第24話 影の会談

「……なぁ、シェイド、お前俺になにか隠してるだろ?」


 湊月は少し楽しそうにそう聞く。すると、シェイドは少しくらい顔をした。しかし、湊月はそんなシェイドの頭をわしゃわしゃと撫でると、一言だけ言う。


「別に無理して言わなくていいよ。言いたくなったら言ってくれ」


 湊月がそう言うと、シェイドは今度は嬉しそうな顔をした。そして、湊月の横腹の辺りに抱きつく。


「なにか言いましたか?」


「いや、何でもないよ。少し作戦を考えていてね」


「作戦なんか考えなくとも、俺の指揮官が考える。お前は何もしなくていいよ」


 湊月の言葉に七星剣の男が反応した。そして、続けて言った。


「お前みたいなやつはな、作戦なんか考えなくていいんだよ。あんな無謀なやつはな。お前ムスペルヘイムの基地に攻め込んだらしいな?しかも、無策で何も考えずに。お前は馬鹿だ。それに弱者だ。その力を手に入れて自分に酔っているだけだ。実際は強くないのにそう思わせているだけだ」


 七星剣の男はずっとそう言ってくる。湊月はその言葉を聞いて何も思わなかった。なんせ、何も知らない奴がほざいているとしか思えないからだ。


 どうせ、自分には力がないのに湊月には力があることに対して嫉妬しているのだろう。だからこそ何も思わなかった。


 しかし、玲香は違った。


「待って、あなた何も知らないのによくそんなこと言えるね。シャドウが嫌いなのかもしれないけどさ、シャドウは無策で乗り込んだりしないのよ」


「へぇ、こんなやつに加担するのか?こんな仮面を被って顔も見せないようなやつに」


「顔なんかじゃないわ!私は彼の意志の強さで決めたの!別に仮面を被っていたって、思いが一緒ならいいでしょ!」


 七星剣の煽るような言葉に玲香は反発する。七星剣はそんな玲香を見てさらに笑いだした。そして、続けて言う。


「へっ、そうほざいてな。いずれお前らは裏切られる。切り捨てられるんだよ」


「っ!?そんなこと…っ!?」


 その言葉に玲香が言い返そうとした時、湊月はそれを止めた。そして、玲香に言う。


「やめろ。相手の挑発に乗る必要は無い。皆ムスペルヘイムに責められて焦っているのだ。突如現れた仮面の男を信じるほど余裕は無いのだよ」


「ですが……」


「相手がどう思うかでは無い。自分がどう思うかだ。相手から嫌われようと、自分を信じて進むことが大切なのだよ。そうすれば、自然と仲間は着いてくる。それに、七星剣はこの国でも1番の実力者達だ。連携さえ取れれば良い」


 湊月がそう言うと、玲香は納得したのか少し落ち着きを取り戻した。そして、七星剣の男を睨みつけて前を向いた。


 七星剣の男はそんな玲香を睨み返すと無視をして前を向いた。


 それから少しの間そんな状況が続いた。そして、遂にエレベーターが最上階へと到着する。


「ここだ。俺についてこい」


 七星剣の男はそう言って湊月を案内する。湊月は仮面の下でニヤリと笑いながらその男の後ろを着いていった。玲香と山並も静かに湊月の後をついて行く。


 少し歩くと男は止まった。そして、横を向いて巨大な扉の前に立たせる。すると、その扉は開いた。そして、中が見える。するとそこには男が椅子に座ってこっちを見ていた。しかし、その男の前には遮蔽物があり影しか見えない。だから、体型で男と判断するしかない。


