色しながら、罠の有無や、種類を確認する。
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