生徒会にもパフェが欲しい

空一

生徒会にもパフェが欲しい

白石凪音の慮外

「パフェが食べたい。」

 また、凪音(なぎと)さんはおかしなことを言った。

「いきなりどうしたんですか?」

 山下大輝は、やれやれと言った感じで、凪音に尋ねる。

 白石凪音は、何もおかしくないという顔で、大輝の質問に答えた。

「パフェを食べたいんだ。」

「じゃあ、食べたらどうです?」

「いや、違う。学校で、パフェを食べたいんだ。」

「はあ……」また、凪音はおかしなことを言った。

「あのですね、学校には食堂はありますけど、パフェなんて売ってません。」

「そうか……じゃあ、パフェを売ろう。」

「は?」パフェを売る……?凪音の発言に、大輝の頭に『?』マークが浮かぶ。凪音は何か名案を思いついたような顔で、笑ってみせた。

「公約を、『パフェが食べたい』にするんだよ。」

「え……は、はああああ???!!!」


 この学園の生徒会長選挙は、一風変わっている。

 まず、生徒会長選挙に立候補するには、立候補者はそれぞれ生徒会メンバー4人(会長・副会長・書記・広報)を集め、選挙管理委員会に届けを提出する必要がある。

 そして生徒会長選挙一ヶ月前になると、候補者が一斉に発表され、それぞれに方角の異名がつく。

 僕たち「白石凪音」を有する4人のメンバーは、

『東の生徒会』

 そして……

「きゃー!鷹司さん、今日もカッコいいわぁーー!」

 前期生徒会長であり、"ハイスペック生徒会長"こと

「鷹司清士郎」有する『西の生徒会』。

 この二つの生徒会が、ほぼほぼ選挙の行方を争っていた。

「おいおい、誰かと思えば西の生徒会書記。"ノーマルタイプ"の山下君じゃないか。」

鷹司の右腕と称される黒岩が、物陰に隠れていた僕を見つけ、ニコニコ近づいてくる。そして、自分の肩にポンと手を置いた。

「どうだい。東の生徒会の広報活動は頑張っているかな?」

「はい、頑張ってるよ……」肩に置かれた黒岩の手を勢いよく払って答える。

黒岩は西の生徒会の広報係。大輝の敵は、平たく言えばこいつということになる。

「しかし、君も大変だね。まさか東の代表が『パフェを食べたい』なんてことを公約にするなんて……っぷふ、ごめんごめん。こういうのって、笑っちゃいけないんだよね。」

「っ……ほっとけよ!」

 そうやって大輝は黒岩を振り切り、東の生徒会室へと戻って行く。鷹司に合流した黒岩の方を見ると、鷹司がこちらを嘲るように見てきたので、大輝はすぐに違う方向を向いて、足を早めた。

大輝は何も言い返せない自分が、みずぼらしく思えた。



 

 

 

 

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