「……無事に帰ってきたか。物資はどうした?」


「必要なものは全てもらって帰ってきました。今は起動の準備をしています」


「そうか。なら、早く動かせ。あれで道を切り開くのだ」


「分かりま……」


「待て」


 その時、湊月は口を開いた。


「ん?何だ?それに貴様は何者だ?」


「シャドウです。先程ここに到着した時に遭遇しました」


「ほぅ、あのシャドウか。目的は何だ?」


 椅子に座る男はすぐに聞いてきた。湊月はその男を見ながら少しだけニヤけると、冷静な声で言う。


「初めまして。私はシャドウ。今日来たのは他でもない。名古屋支部の皆さんには私の傘下に入ってもらおうかと思いましてね」


「「「っ!?」」」


 湊月がそう言うと、その場の全員が目を丸くした。そして、七星剣の男がこっちを睨みつけながら殺気を飛ばしてくる。湊月はそんな視線は全く気にせず話を続けようとした。しかし、その時他の七星剣の人達が部屋へと入ってくる。


「ただいま戻りました」


「戻ったよ。……ん?今なんかやってんの?」


「なんだ?シャドウと戦うのか?」


 七星剣の全員は次々にそう言ってくる。その状況に玲香と山並は少し戸惑い警戒する。しかし、湊月は全く姿勢を変えることなく言った。


「話を続けていいか?」


「あぁ。構わんよ」


「フッ、心が広いのだな。話を戻すが、我々がここに来たの理由はさっき言った通りだ。我々も物資が無限にある訳では無い。それに、軍として名乗るには少々戦力が足りない。だからこそこの日本軍名古屋支部に傘下に入ってもらいたい」


「ハハハ!矛盾だな。戦力が足りない軍とも呼べない集団の傘下に入れと言われて入る者もおらん。それに、自分で分かっているのならそなたが傘下に入ればよかろう?」


「それは出来ない。もしそれをするなら、我々は途中で下克上を起こす。そうなれば日本軍は壊滅する」


「そなたらが起こさなければ良い」


 男は湊月にそう言った。すると、湊月は少しだけ間を空け、考えてから言う。


「……それは、あなたが指揮官をするには自信があると言うことですか?」


「今そう言ったが?」


 男は湊月の問に対してそう言った。すると、湊月は少しの間を開けて仮面を手で押えながら笑い出す。


「フフフ……フハハハハハ!指揮官に自信があるというのですか!?冗談はやめて欲しい!私の目から見たら、あなたには全く向いてないと思いますが!?一体どう言った点であなたが指揮官に向いているというのですか!?教えて頂きたい!」


 湊月は笑いながらそんなことを言う。すると、当然七星剣全員が怒った。そして、睨みつけながら殺気を飛ばしてくる。


「何も言えないのですか?まぁ、当然ですけどね。もしあなたに自信があるのなら、ここまで追い込まれることは無かった。それに、たとえ追い込まれようと打開策はすぐに思いつく。それが思いつかなかったあなたは指揮官には向いてない」


「わしは全てにおいて考えておる。お主のように目先のことだけしか考えておる訳では無い」


「私だって考えてますよ。今だって私はこれからの我が団の行く末について考えています。あなたは考えてましたか?」


 湊月のその言葉に男は少し目を細める。しかし、湊月は続ける。


「フッ、何も考えて無かったのですか?もしかして、私の話を聞くだけになってませんでしたか?」


 湊月がそう聞くと男は湊月を睨みつけた。


「ハハハ!やはりそうか!図星で何も言えないか!やはりあなたには向いてないようだ!自分の軍の行く末すらも見極めないやつはいらない!お前は未来なんか全く見てないんだ!目の前の敵のことだけしか考えてない!愚かなやつだ!」


「シャドォォォォォォ!貴様それ以上は許さんぞ!」


 その時、七星剣の1人の男が剣を抜き湊月に襲いかかった。しかし、湊月は一切表情などを変えることなくその場に立って男を迎え撃つ。


 そして、湊月は剣を抜き男の刃を受け止めた。


「っ!?」


 カキンッ!という甲高い音が鳴る。そして、湊月はその音と同時に男の腹を蹴り飛ばした。


「無様な。さぁどうする?俺の実力も頭もわかったはずだ。お前はどうしたい?」


 湊月はそう言って仮面の下で不敵な笑みを浮かべた。

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