第1章12話:配信の反響


同じ日曜日。


ルミの登場により、ダンジョン配信界隈はお祭り騒ぎとなっていた。


SNSでは、ルミの配信をスクショした画像や、切り抜き動画が積極的に拡散された。


ルミの配信動画には、見所が数多くあった。


やはり注目すべきは実力の高さである。


・敵を倒すときの舞のような剣技。


・強雑魚モンスターの多数討伐。


・難関ダンジョンのソロ踏破。


などなど。


しかし、それとは対比するように、どこかヘンテコな攻略スタイルも注目を浴びた。


・素材全無視。


・スキルプラクティスを拾わない。


・星石の偽物を拾う。


・いきなり壁を殴り始める。


などなど。


こうした要素は、SNSユーザーにとって話題にしやすいものだった。


単に強くて攻略が上手いだけの動画ではなく、面白みのある動画のほうが、SNS民にとっても共有しやすいからだ。


ゆえに土曜日から日曜日にかけて、ルミ関連の話題はバズりまくった。


インフルエンサーたちも、このバズ祭りに乗っかり、拡散に一枚かむようになる。


結果的にそれが、ルミの知名度をさらに高めることに繋がった。





ルミのファンも大量に生まれることになった。


チャンネル登録数が50万を越えていることもあり、当然、熱狂的な信者も多く誕生した。


彼らはSNSや掲示板などでルミの剣技や攻略について熱く語り合う。


最も熱心に動画拡散を行ったのも、彼らであった。





一方、


「ルミとはいったい何者なのか?」


という疑問について、多くの憶測が飛び交った。


ルミは突如として現れた超新星である。


しかし、あれほどの実力者が無名だったなんてことはあるだろうか?


難関ダンジョンをソロで攻略できるほどの探索者なのだから、元々それなりの有名人なのではないか?


そう考える者は少なくなかった。


けれど、舞うように戦う剣士というのは、過去に該当者がない。


結局ネットユーザーの多くはルミの正体がわからず、ますます関心をかきたてられるのだった。





同時に、特定班による活動も盛んであった。


彼らはルミの素性を意地でも特定してやろうと血道をあげていた。


しかし、この作業は難航することになった。


なぜなら、情報があまりにも少なすぎるからである。


あらゆるSNSを探してみてもルミのアカウントは存在せず、情報源は、まさしく「ルミちゃんねる」だけだった。


そして、ルミちゃんねるにあるのは、配信動画が一つだけ。


ここからルミの素性を割り出すのは不可能というものだ。


それでも特定班はできることを尽くしたが……


結局、ルミのことはほとんどわからず、徒労に終わってしまうのだった。


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